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愛し子と話す権利

遅くなりましたが更新です!

ちょっとは長めかな?

そして残りの時間は苦痛と化した、なんちゃって。


とりあえず一同のテンションは低くなったものの、授業は続けられた。

ニコラが風邪気味の生徒1人に《ヒール》かけて成功させて、チェルシー嬢は《ボルテージ》でライトに電気を灯してみせる。

今後はこの3属性の扱いについても勉強していく事になったらしい。

そうして僕の貴族科としての授業は終わった。

カイレック先生は僕に一礼してから教室を去っていった。


「さて、ユージェ、帰るか?」

「あぁ、僕は兄様と帰るから」

「そういやそうだったねぇ。玄関まではみんなで一緒に行こうよ」

「そうだね」


僕は授業中に書いていた紙を机の中にしまう。

明日にでもメグ様が気付いてくれるだろ。


「あ、あの、ユージェリス様!」

「ん?」


声をかけられたので振り返ると、そこにはチェルシー嬢と取り巻きの令嬢が数人こちらを見ていた。


「ご、ご機嫌よう!」

「「「「ご機嫌よう!!」」」」

「あ、あぁ、お邪魔しました…」


僕の返答に黄色い悲鳴が沸き起こる。

…ちょっとだけアイドルになった気分だな。


「わぁ、ユージェもってもてぇー」

「棒読みだな、レオ」

「そんな事ないよぉ」

「まぁあのご令嬢方はずっとユージェとお近付きになりたがってたからな」

「ちなみに『愛し子様の』ユージェ君だからではなく、カッコいいからお近付きになりたかったみたいですよ」

「強ち間違ってるわけでもないね、モテモテっていうのも!」


…意外と『愛し子ブランド』ってご令嬢方には興味ないもんなんだな。

やっぱ親世代か、権力争いとかに使いたがるのは。

それならそうと、同世代とのやりとりは案外問題なさそうだ。

これなら貴族科受けても良かったかなー?

…まぁ、メイーナやローグナー達と仲良くなれたし、平民科で良かったよね。


そんなこんなで話をしていたら、玄関に着いた。

玄関までの道のりは色んな人達に遠巻きに囲まれてたけど、話しかけてくる人はいなかった。

うん、快適快適。


「ユージェ、お疲れ様」

「ロイ兄様!」


玄関で兄様が待っててくれた!

嬉しくってつい笑顔で兄様の胸にダイブしてしまった。

でも蹌踉めく事もなく、兄様は僕を受け止めて微笑んでくれた。

さすおに!!しゅき!!


「…本当にお兄さん好きだよね、ユージェって」

「あらまぁ、周りのご令嬢方が声すら出せなくなってますわね。気持ちは凄いわかりますけど」

「本当だ、悶えてるねぇ」

「ん?なんでだ?」

「あー、ほら、えっと…兄弟仲がいいのって微笑ましいじゃん?」

「あぁ、そういう事か」


多分それだけじゃないと思うよ、ルーファス。

相変わらずそういう事には疎いね。

まぁやらかした本人が言う事じゃないんで黙っときます。

そしてナタリー、そんな真顔で言わないでくれ、怖いから。


「授業は楽しかったかい?」

「うん、みんなと一緒で楽しかったよ」

「そうか、なら良かった。じゃあ帰ろうか」

「はーい。それじゃみんな、またね!」

「今日は弟の面倒を見てくれてありがとう。失礼するよ」

「ユージェ、またね!お兄さんもさよならー!」

「ご機嫌よう、ユージェ君、ロイ様」

「またな、ユージェ。ロイ様もまた授業で」

「じゃぁねぇ、ユージェ。ロイ様もさようならぁ」


みんなは兄様と比較的親しいので愛称で呼んでいる。

まぁニコラだけはずっと『お兄さん』呼びだけど。

でも兄様も特に気にしていないのか気に入ってるのか、そのままだったりする。

なんとなくニコラは妹扱いしてるんだよね、この前頭撫でてるの見たし。

ちなみにナタリーにはちゃんと女性扱いしてた。


みんなと別れて、ファーマの運転する馬車に乗り込もうとする。

すると大きな足音が聞こえたので、少し気になって後ろを振り返った。

…なんでいるんですか、セリウス先生。


「愛し子様、お帰りですか?!」


…あれか、喋りかけていい権利ってやつか。

そんな権利なかったんだけども。

…うん、あの柱の影にいる数人は、あんまり見た事ないけど教師だね。

ニヤニヤ笑ってるから、アイツらがやったのか。

うちのセリウス先生に嫌がらせするとは、いい度胸じゃないか。

僕は怒りを抑えてにっこりとセリウス先生に微笑んだ。


「えぇ、授業も終わりましたし、兄と帰ります。先生は確か、第1学年月組の指導員でしたよね?初めまして、ユージェリス=アイゼンファルドと申します」

「は、は、初めまして!!第1学年月組指導員、セリウスと申します!!な、何故私をご存知で…?」

「先程学院長がサルファ先生を連れておられて、その際に」

「そ、そうでしたかぁ!!」


まぁ嘘だけど。

セリウス先生の話はしてないよーん。


「少し前には父にもお会いしたそうですね。先生の事、褒めていましたよ」

「ほ、本当ですか?!あ、ありがとうございます!!」


これは本当。

あの入学試験の後、少しだけ話をしたそうで、緊張しつつも受け答えなんかはしっかりしていて、ユズキ()の事も褒めてくれていたらしい。

『いい先生そうだな』って言ってたもん。


「その若さで指導員だなんて、優秀なんですね。これからも頑張って下さい」

「いえ、私が指導員でいられるのも偏に生徒達のおかげですから!ですがこれからも頑張ります!」

「…例えば、の話ですが。先生ほどの指導員なら、誰かから妬まれる事もありそうですよね。まぁそんなバカな事をする人間がこの学院にいるとは思いませんけども」


僕の言葉に、柱の影にいる数人の顔色が悪くなる。

ほぅ、自覚はあったのか。


「まぁそんな人はいないでしょうが、学院長にはお話しておきましょうかね」

「ん?なんのお話ですか?」

「いえいえ、独り言ですよ。それでは、失礼します」

「は!お気をつけて!!」


キラキラ目を輝かせて、セリウス先生が90度のお辞儀をする。

すっげぇ直角、僕には出来ない。

僕は軽く会釈してから兄様と馬車に乗り込んだ。


「…ユージェ、何あれ?」

「僕の指導員、気付いてないけど妬まれて嫌がらせされてるんだよね。ありもしない『愛し子と話す権利』ってやつを貰ったって喜んでてさ。それならまぁ、その権利は存在したって事にしようかと」

「あー、成る程ね。ユージェ、あの先生好きなんだ?」

「いい先生だよ、おかげで月組も楽しいしね」


僕は身内には甘いんだよね。

理不尽な虐めはダメ、絶対。

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