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 火の上位精霊が誕生した瞬間、サフィアの脳にこの精霊の名前が刻み込まれた。


 火の上位精霊ーーーロードラントの名が。


 「ロードラント……」


 思わず名前を呟いてしまうと目の前のロードラントは突然光をまとい、その姿が犬から人の姿に変わっていく。


 ロードラントの人型は犬のときと同じワインレッド色の髪で、長さは腰近くまであり後ろで一つに結んでいる。そして瞳も犬のとき同様、紫と赤。切れ長の目の神秘的な美しい顔をしていた。


 「……サフィア」


 ロードラントはそれはそれは嬉しそうに微笑み、大事な宝物のようにサフィアの名前を呼ぶ。


 「はじめまして……」


 「ああ。今生では初めての出会いだ」


 一歩。また一歩。ゆっくりとサフィアに近づくロードラント。

 それを見て一歩。また一歩。後ろへ退るサフィア。

 だが猫と人。歩幅の違いであっという間に距離を詰められる。

 咄嗟に走って距離を開けようとしたが、走る寸前であっさりとロードラントの手に捕まってしまう。

 ロードラントはサフィアを同じ目線まで抱き上げるとそっと額にキスを落とした。


 「サフィア。我が運命。今生こそは我と添い遂げよう」


 その瞬間、周りでじっとご主人様ーーもとい、ロードラントの動向を窺っていた火の精霊たちは一斉に祝福の言葉と魔力を撒き散らした。


 「ついに!ついに言えましたね!ロードラント様!」


 「おめでとうございます!おめでとうございます!」


 「良かった!ほんとに良かった!」


 「やっとロードラント様が報われる日が……!」


 辺り一帯祝福の嵐と漢泣きに泣きまくる精霊たち。

 それを見て慌てたのはサフィア一人だった。


 「待った!ちょっと待ったー!!」


 「どうしたのだ。サフィア」


 「いや、おかしいから!何、この二人まとまって良かったねみたいな空気!」


 「違うのか?」


 「全然違うわー!!」


 サフィアは怒りからめちゃくちゃに身体をよじってロードラントの手から抜け出し、地面に着地を決めるとキッとロードラントを睨みつける。


 「私、あなたとどうにかなるつもりなんてこれっぽっちもありませんから!」


 それだけ言い捨てるとギルバートの元に戻ろうと魔力を練り合わせる。


 「わ!待って!待ってください!」


 「このままロードラント様を放置して行かないでくださいよ!」


 「生まれたばっかりなのにもう抜け殻みたいになっちゃってますよ!」


 そう火精霊たちに止められもう一度ロードラントを見上げると……


 (……燃え尽きてる)


 そこには先ほどのサフィアの発言にショックを受け、真っ白に燃え尽きてるロードラントがいた。


 「そんなこと言われても……。そもそも先代も先先代もずっと言ってたと思うけど、私たち水の上位精霊は火の上位精霊に運命を感じたことなんて一度もありません」


 そう。火の上位精霊は代々水の上位精霊に一目惚れし、ひたすら口説いてくる者ばかりなのだ。

 上位精霊という立場は同じだが、毎回代が変わるごとにその精霊たちの人格も見た目も変わる。なのに火の上位精霊はひたすら一途に水の上位精霊に恋をするのだ。


 先代の知識を受け継いだときにその厄介な関係も知ったのだが、会わなければ大丈夫だろうと軽く考えていた自分が甘かった。


 運命なんて感じたことない発言に、ロードラントはさらに落ち込み、サラサラと真っ白になった端から風化し出していた。


 「ギャーッ!ロードラント様!」


 「しっかり!気をしっかり持ってください!」


 「まだです!まだ諦めちゃダメっすよ!」


 ロードラントの周りを囲む犬の応援団。


 これが水精霊たちなら。面白がる者も多いだろうが、基本勝手にやってと言う者が大半だろう。


 だが今気になるのは真っ白になったロードラントよりもやはり…


 (ギルバート……)


 精霊だと知られてしまった。もっとちゃんと説明したかったのに出来なかった。

 後悔の念が後から後から湧き出てくる。


 (……うん)


 ギルバートが最優先だ。

 そう結論を出したサフィアはもう一度魔力を練り直す。

 だが周囲の精霊たちがそんなサフィアにすぐ気が付いてしまう。


 「あー!サフィアさん待って!」


 「ほら、ロードラント様!白くなってる場合じゃないっすよ!サフィアさん行っちゃうすっよ!」


 みんなが気合注入とばかりに前脚でバシバシとロードラントを叩き、それに押されて膝をつき地面に手をついて項垂れていたロードラントはハッと顔を上げた。


 「ま、待てサフィア。我の傍にいてくれ」


 そんな捨てられた犬のような目で見ないでほしい。サフィアの良心がギリギリと痛んだが、やはり優先されるべきはギルバートだ。


 「ごめんなさい。でも私、行かなきゃ」


 サフィアが転移するために自身に水をまとい始めると、ロードラントがサフィアの身体を両手でガシッと鷲掴みにした。


 「フミャア!!」


 思わずサフィアの口から猫が潰された様な声が出る。


 「す、すまない。だが待ってほしい。我は……」


 ロードラントが何か言いかけたそのとき、少し離れた所に大きな水の球体が現れた。


 バシャンッ。


 球体が割れ、中から出てきたのは……


 「サフィアっ!!」


 「わ~、俺こんなに火の精霊見るの初めてだよ」


 「うーわー魔力濃っ」


 ギルバート、ジョエル、クインツの三人だった。

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