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幽幻亭~人と妖狐の不思議な事件簿~  作者: 倉谷みこと
第4話 猫

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第4話‐5 プレゼント

 朱音が抱えている恐怖を完全になくすのは、容易ではない。他人がどうこうしても、本人が克服できなければどうしようもないのだから。だが、そのためのきっかけは与えることが出来る。


 恐怖をやわらげるために帽子をかぶり、自信をつけてもらおう。


 そう考えた二階堂は、帽子を販売している露店を探す。路地につくまでの間にあったような気がしたのである。


(えっと、たしかこの辺に……)


 人波をかきわけながら進んでいくと、他の屋台に負けないくらい主張している大きな白い帽子が見えた。


「……あった!」


 二階堂は思わずつぶやいて、それが飾られている屋台へと真っ直ぐ向かう。そこには、色とりどりの帽子が並べられていた。普段使いできそうなものから用途が限られそうなものまで、豊富な種類が取り揃えられている。


 朱音にはどんなものが似合うか、耳を隠すにはどの大きさのものがいいかと、思案しながら商品を見ていく。


 しばらく物色していると、程よい大きさのキャスケットを見つけた。黒、紺、白の三色がある。わずかの逡巡、どのコーディネートにでも合うだろう黒を選択した。


 会計を済ませ、朱音が待っている路地へと急ぐ。


 路地に戻ると、朱音は同じ場所で体育座りのような格好で頬杖をついていた。


「ごめん、お待たせ。はい、これ」


 二階堂は、先程買ったキャスケットを朱音に差し出した。


 戸惑う朱音に、二階堂はプレゼントだと優しく微笑みかける。


 とてもうれしそうに受け取ると、朱音はすぐにかぶってみた。黒のキャスケットは、彼女の服装――桜色のTシャツに青いジーンズのハーフパンツというコーディネートに違和感なく溶け込んだ。


 似合わなかったらどうしようかと少し不安だった二階堂だが、それは杞憂だったらしい。キャスケットは、朱音自身にも似合っていて猫耳もきちんと隠せている。


「二階堂さん、ありがとうございます!」


 これで、人間が大勢いる場所に行っても奇異な目で見られずに済む、と。


「それならよかった。それじゃあ、行こうか」


「え?」


 二階堂の突然の誘いに、朱音は目を丸くする。


「楽しみにしてたんでしょ? 露店巡り」


「そうですけど、でも……」


 自分がいたら邪魔になってしまうのではないか。そんな不安がわき上がる。


「大丈夫、邪魔になんてならないから」


 帽子をかぶっていれば、普通の人間と何ら変わらない。だから大丈夫だと、二階堂は優しく告げた。


「……それじゃあ、お願いします」


 わずかの逡巡、朱音はもう一度祭り会場に行くことを決めた。


 また人々の視線にさいなまれるのかと思うと怖かったが、露店巡りを楽しみたいという気持ちもあった。それに、今は耳を隠せるアイテムもあり、頼りになりそうな人もいる。少しだけ、勇気を出してみようと思えた。


「承りました」


 うやうやしくそう言うと、二階堂は朱音の手を取り歩き出した。朱音もその後についていく。

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