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右翼の土下座

プチパレード状態で王都を進み、王城に向かってます。

なんでプチパレードかって?

最速記録で大元のスタンピードを止めて帰ってきたからだね。

しかも愛し子()もいるし。

まぁ僕は魔法師団の下っ端さん達が乗ってる大型の馬車の方に同乗させてもらってたので、人の目には晒されてないけど。

ちなみに同乗してた下っ端さん達は恐縮しちゃって、めっちゃ距離置かれちゃってるけど。

どうやらさっきの討伐で天災級とかに圧勝してるの見て、ちょっと怖がってるらしい。

そうだよねぇ…圧倒的な力を目の当たりにしたら、怖いよねぇ…

…なんか、ちょっと悲しくなってきた。

1人でさっさと『ワープ』しちゃえば良かった。

そんな事を考えていたら、馬車が減速していく。

着いたのかな?


「ユージェリス様、王城に着きました」


止まったと思ったら馬車の扉が開き、ロイド様が声をかけてくれた。

はぁ、やっと着いたか…

僕がため息を付きながら腰を上げて扉の方へ向かうと、ロイド様が少し怪訝そうな顔をした。


「…どうかしましたか?ロイド様」

「いえ…なんでもありませんよ」


にっこり、と効果音が付きそうなほど、ロイド様は優しく笑う。

僕の気のせいだったかな…?

馬車を降りると、何故か代わりにロイド様が馬車に乗るように足をかけた。

おや?


「ロイド様?」

「申し訳ありませんが、先に師長のところへ向かっていただいて構いませんか?私は少々、この者達に説教(お話)がありますので…」


…おやぁ?ロイド様の目が笑ってないぞぉ?

な、何かあったのかな…

とりあえず僕は頷いて、父様がいる方へと小走りで向かった。

暫くして、背後から悲鳴が聞こえた気がしたけど、気のせいだと思いたい。


「おや?ユージェリス、ロイドはどうした?」

「な、なんか用があるみたい?で…」

「…そうか、なんだろうな?では、謁見しに行くぞ」


父様は少し小首を傾げてから、僕を促す。

僕は仮面を外してから、父様に付いて王城を進んだ。

さすがに王城では外さないとね。

ちなみにロイド様以外の師団長達は、あのおっさんの治療や調査報告書などの作成の為に魔法師団室に戻るらしい。

なので陛下への謁見は父様と僕で向かう事になった。

本当は立場的におっさんも必要だったんだけどね。


「…おや、右翼の」

「師長様、ご無事で何よりです。先程小隊長から簡単な報告は受けましたので、陛下への謁見に同席して詳細な情報を一緒にお聞きしてもよろしいでしょうか?」


廊下の角を曲がった時に、目の前に1人の女性が現れた。

赤みがかかった長い黒髪をキュッとポニーテールにしてて、キリリとした目をした美人さんだった。

おお、瞳が金色だ、珍しい。

あ、目が合った。

美人さんは少し目を見開いてから、父様を見直す。


「…あの、師長様、そちらはもしや…」

「あぁ、息子のユージェリスだ。ユージェリス、こちらは騎士団の副団長の1人で右翼のアイカット=バークレー殿だ」


おぉ、父様が僕に紹介するって事は、信頼出来る人なんだな。

確か副団長には右翼と左翼と呼ばれる2人がいるんだっけ。

ならキチンとしないと。


「お初にお目にかかります。アイゼンファルド侯爵子息、ユージェリス=アイゼンファルドと申します」


僕は貴族の礼をしてから、副団長さんに向かって微笑む。

その瞬間、副団長さんの頰が少し赤みを指した気がした。

でもそれも一瞬で、気のせいだったかな?と感じるくらいだった。

結構表情とかを悟られないようにするのが上手なタイプのようだ。


「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。改めまして、リリエンハイド王国騎士団、右翼の副団長を務めておりますバークレー侯爵令嬢、アイカット=バークレーと申しましゅっ」

