例えばこんな未来の話
あけましておめでとうございます!
昨年は沢山の方に拙作を読んでいただき、ありがとうございました!
今年も皆様に楽しんでいただけるように精進します!
「母さん、これは?」
「もう少し焼け目がつくまで」
「母さん、こっちもう冷えたんじゃない?」
「そうね。 じゃあ出してくれる? 」
俺が街へ買い物に出て戻って来るとキッチンで家族が慌ただしく作業をしていた。そこそこ広いキッチンも、俺に似て身体のデカい息子二人がいるだけで狭苦しい空間になっていた。
すると手元を見ていた妻の視線がふっとこちらに向いた。
「ギルバート!? 予定より早くない!? 」
サフィアがギョっとしたように目を大きくして大きな声を出した。それにつられて双子の息子二人もこちらを向く。
「……父さん。 夕方までは帰って来るなって言われてただろ」
「ったく、そんなに母さんと離れてるのが嫌なのかよ」
わざとらしく溜息をつく息子二人は無視だ。俺はただいまの言葉と口づけをサフィアにする。
「いい歳して止めろよ。 こっちが恥ずかしい」
「父さんにはいくら言っても無理だろ。 父さんは母さんが大好きだからな」
「オーウェン、ライアン、ちゃんとお父さんにお帰りなさいは?」
「はいはい。 おかえり。 父さん」
「おかえり」
「ああ。 ただいま」
呆れた顔をしてもサフィアと同じ水色の瞳は優しい色をしていた。
「でもこれじゃ全くサプライズにならないな」
「そうだね。 どうする? 母さん」
「うーん。 サプライズにはならないけど、最後まで準備はするわよ! さ、みんな手伝って」
サフィアの号令でキッチン内がまた忙しなくなる。
俺も何か手伝おうと腕まくりをしたところで「ギルバートは邪魔だから向こう行ってて」と言われてしまった。
仕方なく読みかけだった本の続きを読む事にした。
カチャ。
座っていたソファのサイドテーブルにカップが置かれる。持って来てくれたのは双子の片割れのライアンだった。
「もう少しでできるから、もうちょっと待っててよ」
「それは構わないが、今日は何があるんだ? 」
「はっ? 父さん分かってないの? 」
びっくりしているライアンに俺は首を捻る。
「何かの記念日だったか? 」
それだったら街に行った時に花でも買ってくるべきだったか。 いや、今から行けばまだ間に合うか。
思わず腰を浮かせた俺を、ライアンは肩に手を置いて座り直させた。
「大丈夫。 父さんは何もしなくていいから」
「だが……」
「おーい! できたぞ! 」
そこで呼びに来たオーウェンの後を追い、ダイニングへ行くと……
「「「誕生日おめでとう!! 」」」
サフィアと息子二人から祝いの言葉をもらった。
そうか。 そうだった。 今日は俺の……。
「もうすぐオーウェンもライアンも冒険者になっちゃうしね。 こうやって家族みんなで誕生日をお祝いする機会も少なくなるだろうから。今年は盛大にお祝いしたかったの」
ダイニングテーブルに並ぶ豪勢な食事に、サフィアの本気具合が分かる。
顔立ちはサフィアに似て我が息子ながらずいぶんと男前に育ったと思う双子たち。俺に似ているところと言えば髪の色と背の高さぐらいなもんだ。
その息子たちはもうすぐ成人を迎え、俺と同じ冒険者になる事を選んだ。俺とサフィアが世界を見て回ったように、二人も世界を見てみたいそうだ。幼子時代の寝物語に世界の不思議話をしたのが原因だろう。
「オーウェンもライアンも余計な荷物は持って行けないだろうけど、思い出だけならいくらでも持って行けるでしょ。 だから忘れられない思い出をたくさん作ろうね! 」
輝くような笑顔でグラスを配るサフィアをつい抱きしめてしまう。
「ちょっと、危ないでしょ」
「はいはい。 母さんグラスこっちちょうだい」
「乾杯用の酒ってこれ? 」
俺がサフィアを抱きしめる光景は我が家ではよく見られるものだ。 もはや気にする者はいない。
「ほら、父さんもグラス持って」
「はい。じゃあかんぱーい!」
オーウェンの掛け声で始まったささやかな宴会。
何事も大雑把で底抜けに明るいオーウェン。
そんなオーウェンをフォローして色んな事に気が回るライアン。
見た目はそっくりなのに中身は正反対な二人。サフィアが産んでくれた、かけがえのない息子たち。子どもたちが生まれてから今までの思い出が甦り、この賑やかさもあと少しかと思うと寂しさが過ぎる。
「……サフィア」
「ん? なぁに? 」
ほろ酔い姿が壮絶に色っぽいサフィアを見据え、俺はこれ以上ない真剣な顔を向けてこの胸の決意を口に出す。
「もう一人、子どもを作ろう」
「…………はい? 」
「次は女の子がいい」
「ええ! な、なに言ってんの!?」
そこで俺も珍しく酔いが回ってきたのか視界がボヤけてくる。
「そうだ。 今から作ろう」
「はいぃ? ま、待って! なに? 子作り? ちょっと抱き上げないで! ギルバート! このっ……
子どもたちの前で家族計画とかありえないでしょっ!!」
サフィアの大きな声にハッと目を覚ました。
「え? あれ? 」
困惑するサフィアの声に俺は身体を起こした。
「ギ、ギルバート? ……あ、ごめんね、変な夢見ちゃって……」
目を白黒させたサフィアがぼうっとした顔でこちらを見る。
「なんかやけにリアルな夢で……」
「俺も不思議な夢を見た」
「ギルバートも? 」
「ああ。 ……なあ、サフィア」
「ん? 」
いつになるか分からない。 けど俺たちに子どもが生まれたら名前はオーウェンとライアンにしよう。
双子が生まれる確率は低いだろうが、何故だか妙な確信がある。近い将来、俺たちはきっとあの双子に会える気がする。
だがサフィア。 子どもが二人は少なすぎると思うぞ。 それに息子の倍の人数は娘が欲しい。サフィアによく似た愛らしい娘たちだ。
サフィアに似た子どもたちに囲まれる未来に夢を馳せ、うっとりと遠くを見る俺をサフィアは冷めた目で見つめて「……なんか、身の危険を感じる」と言って猫の姿になって隣の部屋へ行ってしまった。
がっくりと肩を落とした俺は仕方なく朝の支度を済ますためにベッドから足をおろす。するとーー
「ねぇ、ギルバート」
扉から少しだけ顔を覗かせたサフィアが何故か恥ずかしそうにこちらを見ていた。可愛い。
「どうした?」
「あの……もし、もしもの話だけど、」
もじもじとしているサフィアが可愛い。ちょっとくらいなら襲ってもいいだろうか。
「将来子どもが生まれたら……やっぱりなし!」
尻尾で半開きのドアをパタンと閉めて、サフィアの軽い足音が去って行くのを聞いて俺はもしかして、という思いに駆られた。
「ーーサフィア!! 」
慌ててサフィアの後を追った俺を見て「パンツくらい穿いてきて! 」と猫パンチをくらうまであと少しーー。
初夢とかけて夢オチなお話でした。
こんなイケメンな双子の息子っていいですよね( ´艸`)
※新連載をはじめております。
『番のアナタ』という連載です。
彼氏にプロポーズされた瞬間に異世界に飛び、ヒロインを番と呼ぶ男と出会い、一度だけ元の世界に帰ったり、再び異世界に飛んでヒーローとくっつく話。
25話前後で完結予定ですので、お時間ありましたら読んでみてくださいm(__)m




