第0話 (編集予定なのでとりあえず飛ばしてください)
第0話
「はぁはぁ。ちょ、ちょっと待ってください!」
暗い部屋の中。ある男の子は、髭を生やし、剣を握りしめている盗賊に襲われている。
基本的な狙いは金目の物だが、人の命も躊躇せず殺す。それが盗賊。
暑い日差しの中、砂漠に来てしまったのが運の尽きだ。なんで砂漠に来ようなど思ったのか、覚えてなどいない。ただ、思っていたよりも暑く、持ってきた水が尽きてしまったため、休みたかっただけだ。周りを探すと、岩に囲まれたドーム状の場所があり、休めると思い入ったのが、まさか盗賊のアジトだとは。
確かに砂漠にあの造りは不自然だっが、人間いざとなるとそんな思考など沸かない。
部屋に使われている岩の冷たさなど、もう感じないぐらいに、冷や汗をかき、身体が冷えてしまっている。
「待てるかよ!」
「さぁ、お前の持っている物全て差し出せ!!」
まずい。
持ち物など、何も無い。
食料や水は尽き、普通砂漠に来るときに必要な武器も、ある理由から持ち合わせていない。
どうしようと、短い時間に思考をかけめぐらせる。
「す、すみません。持ち物はもう全て無いんです」
出した答えは正直に話すこと。
「あ?まじかよ。おいどうする?」
「簡単だろ。一番高く売れるもんがあるだろ。臓器売れば良いんだよ」
はぁ!?
「ちょ。それはやめてください!!」
「おい、腐らせないための氷あるか?」
「俺の魔力で氷は作れる」
「よし」
男の子の話は完全に無視される。
冷や汗がさらに出てくる。緊張からか喉の乾きなど忘れてしまっている。
精神は限界まで来ていた。
「じゃあとりあえず、服を脱げ」
できるだけ時間を稼ごうと、服をゆっくりと脱ぐ。脱がないような素振りを見せたら殺されるから、ほんとにゆっくりと。
さっきの盗賊の会話から魔力を使える者がいる。多分まだ数人いるだろう。予想通りだ。盗賊や海賊など悪事を働くには力がいる。ほとんどが魔力持ちだ。
まぁ、予想通りだからといって何もできないが。
「早く脱げぇ!!」
体が反射でビクッと震える。
少しだけ、脱ぐのを早める。
相手に魔力保持者がいないなら、いや1人までなら何とかなるが、複数人いるとなるとキツい。自分が弱いとは正直思ってないが、この人数には勝てないくらいわかる。おそらく30人はいるのではないか。
「お願いします。命だけは!!」
盗賊達の有無を言わさぬ視線に、身体はさらに冷えるように感じた。
こういう時、誰かが助けてくれるものだ。過去に命の危機があったが、あの時は英雄達が助けてくれた。
こうなったら何にすがっても生き延びてやる。
ローブの上に羽織っていた服を脱ぎ、さらにローブも脱ぐ。
服はもう、上と下1枚ずつしか無い。もちろんパンツは履いているが。上は二の腕の真ん中あたりまでしか袖の無く、裾が腰までの、布の青い服。
下は白い布でできた、膝下までしかないもの。また、少し大きく、横にダボダボになっている。風が吹くと、靡くものだ。
くそ、寒いな。
「おい、早く脱がないと殺すぞ」
「結局後で死ぬけどな」
「ガハハハハハ。そりゃそうだ」
殺すぞ、と脅してきた髭面のおじさんが、剣を自分の首に持ってくる。
死ぬ!
そう思っていた瞬間。髪が靡くと同時に、横に影が走ってきた。
助けが来た。そう思った。
「な。なんだ!?」
その正体は、黒い鷲だった。
「え。。助けは?」
助けがきた。そう思っていた。絶望感は拭いきれない。
だが一瞬驚いただけで、冷静に周りを見る。鷲のおかげでできた少しの隙を見て、剣を奪い逃げ出す。
「しまった!追えー!!頭領に怒られるぞ!!」
「おう!」
やった。やった。やった。
「出口は、ここを右だったかな」
剣が重い。走ると乾いた鉄の音が響いてしまう。
そう思い剣を左の道へ投げ捨てる。こうすれば盗賊達は左の道へ行くだろう。盗賊は力はあれど、知恵は無いからな。
「あれは!出口だ!!」
暗く岩に囲まれた一箇所から、暑そうな光が差し込んできている。
そうだ!俺はこんなところに居る訳にはいかないんだ。俺にはなりたいものがある。
よし……やっと逃げれた。はぁはぁ、息が切れる。
とりあえず、何のあてもなく必死に盗賊のアジトから離れて行った。
その後。砂漠の真ん中にポツンとある馬車の荷台へと、意識が朦朧とした中、倒れるように入っていった。
誰の馬車なのかもわからない。ただ、この身勝手な行動がこの男の運命を変える。