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第2話 英雄商人の力(1)

 


 第2話 英雄商人の力(1)





 前のオアシスを出発して、約3時間が経った。あともう1時間もすればエレイズに着くだろう。

 それまで正直言って暇だ。食糧は充分にあるし、このあたりには何も無い。砂漠の生き物は基本的に美味しくないから、狩る気すら出ない。

 砂漠は暑いからとりあえず荷台の中に入った。そこからしたことと言えば、商品の数を確かめる。これは見れば数がわかる俺にとってすぐに終えてしまう。

 そして、商品であり、自分でも使う魔法道具の整備と修正。くらいだ。

 今はその作業も全て終えてしまったので、魔法道具の製造を始めた。


「魔法道具を自分で作れるの?」

「ここにある魔法道具はほとんど自分で作った物だ。俺が作る魔法道具は特別だからな」

「え、すごい。特別ってどんなの?」

「魔法道具は誰でも使えるようにある1つのことしか出来ないのは知ってるよな?」

「うん」


 そう魔法道具は、1つの魔法道具に1つのことしか出来ない。例えば、氷を銃弾のように飛ばすや、雷を纏う剣など、具体的な1つの作業しかできない。魔力はこれと違って、氷を作ったあと、銃弾のように飛ばしたり、氷を地面に張ったり。氷を作り出したあとは自由に操作できる。

 魔力は魔法道具何十個分もの力を引き出せる。さらに、引き出せる力の最大値も、持つ魔汝によって多少は変わるが、ほとんどの場合魔力の方が大きい。

 ここまで言えばわかるが、魔力持つものがどれだけ価値があるかわかるだろう。


「俺の魔法道具はな、2属性の力を同時に引き出せる」

「2属性?」

「魔力のように、氷を出したら、あらゆるものに形を変えたりはできない。けど!俺の魔法道具は、炎と氷。など、同時に2つの力を出せる」

「は!?そんなことできるわけないだろ」

「これは俺とあるもう1人のやつと開発した技術でな。見てみろ」


 するとスコールは1本の剣を取り出し、荷台後ろの木製のドアを開ける。

 剣を外に向け、魔汝を込めると。剣からは、半分氷で、半分炎が湧いて出てきた。


「魔力保持者は、1つの属性を自由に使えるが。俺はできることは限られても、2つの属性を同時に使用できる」

「……すごい」

「まぁでもこの技術は武器にしか使ってないけどな。他の普段の性格で使える魔法道具は、そこら辺にあるのと変わらん。性質はいいけどな」


「ねぇ。もっと俺に色んな魔法道具見せてよ!」

「ああ!いいぞ!」


 嫌々この馬車にライトを入れたスコールだが。スコールは元々ライトのように、世界で活躍するような魔道剣士になるのが夢で、昔から魔法道具や魔力。また冒険の話などが大好きだった。

 ライトを見ていると、昔の自分を思い出してほっとけなくなる。

 いや、その前に。魔法道具に目を輝かせている少年と自分の気が合うからつい楽しくなっているだけかもしれない。


 楽しくライトに説明していると、急に馬車が止まる。荷台の中でも汗が頬を流れるくらい暑い中、余裕だと思っていた水の量は2人分必要になったため、次の街までにギリギリの状態だ。それに砂漠の中でも、特に今日は暑い。

 ここでの時間のロスはできるだけ、避けたいところだが。何が起こったんだろう。


「どうしたんだアグー!」

「よくわからんが、囲まれた!」


 囲まれた?砂漠で集団で獲物を狩る生き物は、巨大サソリくらいだ。なんだ、それくらいぶっ飛ばしてあいつらなら抜けれる。


「アグー!突っ込めばいいぞ!」

「いや、外みてみろ!」

「あ?一体なんなんだ」


 荷台の後ろへ歩き、木製のドアを乾いた音を出しながら、ゆっくりと開ける。

 光が射し込み、その先にスコールが見た光景は、何かに怒っているように眉間にシワを寄せている、髭面の大人数のじじい達。

 馬にまたがり、武器を手に持って、俺達の馬車を囲んでいる。その姿はまさに、誰もが想像できる盗賊そのものだ。


「アイフェンさん、どうしました?」


 後ろからライトも出てきて、顔を出す。


「こいつだぁぁぁああああああ!!!!」


 急に盗賊が叫び出す。


「うお、やばい。こいつらです、俺を捕まえてた盗賊は」


 ライトはびびり、荷台の中に隠れる。


「おい、お前!その少年の仲間か?」

「ちげぇよ。俺はこいつに大事な商品を台無しにされたからな。ここで無料で働かせてるんだよ」

「お前も被害者か」

「お前らは違うだろ。盗賊なんだ、お前らは被害受けても自業自得だ」

「あぁ?こっちも盗賊って仕事なんだ、獲物に逃げられると困るんだよな。せっかく臓器を手に入れて大金をもらうつもりだったのに」


 こいつら、タチの悪い盗賊だな。変なバイヤーとかと繋がってやがる。こんな乾燥する場所で、臓器目当てで盗賊なんて、後ろ盾ないとできない。こいつら、有名な盗賊らしいな。


「お前ら盗賊の名は?」

「盗賊黒狼(こくろう)だ。聞いたことあるだろ」


 確か、英雄の魔神討伐後にできた盗賊だよな。だが、強い権力を持ったバイヤーと繋がれるほど、有名でそこまで力があったか?


