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変態は間に合ってます(ギルバート視点)

無駄に長いです。しかもギルバートがかなり振り切った感じに仕上がりました。

皆様なら受け入れてくださると信じて書きました!

 俺は腕に抱いたサフィアを大事にベッドに下ろすと、その身体をすっぽりと覆うマントをやや乱暴に剥ぎ取った。

 すぐさま露になったサフィアの身体をしっかりと確認しながら、唯一赤くなっている首輪の跡に唇を這わせる。


 「ま、待って、せめてお風呂に……」


 「すまない。 もう待てない」


 サフィアがいなくなった部屋を見た時から、まとわりつく恐怖を拭えずにいた。


 いつものように依頼を終えて宿に戻ると、施したはずの結界が無くなり部屋中が荒らされていた。

 いつもは優しく「おかえり」と迎えてくれる愛しい妻の姿はなく、サフィアがいないだけで冷たく感じる部屋の中で俺は呆然と立ち尽くした。


 誰かに連れて行かれたのだと理解し真っ白になった頭を切り替えてサフィアの魔力に集中する。……だがどれだけ探ってもサフィアの魔力を感じる事が出来なかった。

 恐らく魔力を封じられたのだろう。ならばと次にギルドに駆け込みノーマンの情報を入手した。

 普通であればこんな簡単に情報を知る事は出来ないが、俺はここぞとばかりにSランクの特権と有り余る金を使い細かな個人情報を手に入れた。


 それによるとノーマンには個人契約している冒険者がいて、そいつらがサフィアを攫った犯人だと当たりをつける。

 犯人はすぐに見つかりサフィアの居場所を聞き出そうとするが肝心の居場所が分からなかった。

 仕方なく廃墟の近くから探そうとする俺の後ろを誘拐犯どもがついて来た。


 目障りだ。


 サフィアを攫った奴らを生かしておいたのは失敗だったか。

 だが今は本当に時間がない。今この瞬間もサフィアが一体どんな目に遭っている事か。不安で泣いてやしないか。危ない目に遭ってはいないか。

 心配でどうにかなりそうだ。


 ついて来る奴らを無視して俺は取引が行われた廃墟に一番近いスチュアート家の別邸に向かう。


 「申し訳ありません。 こちらにノーマン様はおりません」


 昨日俺にサフィアを譲れと言ってきた男が執事の格好をして出て来た。

 ……なるほど。こいつはスチュアート家の執事だったのか。主のために初対面の俺相手にも怯まず交渉してきたわけだ。

 その度胸はなかなかのものだが俺も引くわけにはいかない。


 「悪いが確認させてもらう」


 執事を押し退け無理やり中に入る。「おやめくださいっ」と立ち塞がる執事の腕を少し力を入れてはらったら勢いよく壁まで飛んで行きそのまま壁に激突した。その衝撃で壁に飾ってあった絵が落ち、飾ってあった壺が落ちて割れた。


 「………」


 さすがの俺も一瞬言葉を失った。


 その騒ぎを聞きつけ奥からもう一人現れたのは白髪混じりのメイド。


 「何をなさっているのですか!」


 駆けつけたメイドが俺を見て顔を青ざめさせながらも気丈に対応する。


 説明する手間を惜しみメイドを無視してどんどんと中に入って行く。後でいくらでも弁償する。執事の男には悪かったと伝えてくれ。


 「サフィアー! どこだー! 」


 大声で呼びかけた事で上の階にあった気配が動き出したのを感じる。


 ……あそこか?


