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(やっちゃった……)
サフィアは激しい後悔の中にいた。
つい怒りに任せてハリセンでロードラントをぶっ叩くという暴挙に出てしまった。
(しかも上位精霊なのまでバラしちゃうなんて)
全て打ち明けるにしても、もっと段階を踏んで、ギルバートの様子を見ながら打ち明ける予定だったのだ。
横から突き刺さる視線が痛い。
「ああ、サフィア。そなたの人の姿も美しい!」
真正面からは火傷しそうな熱視線が暑苦しい。
(うん。まあ、ここは……)
「ギルバート!」
「 !? な、なんだ?」
つかつかとサフィアがギルバートの前まで歩いて行くと、その腕をグイッと引いた。
「帰る」
「……は?」
「いいから、帰るわよ!」
「わ、分かった」
ギルバートは何ひとつ分かっていなかったが、サフィアの勢いに押されて返事をする。
そしてギルバートの腕をとったまま、サフィアは転移を発動させる。
「待て!サフィア!」
慌ててロードラントが引き止めようと足を踏み出すが、サフィアに「追い掛けてきたら嫌いになるから」と言われピタリと動きを止める。
その隙にサフィアは転移を完成させ移動に入る。
「おい、サフィア!置いてくな!」
「自分でついてきて!」
水の壁の向こうからクインツの声が聞こえるが、サフィアは無視してギルバートだけ連れて転移した。
「………」
「………」
(き、気まずい…)
転移した先はさっきまでいた山の麓。
言わなければいけないことが沢山あるはずなのに、何から言っていいのか分からず沈黙してしまう。
ギルバートも何やら難しい顔をしてサフィアから目を離し、どこかを睨んでいる。
(何から?何から話せばいいの?まず謝るとこから?)
そうだ。それでいこう。まず話のきっかけにと、サフィアがギルバートに黙っていたことを謝ろうと口を開く。
「……あ、あの、」
「おいサフィア!置いてくなよ!」
せっかく勇気を出したのに転移してきたジョエルとクインツに邪魔されてしまった。
「いや~、サフィアちゃんって精霊なだけじゃなくて上位精霊だったんだね」
こんな美人さん見た事ないよ。と上から下までじっくりと眺められる。
そのジョエルの視線に、ギルバートはサフィアとジョエルの間に割って入り、冷たい視線を向ける。
「…見るな」
「君、サフィアちゃんが実は上位精霊だって分かっても全然反応が変わらないんだね」
「 そ、それは… 」
「 何その反応。もしかして無意識?あのねぇ、サフィアちゃんはSランクの君よりずっと強い存在だよ。ただの猫だったサフィアちゃんとは違う。自分で自分の身は守れるんだから」
「……分かってる」
「じゃあとりあえず街に戻ろうか。火の上位精霊の誕生も見届けたから依頼も完了したしね」
そもそものきっかけとなった水の上位精霊の話には触れない、ジョエルの気遣いが染みた。




