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街中をお姫様抱っこで練り歩き。
かなりの羞恥プレイを強いられ到着した宿の一室。
ギルバートはサフィアをベッドに降ろすと自分はその足元に跪きそっとサフィアの手を取った。
「サフィア…無事で本当に良かった」
ギルバートは今まで聞いたことのない甘い声に熱い眼差しでサフィアを見詰めた。
「うん…心配かけてごめんなさい」
いつもと雰囲気の違うギルバートにサフィアは顔を赤くし、微妙に視線を外しながら答える。
「………」
「………」
しばし沈黙が落ちるが、ギルバートは構わず握ったサフィアの手を自分の頬に持っていき、その手に頬をすり寄せた。
「……サフィア」
ギルバートの行動にドギマギしながら内心で慌てているサフィアを優しい声でギルバートが呼ぶ。
「な、何?」
「……先ほどの言葉は、本当か?」
先ほどの言葉が何を指すのか、この状況で分からないほど鈍くはない。
「……うん。本当だよ」
別れを告げたあとに言った言葉。
ギルバートが好きだと言った言葉。
何一つ嘘はない。
「ああ…。ありがとう。サフィア」
ギルバートは蕩けそうな顔をしてそう言うと、立ち上がりベッドに座るサフィアを抱き締めた。
「俺も、サフィアが好きだ」
「……ふっ、」
思わず涙が零れたサフィアにギルバートは身体を屈めてその顔を覗く。
「や、やだ…こんな顔見ないで」
「駄目だ。サフィアの涙も、泣き顔も、全て俺のものだ」
そう言って流れる涙に舌を這わすギルバート。驚いたサフィアが目を丸く見開くと、そこには目と鼻の先の距離にあるギルバートの顔。
「ギ、ギルバー…」
「愛してる」
かぶせるように愛を告げたギルバートはサフィアの唇を奪う。
「…ん、ぅんっ…ふぅっ」
息をつく暇も無いほど激しく貪られる。
最初は力任せに合わせるだけだった唇が、息継ぎに開けた瞬間舌が入り執拗にサフィアの舌をなぶる。
サフィアは苦しさにギルバートの背中を何度もタップしてやっと離れてもらえたが、その頃にはサフィアの息はこれ以上無いほど上がっていた。
「ギルバート、加減して」
「…すまん。あまりの気持ち良さに理性が…」
物凄く不穏な台詞が聞こえたが、サフィアは聞こえないふりをしてギルバートから少し身体を離した。
それを見てギルバートの眉がしゅんと下がるが心を鬼にしてギルバートを見上げる。これだけは言っておかなければ。聞いておかなければならない。
「私、人間になったから今まで以上にギルバートのお荷物になると思う」
サフィアはもう精霊としての力が無い、非力なただの一人の人間だ。
冒険者であるギルバートを助けてあげることもできないし、今までのように依頼について行くことも、この猫よりも大きな身体では無理だろう。
「でも、それでも私はギルバートと一緒にいたい。……だから、傍にいさせて」
もし邪魔に思われたらどうしよう。ギルバートがそんなこと言うはずが無いと分かっていても怖かった。
潤む瞳のままのサフィアに見つめられたギルバートはまたその唇に吸い寄せられそうになるが、そうじゃないと心の中で自分に張り手をくらわせ口を開いた。
「いいんだ。精霊でなくても、猫でなくても、サフィアがいてくれたら、それだけでいい」
真っ直ぐに合わせられた視線。その熱っぽい眼差しは間違いなくサフィアただ一人を求めていた。
「また一緒に世界を見て回ろう」
そう言って今度は優しく啄んでくる唇を受け入れ、サフィアはギルバートの背中に腕を回した。
次のエピローグで完結です。