 急いで三階まで駆け上がり部屋に入ると中はもぬけの殻。さっきまで人の気配があったのにおかしい。

 確かこういう貴族や金持ちの家には外に出る秘密の通路が隠してあったりするものだ。


 怪しそうな本棚から調べていく。

 片っ端から本を掻き出し手で触って調べてみると違う手触りの箇所があり、そこを押すと隠し通路が出て来た。やはり。

 迷わず足を踏み出し通路を駆け抜ける。


 思ったよりも短い距離で外に出られたと思ったら、目の前にサフィアがいた。

 夜の色と変わらない色を纏うサフィアであったが、日が沈んだ暗闇の中でもその姿は俺には光り輝いて見えた。


 だがその姿は今はあの誘拐犯に持ち上げられ口づけでもされそうな距離にいた。


 ……殺る。奴だけは絶対に殺る。


 そう決意しながら「サフィア! 」と呼ぶと、あろう事かそいつがサフィアを池に落としたのだった。


 俺は無我夢中でサフィアを助け、面倒事を誘拐犯たちに押し付け宿に戻った。……誘拐犯がサフィアに惚れたのは予想外だったが殺ってしまえば問題ない。


 その夜は疲れているサフィアを大人しく休ませてやる事が出来なかった。それどころかなかなか離せず無理をさせてしまった。

 サフィアには悪い事をしてしまったが、それでもサフィアが俺の腕の中に戻ってきたのだと確かめたかったんだ。

 

 「あの二人に報復するのは無しだよ」


 次の日、やっと起きられるようになったサフィアにベッドの上でも食べられるように食事をトレイに載せ準備をしながら話すのは昨日の事。


 何故か誘拐犯たちの名前をサフィアが知っていて、それだけでやっぱり殺る。と再び殺意が湧いたがサフィアににっこり笑って「ダメよ」と言われてしまうと半殺しぐらいで許してやるかという気持ちになった。


 「そりゃ誘拐されたし、いろいろ腹立つ事もあったけどあの変態から助けてもらったしね。一発殴ってやりたいとは思ってるからギルバートは手を出しちゃダメよ」


 「だが……」


 サフィアに殴られるなど、むしろご褒美なのでは。


 「……そう思うのはギルバートだけだから」


 やたら冷めた目で見られながら大きく溜息を吐かれてしまった。サフィアの冷たい態度にゾクゾクする。


 「ねぇ、そんな事より!」


 フォークにサラダを刺しサフィアの口元まで持っていくと、何かを決意した表情でサフィアが顔を上げた。


 「これ食べたら付き合ってくれる? 」


 そう言って出されたサラダを口に入れもぐもぐと食べるサフィアを見つめながら俺は首を傾げる。


 ……食べたら付き合う? 何に?


 「食後の運動には激しい気もするけど、今したいの」


 食後の運動。今したい。


 その言葉でサフィアが俺をベッドに誘っているのだと察した。


 「あ、嫌だったら別に……」


 「嫌じゃないっ!」


 むしろこちらからお願いしたい。

 サフィアから誘ってくれる事など初めてで、ちょっと異常なほど興奮している。


 「ねえ、早いよ。 もうちょっとゆっくり食べさせて」


 つい気が急いてしまい、サフィアに差し出すフォークのスピードが早かったようだ。


 永遠に感じるような食事が終わり、急いで食器をサイドテーブルに置くとすぐにサフィアを抱き締めようと腕を伸ばした。


 ーーが、その腕は虚しく空を切る。


 目を瞬いてベッドをよく見ると、猫になったサフィアが愛らしく「ミャア」と鳴いていた。


 何故、猫? ……もしかして、 ね、猫の姿でかっ!?


 そんな高度なプレイが俺に出来るだろうか。

 いや、サフィアがそれを望むと言うのであれば俺は……!


