好感度うなぎのぼり
というわけで、戻ってきました、地の門に。
王城一直線でも良かったけど、地の門で戻ってきたという手続きをしなければいけないらしい。
…僕に至っては、王都の外に出るという申請すらしてなかったんだけども。
まぁそこはスルーしておいてもらおう。
余談だけど、おっさんの事は時空属性魔法を使って時間を止めておいた。
イメージとしては、メデューサに睨まれた後の状態みたいな?
かちんこちんです、騎士団の人達が数人で運んでいます。
聖属性の回復魔法がかけられれば解けるようにしてある。
僕はもうノータッチです。
とりあえずみんなの申請が終わるまで、僕は像の前の階段に座って待ってます。
…遠くからの王都民の視線が刺さります。
なんていうか、好奇の目っていうの?
愛し子がこんな至近距離にいる事なんてないから、気になるんだろうなぁ…
でも高位の人間でもあるし、下手に声はかけられない、と。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
「…ん?」
マントを軽く引かれて、声をかけられた。
振り返ると、そこには5〜6歳の女の子が階段の上に立っていた。
…どこから来たんだ、この子は。
…あ、ちょっと離れたところにいる女の人が顔面蒼白でこっち見てる。
あの慌てようは…目を離した隙にここに来ちゃった感じだな。
でも騎士団やら魔法師団やらが周りにいて来れない、という。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんってばぁ」
「んー?何かなー?」
ちょっと拗ねたように頬を膨らましてるのを見て、フローネの幼い頃を思い出した。
ついフローネにしてたように、頭を撫でる。
「魔物さんはもういなくなったのー?」
「うん、みんなで倒したから、もういないよー」
「お兄ちゃんも倒したのー?」
「ちょっとだけねー」
ぶっちゃけ殆どと言ってもいいくらいだけど。
「お兄ちゃん、強いのね!」
「鍛えてるからねぇ」
「凄いんだね!ねぇねぇ、そのお顔のやつ、なんで付けてるの?」
「うーん、気になる?」
「うん!お顔見たい!」
「そっかぁ、じゃあ、特別だよ?」
こんなキラキラした目で見られたら、叶えてあげたくなっちゃうよねぇ。
純粋な女の子の目線には弱いのです。
僕は王都民側に背を向けて、マントを広げて見えないようにする。
あ、騒ついてる。
「…はい、これでいいかな?」
仮面を外して、秘技!王子様スマイル!
見本は兄様です。
「…ふわぁー!!!!カッコいいー!!!!」
顔を真っ赤にして、さっきよりもキラキラな目で叫ぶ女の子。
騒めきが大きくなってきたので、さっさと仮面を戻す僕。
「お兄ちゃん、すっごいカッコいい!!」
「そっか、ありがとう。ほら、そろそろお母さんのところに戻りな?」
「えぇー?!」
「うーん、じゃあ、エスコートしてあげるからさ」
「えすこぉと?」
小首を傾げて不思議そうな顔をする女の子。
僕はそんな女の子よりも下の段に降りて、片膝をつく。
そして右手を差し出して、軽く微笑む。
「お手をどうぞ?お嬢様」
それを見た女の子が、パァっと嬉しそうな顔をしてから、ツンっと澄ましたような表情をしながら僕の手に自分の手を重ねた。
「し、仕方ないわねっ!えすこぉとさせてあげるわっ!」
ふむ、この子のお嬢様像はツンデレタイプか。
何を見てそう思ったんだろう。
この年頃の子だし、やっぱ絵本かな?
とりあえず女の子を伴って、お母さんらしき人のところへ向かう。
あ、お母さんらしき人、めっちゃ顔真っ赤にしてアワアワしてる。
目の前まで近付き、軽く一礼。
「さぁ、お嬢様、もう勝手にお母さんのところから離れちゃダメだよ?」
「はぁい!…お兄ちゃん、また会いに来てくれる?」
「王都にお家もあるから、来れなくはないけど…まぁ、いつかね」
「約束よ!」
女の子の頭を再び撫でてから、僕はその場を去る。
女の子がいた方向が随分騒がしいから、なんか色々聞かれてるのかもな。
まぁあの歳の子に容姿を聞いたところで正確には伝わらないでしょ。
僕は父様のところに戻ろっと。
「父様、終わったー?」
「…ユージェリス、お前、いつの間にあんな技を…」
「へ?」
「…さっきの対応で、あの辺一帯がお前の事をガン見してるぞ」
父様が呆れたように言って、遠くを指差す。
目線を向けてみると、さっきの女の子の周りがこちらを見て黄色い悲鳴を上げていた。
…おぉ、すげぇ。
「ファンクラブでも出来そうな人気だな」
「え、そんなのあるの?」
「学院でもあるぞ?確かロイヴィスのファンクラブもあると聞いているが」
なんだって?!兄様の?!
よし、加入しよう。
あ、男じゃ入れてくれないかな?
うーん、とにかく探して聞いてみよう!
「…ユージェリス、お前の考えてる事が手に取るようにわかるぞ…」
父様がハハハッ、と乾いた笑いを零す。
いいじゃないですか、兄様が好きなんだもの。
でももしかしたら父様のファンクラブだってあるんじゃないの?
それにも入りたいなぁ…
とりあえず、調査しておこう。