夢で逢えたら4 (ギルバート視点)
「話が違うぞ!」
「うるせぇ、気が散る。話しかけるな」
夢の中で無事サフィアを見つける事ができ、あとは目覚めるだけというところで失敗した。
解呪者である目の前の男がサフィアの手を握り額に当てた瞬間、目覚めるための行為だと分かっていても嫉妬に燃え、それを堪えるためにサフィアを抱く手に力が入ってしまい慌てたところで目が覚めた。
男の話ではこれでサフィアも目覚めるはずだったのだが、一向に目を開ける兆しがない。
不審に思い男に問うよりも早く「まずいな」と呟かれた台詞に嫌な予感しかしない。
どういう事だと聞けば、サフィアがまだ夢に囚われたままだと言うのだ。話が違うと言えばうるさいと返されるだけ。
本音を言えば胸ぐらを掴み何とかしろと揺さぶってやりたかったが、男が再びサフィアの枕元で真剣に考え込んでいる姿にその衝動をなんとか抑えた。
「恐らく嬢ちゃんの意識はすぐそこまで浮上しているはずだ。 俺たちが起きるときに一緒に引っ張り上げたからな。だが起きる寸前で引っ張り上げてた嬢ちゃんの意識が軽くなった気がした」
だからサフィアの意識は割と浅いところにいると言われても自分にはどうしたらいいのか分からない。
「それで、どうすれば助けられる」
「あと一歩のところにいるなら呼びかけてやれ。お前が本当に嬢ちゃんの旦那なら、お前の声になら反応するはずだ」
いちいち癇に障る言い方だが今ここであれこれ言う余裕はない。
「サフィア!」
すぐさま男を押し退けサフィアへと呼びかける。
「サフィア! 起きてくれ。 サフィアっ!」
「ん……」
何度も呼びかけるうちにサフィアの眉間に皺が寄りはじめる。
「反応し出したな。 よし、そのまま続けろ」
「サフィアっ、」
もうすぐ目覚めるかもしれない。その期待に思わずサフィアの手を握ろうとするも寸前でその白く華奢な手を横の男に奪われた。
「おい……、」
「いいから続けろ。 俺が嬢ちゃんにする事は医療行為と同じだと思え」
分かってる。だがサフィアに触れる自分以外の人物には無条件で反応してしまうんだ。
「お前……重いって言われないか」
「このガタイだ。 当然重いだろうな」
「その重いじゃねぇ……いや、やめとこう」
再びサフィアの手を額に当てる男を横目に必死に呼びかける。
「サフィア、目を覚ましてくれ!」
「……あ、ヤベぇ」
「なんだっ、どうした!」
「近い! そんな顔面凶器みたいな顔近づけるなっ」
見た目に関してはお互い様だと思うが今はそれどころじゃない。
「あのな、誰かを呪うにはその人物の意識を殺してしまうのが一番確実な方法だ」
だからサフィアは夢の中で殺されそうになっていたのだろう。
「で、意識を殺すとなるとそれなりに意識の深いところに潜らないとできない。 表面だけ傷つけてもすぐ治る身体の傷と同じだ」
「それがなんなんだっ」
「少し落ち着け。 それでさっきお前が嬢ちゃんを殺そうとした奴を斬った事で呪いが弱まってるのと嬢ちゃんの意識が浮上した事で、嬢ちゃんの意識を殺す以外の方法で支配しようとしてる」
「だから、それはどういう事なんだ」
「あー、つまり、嬢ちゃんが心を許している相手になりすまして、嬢ちゃんの心が開いたところで意識の奥に入り込んで支配するつもりだ」
「具体的にはどうなってるんだ」
「まぁ、なんだ。 はっきりと見えるわけじゃないんだが……」
「いいから早く言え!」
「襲われてる」
「サフィアーーっ!!」