 「違うわっ!」


 直後、サフィアに思いっきり顔面を叩かれた。

 全く痛くはないが、「何考えてんのよ!」と何度も俺の頬に猫パンチを繰り出すサフィアの可愛さに心臓が痛い。


 「ど、どうしたんだ? 」


 「どうしたもこうしたも、全部口に出てたわよ! ね、ね、猫の姿でなんて、するわけないでしょ! 」


 紺色の毛色のせいで気づきにくいが肌が赤くなっている。体も震えている事から、どうやら恥ずかしがっているようだ。


 身体をプルプルと震わせ全身を赤くさせて俺に猫パンチを繰り出すサフィア。


 可愛すぎて死にそうだ。


 あまりの可愛さに痛む心臓を押さえたが、押さえる場所を間違えた。


 「ミャアアアっ! ギルバート! 鼻血! 」


 咄嗟にサフィアが俺の鼻を押さえてくれた。


 むにゅ。


 サフィアの前脚二つ分の肉球が下から突き上げるように鼻を押さえてくれるが、普段あまり触らせてもらえない柔らかなその感触に、さらに血流が良くなってしまった。


 「いやー! しっかりして!」


 ーーあっという間に服が血で染まって、辺りが血の海になる様のなんと恐ろしかった事か。


 のちにサフィアが呟いていた台詞だ。


 「ギルバート! しっかり! 」


 サフィアがさらに俺の頬をぽふぽふと叩く。


 それは……たぶん逆効果だ。


 俺は今この瞬間に死んでも悔いはない。ぼうっとしてきた頭でそう考えていたらそれも口に出ていたようで、「馬鹿な事言わないで!」とさっきより強めに頬を叩かれた。ありがとうございます。


 と、思考が支離滅裂になってきた時、優しい光に包まれた。


 「そうだった。 魔法があったんだった」


 回復魔法をかけてくれるサフィアの声に安堵の色が滲む。

 しばらくして頭がはっきりしてきた俺は、懸命に回復魔法をかけてくれているサフィアの身体をそっと手で包んだ。


 「すまない、もう大丈夫だ」


 「ほ、本当に? 」


 「ああ。慣れてる」


 「え……?」


 キョトンとしているサフィアから目を逸らし(でないとまた血が出そうだ)、血で汚れたサフィアの手を取り洗浄魔法をかける。


 「それで、サフィアは猫の姿になって何をするつもりだったんだ? 」


 俺を誘ったわけでないなら別の理由があったはずだ。そう考えて聞いてみたのだが、「今のを無かった事にされた……!」と大変驚かれた。


 別に無かった事にはしてないが終わった事だ。

 俺の事よりサフィアの事を優先するのが当たり前なだけだ。

 サフィアが俺に頼み事をしたのだ。全力で叶えてやりたいと思うのは当然だ。


 そうサフィアに伝えたら困ったように眉を下げてポツポツと話してくれた。


 どうやら誘拐された時に猫の姿でドアノブを回す事が出来たら捕まらなかったかもしれない。捕まっても自力で逃げられたかもしれないと、とても後悔したそうだ。

 だから猫の姿でドアを開けられるように練習に付き合ってほしいと言うのがサフィアの頼み事だったようだ。


 そうして俺はベッドに座り目眩を起こす身体を休ませながら、何度も飛び跳ねドアを開けようとするサフィアの姿を心ゆくまで堪能し、たまにサフィアのつった脚を揉みほぐすという幸せな時間を堪能した。


 猫パンチ……殺人級な可愛さだった。


 やはりサフィアに殴られる事はご褒美以外の何物でもないな。

 そう確信した俺は、次にあの誘拐犯に会ったら一発殴ってやると息巻いているサフィアの代わりに俺が殴ると決意するのだった。

……こんなヒーローで大丈夫でしたでしょうか?


なんかもう、ギルバートはナチュラルにサフィアを女王様のように扱って尽くしまくりです。

最初は戸惑ったサフィアも今ではすっかり慣らされて、ギルバートにならどんなに甲斐甲斐しく世話されても当たり前に感じるようになってしまった今日この頃。

ギルバートはサフィア限定で最愛の妻になら殴られようと蹴られようと全て喜びに変換するスキルをマスター済。


こんな恋の奴隷(ギルバート)を従えるサフィアは女帝(エカテリーナ)でいいんじゃないかと思います。



今回予定していたお話はこれでお終いです。

このあとは活動報告(9/8)にクレイグ視点のお話を載せる予定です。

ただ小話としては長めなので、今回の番外編に続けて更新した方が良ければそうします。ご意見ありましたらコメントお願いします。


それではお付き合いいただき有難うございました!

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