教室で雑談
ギリギリ金曜日に更新出来た…!!
アリス嬢と別れた後、僕達は教室に入った。
いやぁ、面白かったよね。
僕が扉を開けた瞬間、教室の喧騒が嘘のように一瞬でシーンとしたし。
そんでクラスメイト達の顔ね。
男子は目を見開いて口をポカーンとさせてるし、女子は口は開けなかったけど、持ってた扇子とかペンとか色々落としてた。
そして何食わぬ顔で教室を進んで、ナタリーから教えてもらったメグ様の座席に座る。
ちなみにメグ様は窓際の1番前で、後ろがナタリー、隣がニコラだった。
ニコラ、目があんまり良くないもんね。
最近では授業中だけ眼鏡をかけてるらしい。
んでそんなニコラの後ろがルーファスで、そのまた後ろがレオ。
やったね、囲まれててラッキー!
「さてと、あと15分くらいか。何しよっか?」
「特にする事はないな。ユージェ、教科書どうするんだ?」
「メグ様の勝手に借りるのもあれだし、ルーファス見せてよ。あとなんかノート代わりの紙とかある?」
「それならこれをどうぞ。あと書くものも」
「ありがと、ナタリー」
ルーファスの机に自分の机をくっつける。
ナタリーからもらった紙と借りたペンを机の上に置いて、準備オッケー。
板書したのはメグ様の机の中にでも入れておこう。
「あ、あの、ナタリーさん?ちょっとよろしいかしら?」
少し吃ったような声が聞こえて、僕達はそっちを振り向いた。
そこに立っていたのは…
「チェルシー様、如何なさいましたか?」
…そうだ、メイーナの異母姉妹の金髪碧眼縦ロール!
うーん、こうやって見ると、やっぱりあんまり似てないな…
メイーナの方が可愛い、うん。
そして相変わらずのまな板…12〜13歳なんてそんなもんかな?
でもナタリーとニコラもそれなりに曲線を描いてるし…
…メイーナってどうだったっけ?
いや、流石にそこまで考えたら失礼か。
「そ、そちらの席にいらっしゃるのは麗しの…いえ、ええっと、ま、マーガレット様はどちらへ?」
なんだよ、麗しのって。
初めて聞いた言い回しだな。
「マーガレット様は所用で王城にお戻りになられましたわ」
「そ、そうですの…そ、それで、あの、愛し子様のご案内は如何でしたの?」
僕ならここにいるけど…
不敬になるから話しかけてこないのかな?
昔、敵対するなら容赦しないって言っちゃったしな。
でもナタリーとの関係性は悪くなさそうだし、ニコラからもイジメられたとかは聞いてないから、何も起きてないのかな?
いや、ニコラならイジメられてても気づかなそうだ。
でもナタリーが何も言ってないから、大丈夫…だよね?
「多少問題は起きましたけど、中庭や食堂などをご見学されました。今日はこの後のご予定もないそうなので、お帰りになられたマーガレット様のお席で体験授業を受ける事になったのです」
「まぁ、そうだったんですのね!そ、それでは、授業を受けていらっしゃる間は、指導員達も一生徒として扱われるのかしら?」
「それを望んでいらっしゃいますから、そのようになるかと」
「わ、私達も授業中であれば話しかけても不敬にはなりません…わよ、ね?」
金髪碧眼縦ロールがこちらをチラチラと見ながらナタリーに確認してくる。
もしかして、まだ僕と関わりを持ちたいのかな?
まぁ、別に頭ごなしに否定はしないけど…
「…別に、今でも不敬にはなりませんよ。デビューの時以来ですね、カルデラ公爵令嬢様」
「…っ!!え、えぇ、ご機嫌よう、ゆ…アイゼンファルド侯爵子息様」
公爵令嬢が慌てたようにカテーシーを取りながら挨拶をしてくる。
…名前を呼ぼうとしてやめたな。
まぁ許可してないしね。
「あ、あの、もしよろしければチェルシーとお呼び下さいませ。私以外にもカルデラ公爵令嬢はおりますので…」
「あぁ、庶子の?」
「…え?」
僕の発言に、公爵令嬢がポカーンとした表情になる。
…え、もしかして、メイーナの事知らないの…?
「…いえ、あの、私には姉が1人おりますので…庶子、では…なくてですね…庶子、ですか…」
段々と顔色が悪くなっていく公爵令嬢。
やべぇ、これ、言っちゃダメなやつだったのか…
ついポロっと口から出ちゃったけど…
メイーナの名前が出なかった事が救いだな。
「いえ、そんな噂を聞いたものですから。公爵家の家族構成は詳しくなかったもので、噂の庶子の事をおっしゃっているのかなぁ、と。貴女が知らないのであれば、あれはデマだったのですね」
秘技・兄様譲りの王子様スマイル!!!
教室に黄色い悲鳴が響き渡る!!!
「っえぇ、そうですわね!!我が家に庶子なんておりませんわ!!」
顔を真っ赤にして、なんなら目もハートになった状態で、両手を胸の前に組んで僕の言葉に肯定する公爵令嬢…チェルシー嬢。
うーん、中々チョロい。
昔はもっと悪役令嬢感が強かったけど、変わったのかな?
まぁこれくらいなら可愛いもんだよね、ルーファス妹に比べれば…
「なんか今、誤魔化してなかったか?」
「ルーちゃん、そういうのは思っても言っちゃダメだよぉ?」
「そうそう、えーと、お口にチャック!だっけ?」
「あら、お伽話の王妃様の得意技のお言葉ですね。ニコラちゃんてばよくご存知で」
「父さんが昔話してくれた寝物語のセリフだよー!」
え、何、ベティ様って物語になってるの?!
何それ、見た事ないんだけど!!
家の図書室にもなかったのに…
「ニコラ、ナタリー、その寝物語って何?」
「ご存知ないのですか?」
「俺でも知ってるぞ?」
「ほら、ユージェって親から寝物語を聞かされなくても大人しく寝るタイプだからぁ…」
「あー、成る程、納得!」
おい、レオ、ニコラ、どういう事だ?
僕はみんなの回答に不服で、眉間に皺を寄せた。
すると4人ではなく、チェルシー嬢が僕の疑問に答えてくれた。
「あの、愛し子様であらせられる王妃様のお話が貴族間でのみ存在するのですわ。どのような方なのか、どのような功績をお持ちなのか、など…口頭で伝えられた物語ですので、書籍にはなっていませんの。実際に親が見た王妃様の姿を寝物語として子供に語り継いでるのです」
「へぇ…道理で見た事ないと…」
「ユージェの場合、僕達が伝え聞くよりも、王妃様にお会いして誰よりもご本人を知ってるからねぇ」
「それもそうだね。でも折角だから今度その物語聞かせてよ」
「いいよ!あたしの好きな陛下との馴れ初め物語聞かせてあげる!」
「何それ、めっちゃ聞きたい」
聞いたら是非ベティ様にも教えてあげよっと。