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 ギルバートは気絶した四人をそのままロープに繋ぐと軽量化魔法をかけ、引き摺って歩き出した。


 (え?え?引き摺ってる!?ちょ、一人うつ伏せの子いるから!)


 さすがにそれはと、必死に肩をタップするがギルバートは気にしたふうもなく「冒険者ならこれぐらいのこと耐えられないようでは困る」と言われてしまった。


 まあそもそも自分たちが忠告を無視して無理に迷宮に入ったのだから、これぐらいの扱いでも我慢してもらうしかないかと疑問に思いつつも納得するサフィア。

 途中何度か目を覚ましていたが、自分たちを引き摺っている鬼ーーーもといギルバートを見て再び気絶していた。

 

 しばらく先に進むと、今度は何やら言い争う声が聞こえてきた。


 「くそっ、あんな場面を見て逃げるしか出来ないなんて!」


 「だからここに入るのは反対だったんだ!」


 「こんな所で言い争うのはやめて!」


 ……多分この声の主たちも勝手に入ったチームのどれかだろう。


 躊躇うことなくズンズンと進んでいくと…


 「キャアアッッ!!」


 「新手の魔物か!?」


 「これでもくらえぇっ!!」


 初対面五秒で斬りかかられた。

 

 だがギルバートは慌てることなく剣を受け止めると静かに「落ち着け」と言った。

 それでも興奮状態にある相手には届かない。


 「クッ、もう一度だ!」


 と何度も剣を振り上げてくる。

 仕方無くサフィアは相手を落ち着かせようと「ニャーっっ!!」と鳴き、二人の間に着地した。


 「サフィアっ!?」


 「何だこの猫は!魔獣か!?」


 珍しく焦ったギルバートの声が聞こえたが、次いでサフィアを魔獣発言したことにより、光の速さでギルバートの拳が振り下ろされた。


 「これほど愛らしい存在が魔獣な訳あるか」


 「~~~っ!」


 殴られたのは十五歳ぐらいの男の子。

 他には同年ぐらいの男の子と女の子。三人組だろうか。


 ギルバートに斬りかかってきた男の子は殴られた頭を押さえながらこちらを睨みつけていて、後ろの二人はガタガタ震えながらこちらを窺っている。


 「俺はお前たちを回収に来た冒険者だ」


 「…回収?」


 「ギルドの忠告を聞かずに無理に迷宮に入っただろう」


 それを聞くと男の子は気まずそうに目を逸らした。


 「あともう一チーム見つければ一旦外に出ようと思っている。お前たち、他のチームは見なかったか?」


 そう訊かれた途端、三人の顔が青ざめた。

 三人は顔を合わせ、目だけで誰が切り出すか押し付けあっているようだったが、結局殴られた男の子が話し出した。


 「もう少し先に進んだ辺りで魔物と戦闘中だったチームを見た。……いや、戦闘中というか、その……」


 「襲われていたか」


 歯切れの悪い話し方に、何かを察したギルバートが会話を引き取った。


 「……ああ」


 ギリッと唇を噛み締める様子に悔しさが滲み出ている。

 恐らく助けることも出来ず逃げてきたのが悔しいのだろう。


 「ならそのチームは諦めて一旦お前らを連れて外に出る」


 「なっ!助けに行かないのか!?」


 「襲われていたのならもう遅い。それよりも今無事なお前たちを連れ帰ることが優先だ」


 「けど!」


 「勘違いするな。冒険者は自分の身は自分で守らなければならない。今回はギルドからも依頼され、また駆け出しのお前たちのフォローは年長の冒険者がするものだから助けるにすぎない」


 守られる立場のお前たちに意見される覚えはない。と言われてしまえば泣きそうな顔で押し黙った。


 途端その場が気まずい空気に包まれ、ここは自分の出番だとサフィアは「ミャーウ」と鳴き、ギルバートの肩に飛び乗った。


 「……!そいつは…」


 「俺の猫だ」


 「俺の」にやたら力を入れドヤ顔を決めるギルバートに、強面男と猫の組み合わせに戸惑う駆け出し冒険者たち。

 とりあえず先ほどの空気を払拭出来たとホッと息をつく。


 「さあ、とりあえず外に出るぞ」


 「なあ、さっきから気になってたけど、その引き摺ってる人たちは…」


 「先ほど回収した別チームだ」


 「……」


 三人組は未だ目を覚まさず、引き摺られボロボロになっている冒険者たちを見て、絶対この男の前で気絶はすまいと固く誓った。



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