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王子と愛し子

「エドワーズ様、御前で発言する許可をいただけますか?」


ちょっと返しに困っていたら、ルーファスが助け舟を出そうとしてくれたのか、声を発する。

声の主を認識すると、王子様は興味なさそうに眉間に皺を寄せながらそれに答えた。


「ルーファス=オルテスか。貴公に用はない、下がっていろ」

「…失礼致しました」


…なんか、ちょっと嫌な感じ。

でもまぁ、メグ様のお兄さんだし、初対面で邪険にするのもな…

メグ様の話だと、この王子様は少し人を小馬鹿にするところがあるらしい。

いや、もしかしたらメグ様の事だけを小馬鹿にしてるのかもしれないけど…

んでベティ様曰く文武両道タイプで、目的の為なら手段は選ばないし、それによってなのか挫折を知らないらしい。

さすがに悪い事には手を出したりはしないから、1度挫折でもすれば周りとの距離感とか相手を思い遣る事の出来る、賢王と呼ばれるであろう逸材なのにねぇ…とため息をつきながら前にベティ様が話してくれた。

挫折ねぇ…僕がぽっきり折るわけにもいかないだろうし…

とりあえず、僕は立ち上がって軽く一礼をした。

ぶっちゃけ、次期王太子に握手なんて出来ないよね。


「お初にお目にかかります。アイゼンファルド侯爵子息、ユージェリス=アイゼンファルドと申します」


目を見開き、僕を凝視する王子様。

そして王子様の握手を返されると思っていた左手がピクピクしてる。

ははは、わかりやすい喧嘩なんて買うわけないじゃーん。


「…メグから話はよく聞いている。是非私とも個人的に仲良くしてほしいところだな」

「そうでしたか。ですが個人的に仲良くなどと恐れ多い。私は一貴族として、王家に忠誠を誓う身であります。贔屓をしていただく気は毛頭ございませんので、是非ただの愛し子(・・・・・・)としてお付き合いさせていただきたいと思っております」

(訳:個人的になんて仲良くしないし、愛し子への命令権は2種類しかないんだから、それ以外で声かけないでね!)


…どうやらキチンとルーファス達には裏の訳が聞こえたようだ。

そしてみんな笑いを堪えきれなくなったらしい。

頭を下げてるから表情はわかんなくても肩が震えてるからバレバレ。

ちなみに王子様の取り巻きが3人いるけど、訳はわからなかったようでみんなを見て首を傾げている。

そして王子様は…うん、わかったみたいだな。

少し不満げな顔してるし。


「ただの愛し子、か…貴公に聞きたかった事がある。答えよ」

「なんでございましょう?」

「貴公は、『愛し子』とはなんだと思っている?」


…王子様の問いかけに、一瞬固まった。

その反応を見て、王子様はさらに眉間に皺を寄せた。


「…それは勿論、精霊がこの国の平穏を保つ為に力を宿して具現化した存在で…」

「教科書のような解答でなく、貴公の考えが知りたいんだ」

「…私の考え、ですか…それは、今はお答え出来かねます」


なんたって、まだ精霊に会って問い質していないからね。

いくら愛し子が魔力を移動させるための入れ物に使ったとはいえ、それなら元の世界に戻してくれたっていいはずだ。

死んだとはいえ、向こうの世界の輪廻転生に戻せばいい。

なのに態々この世界に留まらせる。


「…母と同じだな」

「へっ?」

「以前、同じ質問をした事がある。そして母は最初、教科書に書いてあるような内容を答えたが、私にはそれが正しいとは思えなかった。何故なら母の笑顔が固まったままだったからな、そこでもう1度尋ねた」

「…ベティ様は、なんと?」

「…『今はまだ答えられないわね』と、少し悲しげな顔をしていた。貴公のようにな」


…僕、今そんな悲しそうな顔してたのか?

つい手で自分の顔をペタペタ触ってみる。

…これじゃわかんないな。


「…私は常々、『愛し子』とはなんなのか、必要なのか疑問を感じている。何故謎の力を持った人間を特別視し、崇拝せねばならん?強力な力など、脅威以外の何物でもない。どうして敵に回らないと思えるのだ?一体愛し子は何を考えているんだ?」


…お、おう、シリアスな話になってきた。

というか、ここで話していい話じゃないでしょ。

しかも王太子になる人間が愛し子を軽視してるかのような発言…


うーん、よろしくないねぇ。

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