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理想の婚約者

「どうした?ユージェリス」

「え、えと、あのおっさんが失脚するのは僕のせい…?」

「あぁ、違う違う。最初から説明するとな、あの男は正統な騎士団長ではないんだ。前騎士団長…ファニール=バークレー様という女性がバークレー侯爵家の跡取りだったんだ。あの男は他国から婿入りしたんだよ。そして右翼の副団長が生まれた。ファニール様が亡くなられて、あの男は後妻を娶った。そして長男を出産している。つまり血筋で言えば彼女だけが騎士団長になるべき存在だったんだ」

「だが騎士団長に付けるのはそれなりの戦闘経験などを積み、尚且つ爵位を継いだ者のみ。なのであの男が中継ぎという形で就任したんだ。右翼の副団長は当時まだ学院生だったからな。今では前者はなんとかなるが、後者はあの男が譲ろうとしなくて…何か問題を起こせば責任を取らせて爵位を継がせてしまおうと思っていたのだよ」


父様と宰相さんが説明してくれる。

なるほど、今回の件でこの副団長さんに爵位を譲らせる口実にする、と。


「通常なら配偶者か婚約者がいる状態でないと爵位は継げないのだけれど…どなたかいらっしゃるの?」

「確か左翼の副団長が婚約者だったのではなかったのか?」


ベティ様と陛下が副団長さんに尋ねる。

副団長さんは宰相さんに促されて立ち上がっていた。

まだ顔色は悪いままだけど、少し考えるように眉間に皺を寄せる。


「…正式な婚約者ではありません。あの人が勧めてきただけで、婚約者候補と言ったところでしょうか」

「でも確か、左翼の副団長はその気だったと思うぞ?以前話を聞いた事がある」

「…一方的なだけです。私は認めていません」

「そうなると、他の人を探すべきねぇ。どんな方が好みなの?」

「えっ?!そ、それは…」


まさかのベティ様からタイプを聞かれる副団長さん。

おーおー、慌ててる慌ててる。

さすがにベティ様に聞かれたら答えないわけにもいかないよねぇ。

…ん?なんでチラッと一瞬こっち見たの?


「…え、えと…左翼のような風貌ではなく、年上でなく、私よりも強くて、優しくて、私のような人間でも女性扱いしてくれるような…」

「…中々ハードル高いわね…」

「あぁ、当て嵌まりそうなのって、ユージェリスくらいじゃないか?」

「まぁ確かにユージェリス殿は鍛えてはあるが左翼と違い痩身で、年下で、右翼よりも強く、優しく、女性に甘くて…」

「すみません、その女性に甘いって誰の情報ですか?」

「レオナルドだな」

「アイツ…!」


なんだよ女性に甘いって。

せめてフェミニストとか言えよ!

…いや、この世界にフェミニストって言葉はないか。


「レオナルド曰く、いつもの5人で会う時にはスタンリッジ伯爵令嬢やフラメンティール士爵令嬢の好むお菓子を持参し、トリファス子爵令嬢方やメルグフール男爵令嬢の個人的な小さな規模の茶会などには基本的に出席、お忍びで王都や侯爵領を訪れれば必ず妹とメイドへの土産を買う、お忍び中に女の子が困っていれば必ず手を貸すなどなど…」

「そういえばさっきも女の子のお願い聞いていたな…」

「そういうところはルートと真逆だな。コイツは学生時代、マリエール以外の女生徒には比較的冷たい対応だったぞ。今でこそ女性に優しいが」

「ユージェ、一歩間違えると、ただの女好きね。背中に気をつけなさい?」

「…女性に優しい…素敵…」


みんなの言葉に、今度は僕が床に突っ伏す。

リアルorzだね、土下座ってわけではなく。

ただ1人、何故か副団長さんだけは僕の事を褒めてくれてるけど。


「あ、あの…鍛えている、という事でしたけど、腕とか触っても大丈夫でしょうか…?」

「へ?あぁ、構いませんよ。腕でも腹筋でも、お好きにどうぞ」


少しモジモジしながら尋ねてきたので、僕は許可をして立ち上がる。

副団長さんは躊躇いながらも服の上から腕を掴んだり、腹筋の辺りを触ってきた。

…地味に擽ったいな。


「…確かに、お若いのにしっかりしてますね…着痩せなさるんですね…」

「まぁ腹筋も割れてますし、それなりには」

「えぇっ?ユージェ、腹筋割れてるの?今度見せてちょうだい!」

「ベティ?!」

「いいじゃない、陛下は最近サボってばかりで、腹筋なくなってしまったんですから。私、ぷにぷによりもしっかりした筋肉の方が好みですの」


ベティ様の言葉に、陛下がショックを受ける。

これは今日から鍛え直すんだろうなぁ。


「ねぇねぇ、お姫様抱っことか出来る?出来る?」

「出来ますよ、フローネにはたまにせがまれますし、リリー…メイドは身重なので、何かあった時に持てなくてはいけませんからね。ほら、こんな感じ」

「へぁっ?!」


ベティ様の期待の目に、僕は横にいた副団長さんを軽々と持ち上げてお姫様抱っこをする。

その瞬間、副団長さんは顔を真っ赤にして変な声を出していた。

あぁ、しまった、驚かせちゃったか。

…いや、惚れられちゃったか?

うーん、でもまぁこの人なら無理矢理迫ってくる事もなさそうだし、ちゃんと弁えてくれそうだ。

まず自分の父親と僕の問題があるからな。

というか、この人いくつだ?

20代前半…いや、後半か?

下手すると僕の倍の年齢でしょ?

さすがに歳は近い方がいいな…


「すみません、突然持ち上げたりして」

「い、いえ…」


そっと降ろすと、真っ赤な顔のままの副団長さんがスススッと僕から離れてった。

うーん、なんか警戒されてる…

まぁいいか、ちょっと猫みたいで可愛いし。


そんな事を考えていたら、突然勢い良く執務室の扉が開いた。

驚いて全員で扉の方を確認すると、そこにいたのはなんとメグ様だった。

…なんでここにメグ様いるの?

というか、ノックすらなかったよね?

うーん、淑女としてというより、王女としてあり得ない行動だな。

これは説教案件だわ。


「ユージェ!無事か!」

「ご無沙汰しております、メグ様。えぇ、特に怪我もなく無事ですよ」

「それは良かったのじゃ!もう討伐が終わったのなら暇であろう?妾とお茶にしようではないか!」

「マーガレット!なんですか、その態度は!」

「母上、煩いのじゃ!妾はユージェに用があってきたのじゃから、母上に用はないのじゃ!」


…どうしてこんな娘になっちゃったのかねぇ…

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