悪夢も人それぞれ
ギリギリ金曜更新できた!
区切り的にちょっと短めですが…
「さて、ユージェリス様にはなんの闇属性を使っていただきましょうか…」
カイレック先生が思案顔のまま、手元の本をめくり始めた。
あれはきっと簡易版の詠唱とかが載った魔導書だな。
僕はベティ様の許可を得て王城にある完全版を暗記してるから、あれは読んだ事ないんだよねぇ。
「ふむ…闇属性は関わりが薄かったので難しいですな…」
「『ナイトメア』にします?」
「いや、流石にそれはちょっと…」
顔を真っ青にして、勢いよく横に首を振るカイレック先生。
あぁ、そうか、先生は誤解してるんだな。
「先生、『ナイトメア』とは、何も悪い内容を見せるだけではないのですよ」
「…なんですと?」
「対象の相手に悪夢を見せる、そう説明にはあると思いますが、単純に相手に嫌なものを見せようと思うから悪夢として扱われるのです。嫌な事なんて気持ちの匙加減ですから、人によっては悪夢でも、別の人には最高に楽しい夢かもしれないんですよ」
カイレック先生は呆然とし、そして一瞬で教育者というか研究者の顔になった。
おぉ、戦ってる時のダン◯ルドアの顔にめっちゃそっくりで凛々しい。
「…それは、盲点でしたな。つまり、魔法をかける側が犬が嫌いで犬まみれの夢を相手に見せたとしても、相手が犬好きならば悪夢とは言えない、と」
「大雑把に言えばそうですね」
「ふむふむ…成る程…では、悪夢でない夢をお願い出来ますかな?ユージェリス様」
「畏まりました」
「皆さん、まずはユージェリス様に闇属性を試していただきます。滅多にない機会ですので、よく学習するように」
カイレック先生の号令に、生徒が真剣な面持ちで僕を見る。
ニコラとチェルシー嬢も簡易魔導書を読むのをやめてこちらを見ていた。
ではでは、いきますか!
「《エリア》《ナイトメア》」
夢の世界へ、ごあんなーい♡
数分後。
「…めちゃくちゃ気持ち良かった…」
「楽しかったですわ…」
夢から覚めて、みんなはぽやーっとした状態になっていた。
カイレック先生も少しぼぅっとしてる。
「…ユージェリス様、何を思ってあの夢を…?」
僕が見せたのは、天気のいいぽかぽかした草原でみんなで芝生に寝転ぶ夢だった。
ただ、それだけ。
「直射日光はご令嬢なら浴びるのを憚られるもの、つまり良くないものです。後は芝生に直に寝っ転がるのも潔癖の人には苦痛ですよね」
「…物は言いようですな…」
「後、単純に…」
「はい?」
「ご飯食べた後の授業中に数分だけあんな状態になるのって、残りの時間が辛いですよね」
僕の一言に、教室が凍りついた。
「「「「「「「悪夢だ…」」」」」」」
席に座ってる全員が机に突っ伏して崩れ落ちる。
ニコラとチェルシー嬢は顔を手で覆ってる。
…あ、カイレック先生まで天を仰いでるわ。