召喚してみたかった
「あ、父様」
「…ユージェリス?」
ぽかーんとした顔の父様が突然現れて、辺りは騒然とした。
女生徒からは黄色い悲鳴も上がってるな。
にしても父様、ぽかーんとした顔もイケメンですね!!
「…ここは、学院か…?」
「召喚してみたよ!」
「…さっきの手紙は…」
「ロイド様に父様借りるお断りの連絡しといた!後でロイド様かアレックス様も来てくれると思うよ!」
「…せめて私にもしてくれ…」
あ、父様が頭抱えてる。
まぁ悪い事したとは思ってるよ、反省シテマス、ウフフ。
「ユージェ、お前、中々凄い事したな…」
「今すぐ来て欲しくてさぁ。現場保存って大変だし?」
「ユージェなら現場保存も簡単だったんじゃないのぉ?」
「…1回、召喚魔法って使ってみたくて、てへ」
「召喚魔法って王城や学院の結界に引っかからないんですね…」
「それってマズくない?いや、召喚魔法なんて普通使える人いないか」
「酷いな、ニコラ。まるで僕が普通じゃないかのようじゃないか」
「普通じゃないだろ」
「普通じゃないよねぇ」
「普通じゃないと思いますけど」
「普通じゃない!」
「みんな酷い…」
くすんくすん、僕泣いちゃうよ?
「…それで、一体どうしたんだ?何かあったから呼んだんだろう?」
少し立ち直ったようで、父様が僕に尋ねてくる。
そうそう、問題はそっちなんだよ!
「父様、黒い瘴気の事件、覚えてる?」
「…!!まさか…」
「…さっき、この場でメグ様に現れた。気付いたからすぐ消し去ったんだけど…」
「マーガレット様にか?!」
「よくわからんが、妾は無事じゃぞ、叔父上」
「あぁ、マーガレット様、ご無事で何よりです」
父様が片膝をついてメグ様に挨拶をする。
メグ様は不思議そうな顔をしながらも、父様の挨拶を受けていた。
「…あれは、愛し子様だけではなかったのか…まさか王家に連なる方が…?いや、しかし…」
「メグ様も元気そうだし、何より発現した瞬間は覚えてないみたいなんだ。だから父様達に色々確認してほしくて…」
「わかった、マーガレット様は私が王城までお連れしよう。ロイドかアレックスの師団が来るのか?」
「詳細は書いてないけど、お呼び出しはしといた。前の現象見てるのはお2人だし、調査も2師団がやってたよね?」
「あぁ。ならロイドが来るだろう。アレックスは午後、王都の巡回があるからな」
そっか、なら大丈夫だな。
なんとなくアレックス様よりロイド様の方がしっかりしてくれてる感じがする。
「…おかしな魔力の残留はないな。ユージェリスが消したからか?何かおかしな点はなかったか?」
「うーん…見た方が早いかも?父様、ちょっと失礼」
背伸びをして、父様のおでこに触れようとする。
うーん、思ったよりギリギリ。
これでも結構伸びたと思ってたんだけどなぁ…
「《メモリー》」
これは自分の記憶を相手に見せる魔法。
見せる時間が長ければ長いほど魔力を使う。
ちなみに一瞬で数分を見せる事が出来る。
前回の時もこれで父様には説明したんだよね、アレックス様とロイド様が。
「…ふむ…嫉妬、が引き金とも言えそうだが、それだと前回のユージェリスとは一致しないな…」
「…嫉妬、というか…」
なんか、突然殺意を感じたんだよな。
違和感のある殺意だった。
直前までは全然そんな感じしなかったのに、一瞬で嫉妬が殺意に変わっちゃったというか…
うーん、説明が難しい。
そういえば僕の時も引き金は殺意だったような気がする。
前世の記憶がフラッシュバックのように夢で現れて、そして…
あぁ、うん、思い出すのはやめておこう。
もう僕は『ユージェリス』なんだから。