百鬼 未成年は徘徊する
「未成年がこんな夜遅くに何をしてるのな?」
酔ったおじさんが声を掛けてくれた。確かに時
刻はてっぺんを回っていた。
「お気遣いなく。」
顔をおじさんの方に向けにこりと笑った。そし
て進行方向に目線を合わせ足を進める。
頭上には三日月が登っていた。いつもこのくら
いになると声が聞こえてくる。辛いことがあっ
たのか鼻をすすりながら唸るように叫ぶ声や、
明らかな嫌悪感をだしながら怒鳴る声。気分が
いいのか口笛を吹く音も聞こえる。だが、少し
歩くと声はなくなり。季節を感じる音だけが耳
にはいる。
"周りの人とは違う"とか"もっと普通にしなさい"
とか"変人だ"とか言われたが、何が違うかわから
ない。普通とは何なのか知らない。変人と言う
なら貴方らは常人なのか。
【人間は"先"に向かって歩く】
昔の偉い人はそう言っていた。だから、都市は
開発されたし、科学は発展した。人々の考え方
も変わり。僕の住むこの国は先進国となった。
しかし、僕はそんな世の中とは逆の方向に向か
っていた。心は廃れ、非科学的な事を信じ込
み。自分は考え方を変えることができなかった
のだ。だから、きっと生まれてくる時代を間違
えたのだ。
自らを正当化したい。それが唯一、自分に残さ
れた人間性だった。
思いを巡らせながら歩く。
僕は魅成年だった。