八話
小説は漫画を描けない人が書くものとか言っている輩は水球は水泳が出来ない人がやるスポーツって言い換えてみろ
チタンが秘密警察『B3』の補欠として入隊が決まった日(まだ手続きなど手順は残っているが)。自己紹介も終えて次に何をしたらいいのか考えた結果まずチタンに必要な事を叩きこむ以前に山賊時代の名残を取り払おうというランの意見に満場一致で帝国の紹介も兼ねて忙しいニシキを残して他のメンバーと少し出かける事になった。フィアーが『新人に色々教育してきます』と軽くメモを残して出発する。
『B3』の詰所があるのは青の帝国の中でも下町の部類で元は古い洋館を移築したものらしいがドグマ一人が規格外に高身長と言う理由で大幅な改装が施されたと言う。帝国は東西一万キロ、南北四千キロの国土面積を誇り他国との国境を余すところなく砦が築かれており各地の街道に通ずる関所は五百を超える。南東には橙連邦、紫国、黄国に繋がる三大海洋の桃海を捉える。かつては全世界を領土にした青の帝国だが領土を減らしても力は健在だった、と言うところだろう。チタンたちは詰所のある南地区から都市部で頭上には皇居を見上げる中央区に来ていた。
「噂には聞いていましたがやっぱ凄い所ですね、帝国って」
凄まじいとも言える青の帝国の繁栄ぶりを直にみたチタンは率直な感想を述べる。やはり、と言うべきか他の隊員は慣れた様子で我が物顔で街道を歩く姿にチタンは素直に憧れた。
「まぁ千年も続いてりゃあ色々出来るよな」
下手をすればそこら辺の建物と肩を並べて歩けるドグマが答える、その右手にはしっかりチープの左手が握られていた。ただこの場合ドグマの股下とチープの身長が殆ど均衡しているので何処となく手を繋いでいると言うよりもチープがドグマの手にぶら下がっていると見間違える。
「まぁ出かけたはイイけどよ、どこ向かってんだよラン」
「ついてのお楽しみぃ~」
フィアーの問いをあっけらかんと一蹴するランの蟲惑的な仕草を見るや否やフィアーはチタンに絡んで行って来る。
「おい、新人。ちゃんと覚えとけよ副隊長にたいしてあんな不遜極まりない態度の狙撃手がランだ」
「はぁ―――」
「フィアー、お前のその根暗な偏見を後輩に植え付けるんじゃあない」
「はあ? フール手前ぇ偏見も何も事実じゃねぇか」
至って短い時間の話ではあるがチタンは他の隊員の言動を出来るだけ観察した結果、どうやら副隊長のフィアーと戦闘員のフールは普段からこんな子供の口げんか染みたやり取りをしているらしい。単純にどちらの方が強いのか純然たる興味が沸いて仕方ない、体格や身長ではフィアーが勝るが簡単な力比べならフールが勝つのでは―――そんな類の妄想に勤しみながら歩いているうちに目的地に着く。
「到着ぅ」
「此処って・・・」
一行が立ち止まったのは黒い瀟洒な装飾の服屋だった、ランが嬉々とした顔で言う。
「いやぁー折角軍人になる訳だし? 何時までもボロボロな服着てるわけにはいかないでしょ?」
言われてみてチタンはハッとする、今自分の纏っている私服は何時だったか襲った隊商からせしめた品の内の一つでかれこれ3年は愛用しているものだった。紺色の繊維質のオールシーズン履く事の出来るズボンに革のショートブーツ、上半身は特筆する部分のない灰色のシャツ。捻っている要素は皆無だが大事に着てきたつもりの衣服は所々で破けた痕や継ぎ接ぎが目立っていた、調度昨日の戦闘でも新たに傷を付けたばかりだあった。
「先輩として、まぁお祝い? かな? 私直々にコーディネートしてあげましょう」
「いやっ自分こーいうオシャレな場所苦手って言うか・・・!」
「先輩権限~付いて来なさい」
そう言ってランはチタンの手を取りズカズカと店に入る、不意に柔らかい異性の感触に包まれたチタンの右手はそこを中心に熱気を帯びてゆく。鏡を見るまでもなく自分の顔は今紅潮しているのだろう。その光景を微笑ましげに見つつも残りも入店する。口げんかにひと段落ついたらしいフールとフィアーがランとチタンを見てポロリと呟いた。
「魔性だよな、ランの奴。アレで処女なんだから笑わせやがる」
「そう言うお前は―――」
「うるせぇ、だから経験済みだコラ」
「嘘臭いぞ副隊長」
「やっぱ此処で決着付けてやる、面出やがれ」
「ふっ、望むところだ」
その後しばらく二人の姿を見た隊員はいない。
「あらっランさん、皆さんといらしていましたの?」
「あっ店長さん。久しぶりの休日なんです」
「大変なんでしょう? 警察のお仕事」
「いや大変なのが普通ですから」
何気ない世間話を聞いてチーム名が秘密警察と銘打たれている割に存在が全然秘密じゃねぇなとチタンは心の中で突っ込む。後ろに一歩引いていたチタンの存在に店長は気付く。
