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30(ギルバート視点)

皆様が期待する程の変態さんは出てこないかもしれないです(;´Д`)

 「サフィアさーん!その人間何なんすかー?契約者っすかー?」


 「えー!?あのサフィアさんが契約とかマジありえないっすよ!」

 

 「せめて人選はもうちょっと考えないと!」



 『契約者』という言葉に心臓が嫌な音を立てた。

 その言葉が出るということは、やはりサフィアは精霊だったのか。


 「……契約?まさか…やはりサフィアは精霊なのか?」

 

 何故隠す必要があった。それとも隠さなければならない何かがあったのか。それなら何故俺についてきた。

 何か事件に巻き込まれているのではないか。それなら俺は助けにならないか。

 頭の中でいくつもの「何故」が渦巻く。

 何も言えずに俺は黙ってサフィアを見つめた。


 「……うん。ずっと黙っててごめんなさい」


 「 !! やはり、精霊だったのか」


 「そう、本当は水の精霊なの」


 「何故ただの猫などと……」


 「うん。ちょっと理由があって」


 「理由…」


 「うん……あ、いや、そんな大層な理由じゃなくて!ちょっと人間の生活に興味があって!」


 「人間の生活……」


 これはやはりいなくなった水の上位精霊と何か関係があるのか。だから人間の生活に興味があるなど嘘をつくのだろうか。


 「え、えっと、私、ギルバートと一緒にいたくて!」


 「 !! 」


 瞬間、ありえないほど顔に熱が集まった。


 「なっ、サ、サフィア、それは……」


 もしかしたらサフィアも俺と同じ気持ちだったのか?

 何か目的があったとしても、俺と離れたくないと思ってくれたのか?

 顔にはさらに熱が集まり、心臓が早鐘を打っている。持て余す激情に俺は咄嗟に両手で顔を覆う。


 「サフィアが俺を……」


 嬉しくて心臓が爆発しそうだ。


 「待って!……ギルバート!」


 「っ!?サフィア!!」


 気付くとサフィアは火の精霊たちに囲まれ炎の中にいて、慌てて手を伸ばすもあと一歩のところでサフィアは他の精霊共々姿を消した。


 「クソッ、爆発するのは俺の頭の方だっ!」


 嬉しすぎて油断してサフィアを連れて行かれるなど、ありえない失態だ。


 「まあ爆発するとこも見てみたいけど、今は止めてよ」


 振り返ると、いつの間にか後ろにはジョエルとクインツがいた。


 「やっぱりサフィアちゃんは精霊だったか~。クインツも妙にはぐらかすし可笑しいと思ったんだよね」


 「あれじゃバレるのも時間の問題だったけどな」


 あんな不自然な猫いねーよ。と呆れ声を出すクインツに俺は詰め寄る。


 「うっ、お、おい、急に近づくなよ!恐いだろ!」


 「お前はいろいろとはっきり言い過ぎだよ」


 「……サフィアは何処に行った?」


 「えー、そりゃ火の精霊たちが連れて行ったんだからあそこしかないだろう」


 「あそことは?」


 「この山の火口。もうすぐ上位精霊が生まれるからな。あいつらご主人様喜ばすのが一番大事なことだし」


 「何で火の上位精霊の所に連れて行くのが一番の喜びなんだい?」


 「火の上位精霊って何でか知らねぇけど、水のじょ……サフィアにベタ惚れなんだよ」


 「なんだと!?」


 聞き捨てならない発言に俺はさらにクインツに詰め寄るが、同時にジョエルとも距離を詰めることになり、とても嫌がられた。


 「とにかくその場所に連れて行け」


 「いいけどよ。お前ら今にも上位精霊が誕生する火口なんて行ったら熱さとか魔力とかで無事じゃ済まねぇぞ」


 「なら防御膜をまとって行けばいいだろう」


 「そうだね。その上にさらにクインツの水の防御膜でも張ってもらおうか」


 「精霊使いの荒い奴らだな」


 いいけどな。と言いながらクインツが俺とジョエルに防御膜を張る。


 「行くぞ」


 俺たち三人が水の球体に包まれ転移を開始する。外の様子が分からないので魔力の動きで転移が完了したのを感じると、外から「フミャア!!」というサフィアの鳴き声が聞こえた。

 次の瞬間、水の球体が割れ外の様子が見えた。

 するとそこには、赤い髪の男に抱き上げられているサフィア。


 「サフィアっ!!」


 あれがサフィアに惚れているという火の上位精霊だろう。

 いくら俺がSランクの冒険者だとしても、上位精霊に立ち向かうのは無謀だ。だが今はそんなことを考えている余裕が無かった。


 「貴様!サフィアに触るな!」


 「人間ごときが、軽々しくサフィアの名を口にするな」


 走り出した俺の目の前に火柱が上がる。


 「っ!ギルバート!!」


 火柱の向こうからサフィアの声が聞こえる。

 すぐそこにサフィアがいるのに。

 ギリッと噛み締めた唇から血の味がする。


 「ロードラント、離して!」


 「しばし待て。あやつらを始末するまで」


 ふざけるなっ!

 サフィアは俺の唯一なんだ。その唯一を勝手に奪っておいてふざけた事を抜かすな!


 俺は火柱を突破しようと腰を沈め飛び出す姿勢に入る。……つもりだったのだが。


 「ちょーっと待った!」


 後ろからジョエルに肩を掴まれその場でたたらを踏んだ。


 「邪魔をするな!」


 「火の上位精霊相手にそんな闇雲に突っ込んで行って勝てるわけないでしょ」


 冷静になれと言われ少し頭が冷える。


 「だが、このままでは……」


 「っていうかアンタが助けなくてもサフィアは自分で抜け出せるから」


 あまり心配した様子もなくあっさり言ってのけるクインツに、俺は少しだけ落ち着くことが出来だ。

 そうして改めて前を見ると火柱は消え、火の上位精霊の手の中で光るサフィアがいた。


 「サフィア!?」


 「~~~いい加減にしなさいよ!このバカ犬があ!」


 光が霧散し現れたサフィアのその姿に、かつてない衝撃を受けた。



 俺はこれほど美しい女を見たことがない。



 綺麗だ。自分の語彙力の無さに情けなくなるほどこの言葉しか思い浮かばない。

 俺はサフィアの周りだけがキラキラと輝いて見えた。


 時間が止まった様に俺が見つめるその先で、サフィアは何やら大きな扇子のような物を水で創り、そのままそれを振りかぶると火の上位精霊目掛けて振り下ろした。


 バチーーーーンッ!!!


 叩いた弾みで辺りに水が飛び散り、その水が反射してサフィアの周りが輝き、美しさをより際立たせていた。


 水でできた扇子を振り抜き腰に手を当て仁王立ちする姿すら美しい。




 ……俺もあの様に可愛らしく罵られながら叩かれてみたいなどと思ってない。ないったらない。

きっとサフィアに「犬におなり!」とか言われたら喜んで這いつくばって靴とか舐めちゃうギルバート。そのまま興奮したギル犬が全身舐め回してアハンな展開になるとなおよし。

いつかお月様で書いてみたい案件。



次からは通常更新に戻ります。

祭りにお付き合いいただき ありがとうございました(*´∀`)

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