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「サフィアっっ!」
遠くで私を呼ぶ声が聞こえる。
大丈夫。精霊の私にはこんなの、なんてこと無いよ。
安心させてあげたいのに声をが出ない。
ああ、早く彼の側に行ってあげなきゃ。
早くーー早くーー
ギルバートが私に必死に手を伸ばす姿を最後に、私の意識はブツリと切れた。
依頼とは、とある迷宮の調査依頼だった。
何でも初心者向けの迷宮なのに、やたら強い魔獣や魔物が出るようになったとか。
そこで原因を究明して欲しいということと、忠告を聞かず迷宮に入ってしまった駆け出し冒険者たちを回収してきて欲しいそうだ。
原因究明は分かるが、忠告したにも関わらず迷宮に入った冒険者たちなど助ける必要はあるのか疑問なのだが、ギルバートによればこういった新人をフォローするのも先輩冒険者の務めらしいので文句は言えない。
そもそもソロ冒険者のギルバートに迷宮は難しいのではないかと思ったが、そこは高ランク冒険者。たいした問題は無いらしい。
それよりギルバートにとって原因究明をすることや、強い魔獣や魔物相手に戦うことより駆け出し冒険者を連れて帰ることの方が難しいミッションのようだ。
主に対人面で。
駆け出し冒険者のような、低ランク者たちにとってSランク冒険者とは雲の上の存在だ。
ただでさえ緊張を強いる立場なのに、加えて顔面の破壊力。
対人スキルも皆無で、本人も「駆け出しには大抵逃げられる」と言っていることから回収して帰ってくるだけのことがかなりの高難易度ミッションのようだ。
その問題についてはサフィアがマスコットとして場を和ませてあげようと思っていた。
前世はちゃんと社会人をやっていたし、対人スキルはギルバートより遥かに高いと自負していた。
だがサフィアがついて行くことにギルバートは猛反対した。
そりゃただの猫なんて足でまとい以外の何物でもない。
この街に着くまで何回か魔獣にも遭遇し、戦闘も経験したが、外で遭遇するのと逃げ場がない迷宮で遭遇するのでは状況が全然違う。
さらに迷宮には魔獣よりも知能も能力も上の魔物も出る。
サフィアに何かあったら俺は生きていけないと、随分大袈裟なことを言っていたが、それでもサフィアは押し通した。
未だ戻らない駆け出したちは全部で三チーム。もちろん生きていた場合のみ回収。
ギルバートは装備を確認し、サフィアと二人、迷宮に足を踏み入れた。
「いいか、絶対に俺より前に出るんじゃないぞ」
ギルバートの空気が緊張感のあるものに変わり、肩に乗ったサフィアも気を引き締めた。
ーー肩って、戦うとき邪魔じゃね?
今までの戦闘も肩に乗ったままだったが、ギルバートは全く気にせず戦ってきた。
むしろ心配なのはサフィアが振り落とされず、ちゃんとしがみついていられるかだと思う。
だからさすがに今回は邪魔だろうと、降りて歩こうとしたサフィアだが、ギルバートはそれだけは絶対に許してくれなかった。
ーーもしものときは精霊の力があるし、まあいいか。
この迷宮は初心者向けなだけあって、迷宮自体それ程大きくは無い。
中盤までは出てくる魔獣もギルバートが簡単に倒せるものばかりだった。
少し気が緩んできたサフィアの耳に、突然「グルルルァァァア!!」と魔獣の声が聞こえた。
次いで爆発音や誰かの悲鳴。おそらく回収を依頼された駆け出しチームのどれかだろう。
「どけっ!」
すぐさまギルバートが駆けつけ、魔獣と冒険者たちの間に割って入る。
剣を一閃。それだけで魔獣は声も無く倒れた。
ギルバートは魔獣の死亡を確認すると後ろを振り向き、助けたチームと対峙した。
そこには十二歳ぐらいの男の子が四人。
「お前たちがギルドの忠告を聞かず迷宮に入ったチームか」
チームの面々は魔獣との戦闘で死の恐怖を感じていたところ、助けが来て安堵し、そして助けてくれたギルバートを見て……
気絶した。
日間恋愛ランキング1位になりました。゜(゜´▽`゜)゜。
ああああありがとうございます!!
小心者の自分はドキがムネムネです。(←古い
これも読んでくださる皆様のおかげです。
これからも宜しくお願い致しますm(_ _)m