「ランさん、年下の彼氏出来たんですか?」
「いや、新しい後輩でーす」
ランはチタンの腕に絡み付いてピースサインをしながら言う。身長差的にチタンの肩、三角筋の中部にランの胸が当たっており思わず焦る。対向にいる見て直ぐ分かる我がままボディの店長と比較したら決して大きくはないが調度良いと言えるくらいの大きさと弾力だった。
「それじゃあその後輩君の服をお求めってことで?」
「そうですねー動きやすさとかは重視したいところですがやっぱり―――」
そこから先の会話は理解不能だった、恐らくちゃんと流行や専門的な用語を勉強していれば理解できただろうが文明と隔絶された生活を送っていたチタンにとっては何処から来た外国人の会話を聞いている気分だった。会話に入れずに棒立ちになっているとドグマが話しかけてきた。
「凄いよな女って」
「あ、ドグマ先輩」
なんか縮んだなと思っていると膝からしゃがんでいるだけだった(それでもチタンより大きいが)。
「俺さ一応彼女持ちの男としてそれなりに女の生態には詳しいつもりだけど未知数な部分が殆どなんだよなぁー。やたら滅多服持ってるくせに一週間着る服が無いとか騒いだり、髪切って全く変化なしだったり」
「俺、思春期に突入する前に異性との交流が断絶されたんで・・・」
「そうか、じゃあ後学の為に覚えとくんだ。軍人だろうと、一般人だろうと、貴族だろうと、女は面倒くさい」
「チープ先輩もですか?」
「まぁ、可愛いから何とも思わん」
爆ぜろ、とは言えなかった。
「お前さん、見るからに異性との交流が皆無って面だったぜ? さっき」
「いや・・・何と言うのか・・・」
「お前、、学校とかで一人で大人しくしている時に話しかけてきた女子の事好きになっちゃうタイプだろ?」
「俺十歳から学校行ってないです」
「ハハっ! 俺もだ!」
「アレ? そーいえばチープ先輩と一緒だったんじゃないんですか?」
ふとした疑問と違和感を投げかけてみた。
「あー、疲れたから休んでると。アイツ食べない上にあんまり運動しないもんな―――」
先ほどからドグマの真珠色の長髪が肩を組んだ時からくすぐったいが、何故か洋服を店長と選んでいるランの姿を見ていると痒みも気にならなくなるチタンだった。
秘密警察『B3』戦闘員・ドグマ(推定18)
(VC・木村良平)
274センチメートル(まだ伸びている)
350キログラム(減量してこの数字)
B型
特技・料理(教えるのも上手)
趣味・ボトルシップ
嫌いなモノ・ガラスを引っ掻いたような音
武器名『峻龍』
・青の帝国の士官学校に通っていた訳では無く帝国領外の他国に通ずる山脈で暮らしていたところをどういう経緯か不明だがスカウトされていた。スカウトされていた時期はフールやラン達よりも早くフィアーと共に結成を待っていたらしく暫く青の帝国でフィアーとマッタリ過ごしていた。本人は山に捨てられた子供と言う事にしているが実際は中東地域で絶大な権力と広大な領地を誇る山岳民族の一族の跡取りだったが青の帝国の同化政策に反発して戦争になると家族と記憶を失い山で生きる事になるのは作者のみがしる事実である。山育ちで都会の常識に疎かったのでチタンの心境を察している。婚約者と出会って野性味溢れるワイルドな性格が柔和な飄々とした性格に豹変した。単純な腕力では作中で一番強い。愛刀の峻龍は全長190センチの大太刀。
秘密警察『B3』科学者、技術後援・チープ(20)
(VC・明坂聡美)
188センチ
66キログラム
A型
特技・武器の設計、毒ガスの作成
嫌いなモノ・意識高い系の大学生
武器名『毒霧』
AAカップ
・帝国の中でも貧しい地域の出身で家も借金漬けだったが幼いころから周囲の嫌がらせも介さずに勉学に励む少女だった。得待生として士官学校の理数系に進学してテストの合計点が五教科で入学してからずっと満点だった偉業を成し遂げるばかりか学生時代から軍の最新兵器を開発すると言う天才ぶりをニシキが見逃すはずもなくスカウトされて契約金で実家は借金から解放された。平日休日ともになにか怪しげな実験に費やしており平常からガスマスクをしている。周囲からは人間に興味が無いと思われているが実際は幼いころから友人がおらず他人との接し方が分からないだけらしいが同僚の協力でちゃんとしたコミュニケーション能力を手に入れた。婚約者の事を溺愛しており隙があれば抱きつく。戦闘には殆ど参加しないが武器は火炎放射機を改造した毒ガス散布機能が付いた『毒霧』。ランと一緒にお風呂に入る度に自分の胸に落ち込んでいる。カレーは混ぜて食べるタイプ
もし俺が小説に愛されたならそれだけでリッチな毎日