「あのさ、俺は早く次の街に進みたいわけよ。あの少年出せば、俺は見逃してもらえるか?」

「お前、俺達舐めすぎだろ。商人なんて、かっこうの獲物だ。お前も、その商品も盗ませてもらう」


 やっぱこうなるか。めんどくさいことになった。


「おいライト」


 と呼び。ライトを掴む。そして、そのまま盗賊達の前に放り投げる!


「え?アイフェンさん!なにするんですか!!」

「準備する、少しでいい時間を稼げよ」

「嫌ですよ!なんで俺なんですか!」

「元はお前のせいだろ」


 そう言い残し、荷台の奥へ行く。


 放り出されたライトは、ゆっくりと立ち上がる。


「おい小僧、久しぶりだな。じゃあまた俺らに捕まってくれ。無駄な抵抗しないほうが身のためだぞ」

「どっちみち、死ぬんだろ?」

「ガハハ!そうだよ、ただここで死んで骨になるか、アジトで新鮮に殺され、臓器になり誰かの役に立つか。どっちがいい?」

「はぁ。俺には夢がある、誰にもその邪魔はさせねぇし、どんな高い壁でも邪魔にはならない。お前らみたいな、低い壁眼中にねぇよ!やってやる!」


 そう叫ぶと、ライトは右腕を横に突き出す。

 ライトの魔汝が高まり、何も無いところから、右手の手のひらに青緑の、ミスリルのような剣が出現する。

 そう、ライトは魔力保持者だ。だから、この旅も武器を用意してこなかった。


「お前、魔力保持者だったのか。なら臓器よりも、お前を奴隷として売った方が高くつくな」

「おい皆!今日は金が儲かるぞ!武器をかかげろ!さぁ、戦えぇ!!」


 すると馬に乗った盗賊達が、ライトの元を殺しにかかる。

 が、やられたのはライトではなく、襲いかかった盗賊達だ。と言ってもやられたのは2人だけ。

 だが、2人がやられたことにより、動揺が生まれ、盗賊の足が止まり、距離を置く。


「何をした?」

「俺の魔力を舐めすぎだ。俺の魔力は武器を創るだけじゃない。武器に魔汝を込めることにより、見えない剣線が剣から伸びる。要するに、剣のリーチが伸びるんだよ、しかも伸びる分は不可視だ」

「なるほど。面白い魔力だ。じゃあお前に提案がある」


 急な盗賊の態度の変化に驚き、つい、盗賊の話に耳を傾ける。


「お前の相手は俺1人でしてやる。お前が俺に勝てば見逃してやる。ただしお前が負けたその時は、無駄な抵抗せず奴隷となれ」

「誰が、そんなのに賛成する……」

「いいじゃねぇか。その話乗った!」


 荷台の奥から出てきたスコールがそう言う。


「お前はよくわかってるな」

「どうせ、お前は魔力保持者だろ?ここで暴れられて、馬車に被害があると困るからな、お前らは向こうで戦ってくれないか?」

「……いいだろう。ただし残りの俺らの仲間はここに置いていく。一応言っとくが俺以外にも、魔力保持者はいるぞ、無駄な抵抗はよせ」

「舐めんな、そんくらいわかってる」


 1人の盗賊は場所は離れていった。充分に距離を取ると、ライトにお前も来いと、無言の目つきで訴える。


「なんでこんなことに賛成したんだよ」

「お前がやられたら、お前がいない分、水も食糧ももつし。お前が買っても、ここを抜けれるし、俺はどっちに転んでもよかったからな」

「何言ってんの。俺が負けても勝っても、馬車はきっとやられるよ!」

「はぁ。お前な俺の職業忘れたか?」

「商人だろ?わかってるよ!」

「ちげぇよ。英雄商人だ、英雄のために商人してるんだぞ。弱くて務まるか。こっちの心配はいい、早く行け」

「くそ、やるしかないんだ。一か八か本気でやってやる」


 諦めて、ライトは敵の方へ歩き出す。


「ライト、相手の話に乗ったもう一つの理由は、俺と一緒に仕事をするんだったら、あいつくらい倒せないとやっていけないからだ。あと、お前のその魔力はなかなかいいもんだ大切しろよ。お前の魔力ならあんな奴倒せると俺は期待してる」

「……!!あぁ、そうだよな。これくらいやれずに、王国騎士にはなれねぇよな」


 ライトは、相手の方へ向かった。

 スコールは、右手に剣。左手に銃を持っている。


「さて。残りのお前らだが。どうやって、やられたい?」


 ライトが少し笑う。

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