夢で逢えたら3
3話で終わりませんでした…。
サフィアが想像した通り、そこには夢の中でその人物のトラウマを刺激して殺すのが得意なあの殺人鬼がいた。
火傷でただれた顔は恐ろしかったが、先ほどと違い今はギルバートの腕の中。この中にいれば危険はないと知っているサフィアに恐怖はなかった。
「サフィアに近づくなっ!」
ジェイソンに続いてフレディもあっさり斬って捨てるギルバートだったが、今度はそう簡単に終わらなかった。
斬られたフレディがふらりと立ち上がると、そこにいたのはギルバートのシャツ一枚を着ただけのサフィアになっていた。
「ちょ、」
「いかん、足を隠せっ!」
サフィアが何か言うよりも先に凄い勢いでギルバートが叫んでいた。
「……ギルバート」
「すまん。つい。」
サフィアの冷めた視線にも気づかず、偽物とはいえサフィアのあんな姿を見ていいのは俺だけだと、何やらもごもご言っているが頬を抓って黙らせた。
「早くなんとかして」
「わかった」
サフィアの願い通り、ギルバートはサフィアを抱いたまま偽物サフィアを斬り捨てた。あまりの躊躇いのなさに少し複雑な気持ちになるが、ギルバート曰く「どう見ても別人」だそうだ。そして少し離れた場所にいた熊男の隣に移動した。
「おい、さっさと出るぞ」
「分かってる。すぐ次が来そうだしな。 嬢ちゃん、手ぇ貸しな」
言われて条件反射で差し出した手を握られ、熊男の額に当てられた。サフィアを抱くギルバートの手に力が入ったと思った次の瞬間、サフィアはパチリと目を開けた。
(え……)
サフィアの視界には天井しか見えず、急な場面転換にパチパチと目をしばたかせた。
「ギルバート……?」
ぐるりと部屋を見渡すがそこにはサフィア一人。
夢から覚めたのだろうが、ギルバートがここにいない事が意外だった。
なんとなくだが、ギルバートならサフィアの傍にいてくれると思っていたのだ。
少し寂しく思っていると、部屋の扉が開き手に水差しを持ったギルバートが入ってきた。
「目が覚めたか」
「うん。 あの、ごめんね」
「気にするな。 それより身体は大事ないか」
「大丈夫だと思う。 特に気になるとこもないし」
「そうか。それは良かった」
枕元に水差しを起き、ベットに腰掛けサフィアの髪にサラリと手を伸ばすギルバート。その雰囲気がいつもと違う気がしてサフィアは首を傾げた。
「ギルバート?」
「なんだ」
「う、ううん。 なんでもない」
優しくサフィアの髪を梳くギルバートをじっと見つめていると、ギルバートはフッと笑って顔を近づけてきた。
キスされる。
いつものように目をつぶろうとしたサフィアだったが目を閉じる寸前、何気なく見たギルバートの瞳の奥が冷えきっている事に気づいて身体を強ばらせた。
「どうした?」
「ご、ごめん、なんでもないの」
慌てて謝り、再度近づいてくる顔に今度こそサフィアは目を閉じようとしたが、やはり何か違う気がして咄嗟に胸に手を置いて止めた。
「ん……」
が、強引に顎を固定され、有無を言わさずキスされた。すぐに唇を割り侵入してくる舌から逃れようと身をよじるが、次第に酸欠で頭がぼうっとしてきた。すると……
————サフィアっっ!
ハッと我に返り目を見開くと、そこにはキスの最中とは思えないほど冷たくこちらを見据えるギルバートの瞳があった。
思わず身体を離そうとギルバートの胸をぐいっと押すがビクともしない。
「ぅんっ、むー! うー!」
必死に胸を叩くがギルバートは構わずサフィアの口内を蹂躙する。
やがてギルバートの手が服の中へと入りそうになると、サフィアはいよいよ焦り出した。
(ヤダヤダヤダッ! 違う! ギルバートじゃない!)
最早ギルバートにそっくりな別人にしか思えなかったし、別人と認識すれば一秒だって触れていたくなかった。
必死に抵抗するがビクともしない胸を何度も叩く。
力で抵抗できないなら魔力でと、術を発動させようとするが何故か発動しない。
なすすべもなくベットに押し倒され偽物ギルバートに好きにされている状況に、サフィアは本気で血の気が引いたのだった。