「「…」」

「…失礼致しました…」


あ、噛んだと思ったら顔真っ赤。

どうやら緊張してたのを無理矢理なんとかしただけだったみたい。

うーん、意外と可愛らしい人のようだ。

凛々しい見た目なのになぁ。


「え、えっと…ユージェリス様は愛し子様でいらっしゃいますよね?部下からはユージェリス様も戦われたと聞いたのですが…」

「あぁ、はい、王命に従って討伐に参加させていただきました」

「天災級と災害級はユージェリスが全て倒してくれたおかげで、被害は最小限で済んだよ」

「て、天災級と災害級をですか?!…まだお若いのに、お強いのですね…」


副団長さんは驚いた後に、少し感心したような表情で僕を見つめた。

うん、ちょっと照れる。


そのまま3人で歩き出し、陛下の執務室へとやってきた。

執務室には陛下と宰相さん、それにベティ様もいらした。

ちなみに執務室に入った瞬間、ベティ様に抱きしめられたよね。


「ルート、ユージェリス、ご苦労だったな!」

「ユージェリス殿、先程はすまなかった」

「ユージェ、大丈夫だった?怪我はしてない?」

「べ、ベティ様、苦しい…ジェイク様、お気になさらず…陛下、戻りました…」

「まずはご報告致します。グリーディアの森でのスタンピードですが、討伐内訳は天災級が20、災害級が12、自然級が47。天災級と災害級をユージェリスが、自然級を私と魔法師団長6名、騎士団総勢61名で討伐完了しています。また第7師団長からは逃亡していた自然級2体を騎士団との共闘で討伐した事が報告されています」

「ユージェリスが天災級と災害級をやったのか!凄いな!ユージェリス!」

「お、恐れ入ります…だから、ベティ様、苦しいってば…」

「あらいけない、力込めすぎちゃった」


やっとベティ様から解放された。

と言っても、僕の横から離れようとはしなかったけど。

心配させちゃったかな?


「続けます。こちらの死者…被害としては0ですが、1名重傷の為、現在師団長が数名ポーションを使用して治療にあたっています。軽傷者は治療済みです」

「重傷?ルートレールやユージェリスもいるのにか?お前達は聖属性持ちだろう?」

「私や他の聖属性持ちの師団長は、討伐後魔力不足で速やかに全快させる事が出来ませんでした。ユージェリスは…その…致し方ないかと」


父様が少し目線を逸らしながら、呟く。

それを聞いた宰相さんが、眉間に皺を寄せながら首を傾げた。


「ユージェリス殿、如何したのか?」

「えっと、個人的な感情で治療しませんでした…」

「個人的な感情?まず重傷者は誰だったのだ?」

「…騎士団長って人…」

「騎士団長って、グレゴール=バークレー騎士団長?」

「いや、挨拶したわけじゃないから名前は知らないんですけど…」


そんな名前だったのか、あのおっさん。

…んん?バークレー?

それってもしかして…


「…割り込むようで失礼致します。ユージェリス様、あの男が何か無礼な事を致しましたでしょうか…?」


副団長さんが、顔面蒼白で僕に尋ねる。

…もしかしなくても、身内ですか?

似てはいなさそうだけど…あぁ、瞳の色は一緒かも?

あんまり顔見ないようにしてたから自信はないけど、確かおっさんの瞳も金色っぽかった気がする。


「…右翼の。あの男はな、ユージェリスに対して『コイツ』だの『ガキ』だの『愛し子』だの、見下すような不遜な態度で接していたのだよ」

「…大変申し訳ありませんでしたぁ!!!!」


父様の言葉に、顔面蒼白のまま僕に向かって土下座をする副団長さん。

いやいやいや、副団長さんのせいじゃないでしょ?!


「…ほーう、愛し子様たる俺の可愛い甥っ子に対して、随分な事してくれたとはなぁ…」


聞いた事ないような低い声を出す陛下にギョッとする。

陛下、そんな声出せたんですか?!

全然いつもと雰囲気違うんですけど?!


「あらあらあらあら、あの男、私にはそんな態度取らなかったのにねぇ…やはり『愛し子』じゃなくて『王妃』だからの態度だったのねぇ…」


なんでだろう、笑顔のベティ様の背後に、氷山が見える。

めっちゃ吹雪いてる、絶対零度の微笑みや。


「生まれは違くとも、この国に属する人間にあるまじき発言ですな。ちょうどいい、これを機に失脚させましょう」


まさかの宰相さんが眼鏡をクイッとさせながらの爆弾発言ー!!

え、何、そこまで問題視されるの?!

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