ムカつくおっさん
土日に更新出来なかったので、今日は2話目です。
うわぁ、めっちゃ目立つ場所に転移しちゃった。
この像をイメージして飛んだせいかな…
父様ポカーンって顔してるし。
…って、振り返ったらめっちゃ人がいっぱいなんだけどぉ?!
あ、半分くらいは魔法師団の人かな?
父様と同じようなローブ着てるし…
おっ、ニコラのお父さんのロイド様がいる!
僕と目が合うと微笑んでくれたので、僕も微笑んでおく。
にしても、なんか一般人にも周りを取り囲まれてるなぁ。
なんか凄く見られてる…
目立つよねぇ、こんな格好じゃ。
「ユージェリス、屋敷に使いをやったが会ったか?」
「いや、ルーファスの家に行ってたから会ってないよ?」
「…なら何故ここに来れた?」
「慌てた様子のレオから聞いて、嘆願書取りに来た宰相さんの指示で」
「…やはり嘆願書は見つからなかったのか…」
父様が手を顔に当てて、呆れたようにため息をつく。
いえいえ父様、見つかったけど使えるものじゃなかったんですよ。
後で教えてあげよう。
「おい、ルートレール。コイツが愛し子か?」
なんかイラっとする言い方をされて、声の主を探す。
そこにいたのはそれなりにガタイのいい、少し色黒で赤髪のおっさんだった。
おっさんはこちらを訝しむように見ている。
見事に嫌悪感を隠そうともしない。
なんか、初めて人間から敵意を持たれた気がする。
「…えぇ、その通りです」
「こんなガキがねぇ…体も細っちいし、剣の腕は全く期待出来そうにねぇな」
…カッチーン。
すげぇムカつく、このおっさん。
これでも脱いだら腹筋割れてるんだぞ?
折角のイケメンだから、前世でいう細マッチョを目指して毎日筋トレしてるっての!
12歳でも身重のリリーが転んだ時に支えられるくらいには腕の力だってあるんだからな!
それに魔法が使えなくても、僕の戦闘スキル系は全てカンスト以上だぞ?
言わないけど。
「…おいおい、お前、目上の人間に挨拶も出来ないのか?その仮面外してさっさとしろよ」
僕の顔を覗き込むように、おっさんが挨拶を促す。
いやぁ、コイツと挨拶したくなぁーい…
チラリと父様を見ると、めっちゃおっさんの事睨んでた。
うふふ、父様もコイツ嫌いなんですね!
「すみませんが、親しくしたくない相手とは挨拶しなくてもいいと王妃様から…国から許可を得てますので!」
「は?」
ポカーンと呆けた表情で、固まるおっさん。
僕はそんなおっさんの横を通り過ぎて、父様の横に立つ。
あ、父様ちょっと悪い顔してる。
「すまないなぁ、常識知らずで。お前に挨拶を強要させる事が出来る人間なんて、いないはずなんだがなぁ」
ニヤニヤする父様。
そんなに嫌いだったのか。
父様の言葉を聞いて、少し憎しみを込めた目を向けるおっさん。
空気感変えて、さっさと出発しよう。
スタンピードも起こっちゃってるしね。
「父様、ちゃんと嘆願書に署名してきたから、僕も討伐参加するよ。だからこの場で宣誓させてね」
「宣誓?…あぁ、わかった」
父様は僕の意図する事がわかったらしく、改めて凛々しい顔付きで僕に向き直る。
僕はそんな父様の前に跪き、剣を鞘に入れたまま地面に突き立てた。
キーン、と高い音を立てて、周囲の喧騒などが静まる。
「…私の名は、ユージェリス=アイゼンファルド。王命により、向かい来る全ての敵を討つ事をお約束致しましょう。これから私は貴方の剣となり、盾となり、精霊の愛し子としてこの国を守る事を誓いましょう」
「魔法師団、宮廷魔術師長ルートレール=アイゼンファルドの名において、精霊の愛し子様たる貴殿の力をお借り致す。我らが望むはただ1つ、この国の安寧だ」
「御意。その願い、精霊の名において叶えてみせましょう」
僕と父様の周りに、魔力のキラキラしたエフェクトがかかる。
周囲の人々からは小さな歓声が上がった。
よしよし、これでみんなの不安は少し解消されたね!
さっきの愛し子に対する暴言のようなものを聞いたみんなの顔色が悪くなっていたから、ちゃんと討伐には行きますよーって見せつけておかないとね。
そうだよねぇ、普通は僕の機嫌を取ろうとするもんなのに、このおっさんは軽視してたもんねぇ。
やろうと思えば、国さえ滅ぼせると言われている愛し子に、さ。
別に滅ぼす気はないけども、少なくともこのおっさんにだけは祝福する事はないな。
まぁ僕を特別扱いしろってわけじゃないけど、力量も見ずに相手を貶すような発言する人間には味方しないさ。
そしてお前の命令は受け付けねぇよって意思表示も出来た。
きっと父様はわかったんだろう、やけにいい笑顔してる。
よーし、じゃあさっさと倒しに行きますか!