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いきなり説明回です。
海で溺れた記憶が人としての最期の記憶。
次に目が覚めると私は人ではなくなっていた。
水精霊。それも各精霊に一人ずつしかいない上位精霊として転生した。
海で溺れ死んだ私が水の精霊として転生するなんて何の冗談だ。
しかし目覚めた私は驚く程冷静だった。精霊は世界の理を理解して生まれてくるからだ。
ああ、私は精霊なんだと素直に受け入れられた。
転生したのは剣と魔法のファンタジーな世界。
ラノベか。と突っ込んだ私は悪くないと思う。
精霊には上位、中位、下位と分かれ、数も多く一般的に人間に見られることが一番多いのがこの下位精霊だ。その姿は光の玉のようで、ぷかぷかと浮いている。気に入った人間がいれば傍に張り付き魔法の手助けをしてやる。
中位精霊は数がグッと減り、その姿を見る者は稀だ。そして中位精霊になると動物の姿をとれるようになる。各精霊によって違う動物なのだが水精霊がとる動物の姿は猫だ。気に入った人間がいれば契約を結び、猫の姿で人間の傍にいる。
最後に上位精霊だが、上位精霊は各精霊に一人だけ。下位、中位の精霊の上に立ち精霊たちをまとめる役目を持つ。動物の姿をとることも出来るが上位精霊だけ人の姿をとることも出来る。
まあ普段は楽な猫の姿で過ごすことがほとんどだ。
前世の私は現代日本で生活をしていた28歳独身OL。実家を出て一人暮らし。時々彼氏もいた、ごく普通の人間だった。
そんな今の私の姿は濃紺の毛色に水色と金色のオッドアイ。――オッドアイは精霊である証。普通の動物は左右の目の色が同色だ。
生まれたときから知識があるため、魔法は水魔法に関してのみ最上位まで使うことは簡単に出来る。精霊として転生し、魔法が使えることにテンションが上がってまず最初にしたことが水魔法を撃ちまくったことだったのはここだけの話。
上位精霊の誕生に、下位中位精霊がわんさか集まって喜びに湧いていたみんなをドン引かせたのも絶対にここだけの話。
私は普段、人間たちが滅多に訪れることがない森の奥深くで暮らしている。
食べることも排泄することも必要がない精霊の身としては、何もせずただゴロゴロしているだけの毎日にいい加減嫌気がさしてきた。周りの精霊たちに聴いてもそんな毎日を送ることに何ら疑問も無いようだ。やはり前世で人間だった記憶ががあるせいだろうか。
だから私は決心した。
この森を離れ、人間の街に行ってみようと。
精霊の証であるオッドアイを魔法で隠し、ただの猫としてこの世界の人間をこの目で見てみようと。
そうして私―――サフィアは精霊ではなく、ただの猫として旅立った。