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 猫相手に「責任を取る」発言をした変態男……もといギルバートはその後甲斐甲斐しくサフィアの世話をした。

 サフィアももうこれ以上思考することを放棄し、先ほどの発言に対しては華麗にスルーを決めた。

 深く考えたら負けだ。


 とは言え猫の世話などたかが知れてるし、世話をしたところで いつもとやっている事はたいして変わらないのである。


 「サフィア、これも食べるか?」


 目の前には食事の山。

 猫がこんなに食べられる訳無いだろうと突っ込めないのが辛い。

 サフィアは次々と勧められる皿を義理で一口ずつ食べていくが、そろそろ腹が限界を迎えそうだ。


 「なんだ。もう腹いっぱいか?」


 その様子に気付いたギルバートは優しい瞳でサフィアを見ると、次にその頭を撫でた。


 「三日も寝ていたんだ。まだ動くのは辛いだろう」


 確かに今は動くのが辛い。お腹がいっぱいで。


 「俺はこの後ギルドへ行かねばならん。サフィアはここで寝ていてくれ」


 「ミャウ」


 珍しい。


 ギルバートは何処へ行くにもサフィアを置いて行ったりはしない。

 もし置いて行くことになっても、こんなにあっさり手放すことは無い。いつもしつこいぐらいに未練たっぷりとサフィアを撫で回してから出て行くのだ。

 しかも何故だかギルバートがあまり目を合わせてくれない。


 …もしかして。


 ( 女 ……!!)


 まさかと思う気持ちもあるが、ギルバートだって一人の人間だ。


 (好きな人?ちょっと気になる人?それとも身体だけの関係?誰?この前食事したときのウエイトレスさん?それともギルドの受付のお姉さん?まさかあの武器屋の人?アカンあれ人妻や)


 ここ最近のことが目まぐるしくサフィアの頭を駆け巡り、仮想『ギルバートの想い人』を思い描く。


 こ、これは……。


 (見定めねば!!)


 女性を買いに行くというなら何も言わない。ギルバートだって男だ。いろいろ発散したい事もあるだろう。

 だが好きな人に会いに行くというなら別だ。

 ギルバートにまともな恋愛経験とか無さそうだし、いつか結婚詐欺に遭うのではと心配だったのだ。


 すっかり保護者気分でサフィアは部屋を出ていくギルバートを見送った。






 (本命は受付のお姉さんか!!)


 サフィアは窓からコッソリと中を覗き、中でギルバートと受付のお姉さんが話している様子を見ていた。


 部屋を出ていくギルバートを見送り、宿屋を出て行く姿を確認したサフィアは気配を殺しギルバートの後をつける。

 そしてギルバートが言っていた通りギルドに到着し、受付のお姉さんと照れ臭そうに会話している様子を見てサフィアは確信した。


 お姉さんの見た目は妖艶な美人。恋愛経験豊富そうなお姉さんである。


 (だ、大丈夫なの?騙されてない?受付のお姉さんは誰にでも笑いかけるのがお仕事だよ?)


 ハラハラとしながら見守るサフィア。

 だが心配する気持ちの他に、モヤモヤとした気持ちが渦巻いているのも感じた。


 (責任取るって言ったのに)


 舌の根も乾かぬうちに他の女に会いに行くなんて。


 そう考えたらズキズキと胸が痛み出した。


 (あー……これは不味い)


 この痛みには気付かない方が良かった。気付いてしまったら、今後ギルバートの傍にいるのが辛くなるだけだ。


 (……だって精霊だし)


 そもそもギルバートにはただの猫としか認識されていない。

 これでどうにかなる訳が無い。

 なったとしても、人と精霊の恋愛などお互い不幸なだけだ。


 そう結論して落ち込んでいると、かすかに水の気配を感じた。


 (ん?)


 顔を上げると、上から白っぽい塊が降ってきた。


 「サフィアー!!」


 「ぶふっ!」


 それはサフィアの顔面を直撃しながら、そのままサフィアを押し倒した。


 「何でサフィアがここにいるんだ!?」


 「ちょ、重っ…」


 「やばい。久しぶりのサフィアだ!やっぱサフィアの魔力は気持ち良いな!」


 サフィアを押し倒したのは白に近い薄ピンクの毛並みの猫。いや、精霊だ。


 精霊はサフィアを押し倒し、そのまま首元に鼻を突っ込みグリグリと堪能する。

 こうなると満足するまで引かないことが分かっているサフィアは黙って耐えた。


 すると……


 「あれ?クインツ?」


 精霊越しに一人の男が見えた。


 「急にいなくなるからどうしたのかと……ん?その子どうしたの?もしかしてお前の彼女?」


 その男がこちらに足を踏み出すと、さらにその後ろから何かが風のように駆け抜けた。


 「サフィア!!」


 それは鬼神の如き怒りを顕にした山賊……もといギルバートだった。

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