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エピローグ

 自分たち以外誰もいない丘の上。

 目の前にあるのはいくつもの墓石。


 「…本当にここで良かったのか?」


 「うん。私にとってギルバートの家族以外、家族なんていないから」


 とうに亡くなったギルバートの家族を、自分の家族だと言ってくれるサフィアに心が暖かくなるのを感じた。


 そして改めてギルバートはサフィアに向き合う。


 「俺はこれからの人生を全てサフィアに捧げ、サフィアだけを愛し続けると誓う」


 「私は健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、この命ある限り、ギルバートを愛することを誓います」


 これは二人だけの結婚式。


 この世界の結婚とは、家族・親族の前で結婚の誓いを言い合い、宣言することで成立する。

 本来であればみんなに祝福され夜通しお祭り騒ぎが行われる日だ。


 だが二人に家族と呼べる人たちはいない。

 天涯孤独な二人が結婚する場合、教会で神父を前に宣誓するのが普通だが、サフィアはそれを良しとしなかった。

 サフィアは唯一の家族と呼べるギルバートの家族の前で誓いたかった。


 「今この時より、俺たちは夫婦だ」


 「はい」


 そして二人は自然と顔を近づけ唇を合わせる。

 次第に深くなる口付けにギルバートが酔いしれていると、閉じた目蓋の向こうが光り出すのを感じた。


 「な、なに…サフィアっ!?」


 「フミャア!?」


 目を開けたギルバートが見たものは、光に包まれたサフィア。その光もすぐに消えたが、出てきたサフィアの身体は濃紺の毛並みに水色の瞳。見慣れたその姿は紛れもなくーーー猫だった。


 「なっ…サ、サフィアか?」


 「みゃあ!……あぁ、うん」


 ギルバートは咄嗟に猫の姿のサフィアを腕に抱き、目線を合わせて問い掛ける。


 「何故、猫の姿に……」


 「えっと……ギルバートと結婚できたことが嬉しくて、魔力が膨れ上がっちゃって…気づいたらこの姿に……」


 実はまだ人間として大きすぎる魔力に慣れていないサフィア。力を持て余してしまい感情が高ぶると魔力が暴走してしまうのだが、今回はそれが変な作用をしたようだ。


 「元に戻れるのか?」


 「えぇっと…たぶん、大丈夫だと…」


 昔を思い出し、猫から人の姿になるイメージをすると呆気なくサフィアは人間に戻った。


 「人間が猫になるなど聞いたことがないぞ」


 「私も……。ま、まあ元精霊だし、これぐらいは許容範囲……かな」


 「確かに普通の人間とは何か違うのかもな」


 「うっ…。こ、こんな私で本当にいいの?」


 「それはむしろこちらの台詞だな。こんな子どもにも動物にも顔を見られただけで逃げられる俺だが、本当に良かったのか?」


 「当たり前だよ!ギルバートが本当はとっても優しい人だって知ってるもの!だからそれぐらいの事で嫌になったりしないから!」


 「俺もだ。たとえ猫の姿のまま元に戻れなくても、俺にはもうサフィアしかいない」


 「ギルバート……」


 「サフィア……」


 またどちらともなく二人は顔を寄せ合う。

 瞳を閉じながらサフィアは前世でも味わえなかった幸せに満たされていた。


 前世で早くに死んでしまったこと。精霊として生まれ変わったこと。全てはギルバートと出逢うために必要なことだったのだと、今なら素直にそう思える。


 (ああ…幸せ……、っ!?)


 嬉しくて感動していると、また猫になってしまった。


 いいところでコロコロと姿を変えてしまい、申し訳ない気持ちでサフィアは抱えられた腕の中からそっと上目遣いでギルバートを見る。するとーーー


 「ぐぅっ、」


 慌てて鼻を押さえて顔を背けるギルバート。


 「ひ、久しぶりに見たから、免疫が落ちて……」


 何やらモゴモゴと呟くギルバートを見ながら、久しぶりに見る光景に懐かしくてサフィアは声を出して笑い、そして願った。


 叶うなら、この幸せな時間が何時までも続きますようにーーー。

これにて無事に完結です!

初めての執筆で右も左も分からず手探りで始めた連載ですが、皆様の暖かいお言葉や励ましのお言葉に支えられ最後まで書くことができました。

本当にありがとうございました!!


今後は話が思いついたら番外編を書いていく予定ですので、よろしければそちらもお付き合いいただけると嬉しいです。


さらに詳しい後書きをこのあと活動報告に載せますので、興味のある方はどうぞ|・ω・`)コッショリ


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