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 気絶するかのようにそのまま寝てしまったギルバートだが、熱が上がったせいか酷く苦しそうだった。

 ときおり魘されたように「サフィア……猫に…」「無理だ…」「猫で、いてくれ……」と呟く声が聞こえる。


 ギルバートと出会ったのは猫の姿だった。

 精霊とバレた後もずっと猫のままだった。

 だから人の姿のサフィアには違和感があるのかもしれない。

 それにギルバートはよく猫のサフィアを撫で回している。もしかしたらアニマルセラピーを自分に求めているのではないかと考えた。


 (必要なのは猫としての私…?)


 どんな姿だって構わないと言っていたのに。

 でも弱ったときに出た今の言葉の方が本音だろう。

 落ち込む気持ちはしばらく立て直せそうにない。


 (猫の姿に戻ろう)


 看病しやすいように人の姿になっただけだし、またいつも通りに戻るだけだ。

 だがそこでサフィアはある事に気がつく。

 それはギルバートの食事だ。

 まだ熱のあるギルバートに食事の準備はさせられない。かといって今ある食料は硬いパンに干し肉などの保存がきくものばかりだ。


 もっと消化に良さそうな食事を食べさせてあげたい。

 でもこの小さな村ではせいぜい宿屋が一軒あるくらいで、店らしい店が無かった。

 サフィアがこの村のはずれにある花畑を見たいと言ったからわざわざ寄った村なのだ。


 あとは自分で作るしかない。

 前世では一人暮らしをしていたので、それなりに自炊はできる。

 しばし考え、サフィアはギルバートの荷物からサフィア用に購入された蜂蜜の瓶を取り出し宿の人間と交渉に行った。


 まず突然サフィアが現れたこと。次にサフィアが美しすぎたことに驚いていた宿屋の老夫婦だったが、サフィアがギルバートの連れでここで落ち合う約束をしていたこと。そのギルバートが熱を出して寝込んでいこと。食材を分けてもらい食事を作らせてほしいことを伝えると、訝しみながらも了承してくれた。

 サフィアはお礼にと蜂蜜の瓶を渡すと、この村では甘味は貴重だったためとても喜ばれた。


 そうしてサフィアは野菜スープを作りギルバートのいる部屋に戻った。


 「……あれ?ギルバート?」


 鍋を片手にドアを開けると、ベッドを出て窓辺に立つギルバートがいた。


 「……サ、フィア?」


 振り向いたギルバートの顔色は悪く、立っているのも辛そうな状態だ。


 「ちょっと、まだ寝てなきゃダメじゃない」


 サフィアは慌てて手に持っていた鍋をベッド横の机に置き、ギルバートに近づく。


 「ほら、ベッドでちゃんと寝なきゃ」


 ギルバートの腕をとり、少しだけ引っ張ると大人しくベッドに腰を下ろす。


 「…サフィア。何故、ここにいるんだ?」


 呆然とした様子でギルバートがサフィア尋ねる。


 「 ? 今ギルバートにスープ作ってきたとこなの。作り終わったから戻ってきたんだけど」


 質問の意味が分からずサフィアはとりあえず現状を説明した。

 それを聞いたギルバートは机の上に置かれた鍋を見て、またサフィアに視線を戻した。


 「……出て行ったんじゃないのか?」


 「スープを作るためにね」


 「そ、うか……。スープを…。じゃあ、俺が嫌になったわけじゃなく……」


 「…? どうして私がギルバートを嫌がるの?」


 そんなこと全く考えてないのに。心底不思議そうにサフィアはベッドに座るギルバートの前に立ち、首を傾げた。

 その様子を見たギルバートは悪かった顔色に赤みが戻り、心なしか目も潤んできている。

 サフィアは熱が上がったのかと咄嗟におでこに手を当てて熱をはかる。だがその手もすぐに外される。何故ならギルバートが突然サフィアの腹に抱きついてきたからだ。


 「うわっ、ギルバート?」


 突然のことに驚いて声を上げるサフィアを無視してギルバートはさらに抱きつく腕に力を入れる。思わずサフィアの口から「ぐふっ」という声が漏れでるが、ギルバートには届かずそのままサフィアと一緒にベッドに寝転んだ。


 「え?え?ちょ、ギルバート?」


 何が何だか分からず目を白黒させるサフィアを他所に、ギルバートはそのままの姿勢で寝てしまった。

 中途半端にベッドに倒れたので二人とも足はベッドから出てるし布団もかけていない。自分なら大丈夫だがギルバートをこんな状態で寝かせられない。

 サフィアはとにかくギルバートをベッドに寝かせようと、まずギルバートの腕を外そうとするがびくともせず、結局魔法でギルバートを水で包み移動させた。


 本当なら猫の姿に戻って腕から抜け出すのが一番早かったのだが、ギルバートに抱きつかれてることが嬉しく、人の姿のままで対処したのだ。


 (もうすぐ猫の姿に戻るから。最後に人同士であなたと触れ合いたかったの)


 これで最後だから。そう言い訳をしてサフィアはお腹に抱き着くギルバートの頭を優しく撫でる。

 これじゃいつもと逆だと微笑みながら、もう少しだけ。もう少しだけ。と思っているうちに、いつしかサフィアも眠りについてしまった。

明日も1話だけギルバート視点です。



無性におバカな話が書きたくなり、書いた小話が昨日(3月6日)の活動報告に載せてあります。

本当におバカ変態ギルバートしかいません。

それでも大丈夫な方はどうぞ |・ω・`)コッショリ

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