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40(ギルバート視点)

 サフィアを抱いたまま寝たら心地よく寝られるのではと思った昨日の俺を殴りたい。


 確かに気持ちのいい夢は見れた。

 良すぎて理性を取り戻すのにかなりの時間を要したし、理性を飛ばしたままの寝起きにとんでもない失態を犯した。

 なんとか夢の生々しさ、サフィアの身体の柔らかさを忘れようとするが頭に浮かぶのはサフィアのことばかり。



 ……


 ……


 ……俺は、サフィアが好きなんだろうか。



 こんな風貌をしているせいで王都の学校では友達すらできず独りだったし、家族が死んだ後は誰とも一切の接触が無かった。そのせいで俺は誰かを好きになったことがないし、家族以外に誰かを愛するという気持ちが理解できなかった。

 恋愛というものは一生縁のない感情なのだと思っていた。


 だがこの気持ちは。サフィアのことを考えると鼓動が早くなり胸の奥が暖かくなるこの気持ちは。

 誰にも見せたくない。誰にも触れさせたくないと思うこの気持ちは。

 

 これがただの親愛からくる気持ちの訳が無いと、本当は分かってる。

 これを恋や愛と呼ばずにこれだけサフィアを独占したいという理由が思いつかない。


 そんな事を考えながらサフィアが作ってくれたと言うスープを飲み、気持ちを落ち着かせる。ちなみにスープはとても美味かった。嫁に欲しい。


 そうしていつもの俺を取り戻し、そこでやっとサフィアが外へ出て行ったことに焦りが生まれた。


 サフィアはどこまで行ったのだろう。


 俺以外のどこに戻るのかと、ずいぶんと嬉しいことを言ってくれていたが……まだ戻ってこないのだろうか?


 そろそろサフィアの顔が見たい。


 気持ちは落ち着いた。昨日までの熱も下がった。

 少し身体を動かしたいという思いもあり、俺はサフィアの魔力を辿ってサフィアを探しに行くことにした。





 サフィアの魔力を辿り到着したのは、サフィアが見たいと言っていた花畑。


 だがその景色は何一つ俺の目には映らなかった。

 俺の目に映るのはただ一つ。


 サフィアと、サフィアを抱き締める火の上位精霊。


 目の前が真っ赤に染まるほどの怒りが吹き出た気がした。だが次の瞬間、サフィアと火の上位精霊の違和感の無い空気に俺の心が凍りついた。


 そう。サフィアは水の上位精霊だ。

 ただの人間である俺なんかでは本来隣に立つことすらできはしない。

 そう考えたら、たまらなく怖くなった。


 サフィアは俺より同じ精霊の方がいいのか。

 俺の前ではすぐ猫の姿になっていたのに、そいつの前では人の姿になるのか。人の姿になってそいつと抱き合うほど深い仲なのか。俺よりも……そいつがいいのか。

 凍りついた心と頭でそれだけが俺の中を占める。


 「サフィア……」


 口をついて出た俺の声に、サフィアが気づいてこちらを振り返る。そのままサフィアが俺の方へ来ようとするが火の上位精霊に邪魔され動けないようだった。


 先ほどまでその身体は俺の腕の中にあったのに。

 あの柔らかさを火の上位精霊も知ったのかと思うと怒りしか湧いてこない。


 だが火の上位精霊にサフィアが一人で泣いていたと言われ、確かにサフィアの顔に涙の跡を認めると今度は心配な気持ちと不安な気持ちがせめぎ合った。


 何故泣いているんだ。何故そいつの胸で泣いているんだ。泣くのなら俺の胸で泣けばいい。

 そう口に出そうとしたら、サフィアは俺から離れたくて泣いているのだと言われた。


 これ以上の衝撃を受けたことは後にも先にもない。これ一度きりだ。


 サフィアが俺から離れたがっている。

 絶対に認めたくないことを突きつけられた。


 だが呆然と立ちつくす俺にサフィアは火の上位精霊の腕を抜けて俺の元に来てくれた。


 「大丈夫?病み上がりなのに無理してない?まだ寝てた方がいいんじゃない?」


 変わらず俺を心配してくれるサフィアの態度。その目に俺を厭う色が無いことに安堵し、たまらずサフィアを抱き寄せその髪に顔を埋めた。


 好きだ。好きなんだ。

 誰よりも、何よりも、サフィアが愛しい。

 サフィア、俺はお前をーーー


 愛してる。

気持ちのいい夢=サフィアとにゃんにゃんする夢



明日もギルバート視点ですが、お話は進みます。

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