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33(ギルバート視点)

 サフィアが精霊であることはジョエルにも指摘されていたことだし、薄々そうなのかもしれないと、俺の中でも何となく覚悟ができていた。

 むしろもし精霊だったとしたら今までの分も話をすることができるだろうかと胸が踊った。


 だが実際にサフィアが精霊だと分かり、さらに上位精霊だと知って浮ついた気持ちが消えた。


 サフィアはこの世界を見たいと言った。

 そう言うサフィアの顔はキラキラと輝いていて、俺にはとても眩しく感じられた。

 そして俺の孤独を感じ、俺の傍にいたかったのだとも言った。


 頭を殴られた様な衝撃を受けた。


 俺はこの瞬間までサフィアを自分の所有物という目で見ていたことに気付いたのだ。

 ずっと孤独に生きてきた俺に、初めて大事だと思える存在。俺を恐がらずにいてくれる存在。大切にしてもいいのだと、天から与えられた存在だと思った。

 でもそれはサフィアという、個人の意思がある存在としてではなく、何か貴重な宝石のような、物として見ていたことに気付いた。

 物として見ていたから俺は誰にも触れられないように、誰の目にも触れさせたくないと、気に入りの宝石を大事に真綿に包むようにサフィアを扱った。怪我を負って残った傷あとすら自分に縛り付ける理由としてサフィアの全てを欲した。


 だがそうじゃなかった。

 サフィアにはサフィアの意思があり、自分で考えて決断する『自分』があった。


 物ではない。俺の我儘で自分に縛り付けていい存在ではなかった。

 それに気付いた俺は恥ずかしくてたまらなくなった。


 

 …………でも。それでも。


 それでも俺はサフィアに傍にいて欲しい。


 ーーいや違う。


 俺が、サフィアの傍にいたいんだ。


 世界が見たいと言うなら何処へでも連れて行ってやる。

 サフィアのいる場所が、俺のいる場所だ。



 『あのねぇ、サフィアちゃんはSランクの君よりずっと強い存在だよ。ただの猫だったサフィアちゃんとは違う。自分で自分の身は守れるんだから』



 ふいにジョエルの言葉が頭をよぎった。


 そうだ。ただの猫だったサフィアとは違い、精霊であるサフィアには自分を守る力がある。

 世界を見たいと言うなら、一人でだっていくらでも見ることが出来る。


 俺が一緒にいる意味は無いのかもしれない。


 そう考えたら、俺は自分の足元が崩れるような感覚に陥った。


 駄目だ。もう俺にサフィアと離れる選択肢などない。

 離れたくない。離したくない。

 行くな。行かないでくれ。



 「……サフィア。世界を見たいと言うならこのまま……俺の傍で、俺と一緒に世界を見ないか?」


 声が震えないように、でも懇願する声色は隠せずに俺は祈るようにサフィアに問いた。


 「もちろん猫の姿のままでも、精霊の姿でも、人の姿をしていても構わない。俺は…お前がいない孤独には耐えられそうにない」


 どんな姿をしていたっていい。こんな俺を拒絶するどころか心配してくれるお前と離れるなど考えられない。



 ポタっ。



 サフィアの目から涙が零れた。


 「ど、どうした!? そんなに俺といるのは嫌だったか!?」


 まさかという思いに、俺は竦みあがった。


 「ちがっ、違うの。私、ギルバートをずっと騙してたから……そんな奴が一緒にいるのなんて、ギルバートの方が嫌がると思って…私、嫌われたかと思って……だから、一緒に世界を見ようって言ってもらえてホッとして、嬉しくて……」


 俺を騙していたから嫌われると思っていたと泣くサフィアに心の底から安堵し、また たまらなく愛おしく感じた。

 そんな訳無い。俺がお前を嫌うはずがない。むしろ俺はーーー


 …………ん?


 今俺は何を思った?

 ちらりと脳裏を掠めたのは一度だけ見たサフィアの人間の姿。

 

 長い髪に意思の強そうな少しつり上がった目。抜けるような肌の白さ。艶がある唇は妙に色気を感じ、吐く吐息まで甘そうであった。腰は俺の両手で全て掴んでしまえそうなほど細く、反対に胸は俺の手でも余りそうなほど豊かで全身が柔らかそうだった。


 その姿を脳内で再現させた途端、俺の心臓が激しく動き出した。まるでこのまま胸を突き破って出てくるのではと思うほどに。


 なんだ?一体どうしてしまったんだ?


 いまだ泣き続けるサフィアの背中を撫でながら、俺は必死に自分を落ち着かせようと試みる。

 だがサフィアの背中を撫でていると、もしこれが人の姿のサフィアだったらと想像した。染み一つない綺麗な背中をしているのだろうか。その背中に、俺の痕をつけられたら…とあらぬ妄想が広がっていく。


 ーー違うっ、俺は今、なんてことを……!


 大事にしたいんだ。今度こそサフィアの意思を尊重して、サフィアのやりたい事をやらせてやって、いつも笑顔でいて欲しいだけなんだ。

 そう思っているはずなのに、同時にサフィアの全てを征服したいという自分がいる。


 優しくしたいのに酷くしたい。

 自由にさせてやりたいのに全てを奪いたい。


 なんだ、これは。

 こんな感情、俺は知らない。

 

 心の中が嵐のように吹き荒ぶ。

 そうして混乱しているうちに、サフィアが泣き止み落ち着きを見せ始めた。


 「……グズッ。ごめんね。こんなに泣くつもりじゃなかったのに」


 「構わない。サフィアは今まで喋れずにきたんだ。いろいろと溜め込むことも多かっただろう」


 「ありがとう……でも本当にいいの?」


 「ああ。俺はこれからもお前と共にいたい」


 そうだ。俺の願いはサフィアと共にあること。

 それ以上は俺には過ぎた願いだ。

 だから。だからサフィア。これ以上は望まないから、俺から離れて行かないでくれ。

 

 でないと俺はーーー。


もうこの二人がくっついたらお月様でしか続きが書けない気がしてきた……。主にギルバートの暴走により。

私エロを読むのは好きですが、書ける自信がありません(✽´ཫ`✽)

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