七話
「何故貧困がなくならないのか」という問いに対する完璧な答えは「お前みたいな考えますアピールのヤカマシイ輩が何一つ行動を起こさずのさばっているから、本当に考えて行動している人の邪魔になっているから」だと思う
入隊が決まるや否や忙しい一日はその日の内に始まった。食事の後にチタンの入隊手続き諸々が待ち構えているらしいが俺がやっておくからとニシキは副隊長のフィアーを無理やり手伝わせて部屋に閉じこもった。取り残された者でとりあえず自己紹介的な流れになった。
「じゃあチタン、一人ずつ言っていくから覚えてね」
「はい」
ランは大きく息を吸って早口言葉風に言った。
「まず一番巨大のが戦闘員兼食事係のドグマ、趣味と特技は料理で教えるのも上手いよ。そしてその右隣のが科学者で技術後援担当のチープ、武器のメンテナンスとかしてくれてドグマの婚約者で食事とお風呂の時間以外は殆どガスマスクしていて特技が武器の設計だから特徴があるね、そしてフールは知っているよね。戦闘員で握力が233キロの超人で趣味は意外にも読書、そんでもって最後に私が狙撃手のラン、特技はトランプタワーを作る事ね」
一息に言われ名前位しか頭に入ってこなかったが分かりましたとは言っておいた。
「んじゃあチタンも宜しく」
「えっ・・・」
突然ぶっきらぼうに自己紹介を振られてたじろいたが思い切ってやってみた。
「チタンです、今日から宜しくお願いします・・・」
「単純だな、おい」
ドグマのツッコミに自分のコミュニケーション力のなさを痛感したが言葉は浮いてこなかった。そこでランの機転を利かせた発言をした。
「じゃあ質問とかある?」
鶴の一声、とまではいかないが少なくともチタンに有利に空気が変わった。
「それじゃあドグマさん」
「応よ、二メートル七十四センチの三百五十キログラムだ」
「え。なんで質問が・・・」
「いやぁー俺初対面の人間は大抵この質問されるからさ」
ドグマは笑いながら頭を掻く。その座高は少なく見積もってもフールの身長と大差ないように見えた。続けて質問する。
「えっと・・・さっきの料理、物凄く美味しかったです。何処で習ったのですか?」
「独学かな?」
「ドグマはアンタと同じ山育ちだから」
と、割り込む様にチープがドグマの腕に纏わりつく。婚約者と言うよりかは高校生カップルと言った方がしっくりくる。
「チープ、くすぐったい」
ドグマがそう言ってもチープは橙色の頭髪を押し付けるのを止めなかった。精悍な顔立ちにスラリと長い手足にフールと大差ない長身で初めて見かけた時チタンンは『B3』に女性はランしかいないのだなと思っていた。このチープと言う女性科学者は中性的な顔立ちで背もチタンよりも遥かにに高く髪の毛の長さから言っても女性的な要素が余り見受けられなかった、特に胸が。多分鍛えられた自分の胸囲の方が数字的には大きいと思われる。
「ドグマさんって山育ちなんですか?」
「あぁ、うん。そーだよ」
ドグマはチープの頭を撫でながらあっけらかんと答えた、その光景は主人と戯れる犬の様だった。何処か羨望の気持ちが芽生えているのは男子として当たり前だし気のせいだと思いたいチタンだった。
「・・・」
正直な話抱いていた疑問は大方解決されたのでチタンの言葉と思考は消失した。
「じゃあ今度は私がチタンに質問しまーす」
ランが言う。
「好きな食べ物は何ですかー?」
「柑橘系です」
「もっと具体的に言えよ」
とフールが。
「檸檬です」
「おぉ渋いな」
元々他人と話す事が苦手だったチタンにとって知り合って間もない他人に囲まれるのは苦難以外何物でもなかったが僥倖にも質問が思いついた。
「ニシキ隊長ってどのような方なんですか?」
「そうきたか」
とドグマが。
「まぁ部下と同じ目線に立ってくれる上司じゃない? 作ってくれるご飯美味しいし」
「それお父さんだろラン」
ランとフールの妙に漫才染みたやり取りをよそにドグマが言う。
「良い上司ってのはそうだけど、強いよな俺等の何倍も」
その言葉にチタン以外全員が一様に頷いて見せる。
「そんなに、ですか。フールさん」
「あぁ、俺なんか足元にも及ばないくらいに」
自分を半殺しにしたフールが一言も反論せずにニシキの実力を認めた事にチタンは驚きを隠さなかった。つぎにドグマが言う。
「一回俺と何回腕立て伏せ出来るか勝負して俺は四千回位で落ちたケド隊長が七千と何百回かで勝ったもんなー」
「・・・」
絶句するしかなかった。十五年しか生きていないが腕立て伏せを七千回もした人の話なんか聞いたことが無い。とりあえずこの話一つでニシキと言う男が怪物である事が十分に伝わった。
「フールは握力推定233キロだけど隊長は推定500キロ超だもんねぇ」
「・・・・・・」
某格闘漫画ではないがニシキと言う男が全力の十分の一も出さずに自分は殺されるのだなとチタンは悟って、あの洞窟で戦ったのがフールで良かったと安堵の気持ちが沸き上がる。そんな風に話が中々盛り上がってきたタイミングで手続きから解放されたらしきフィアーが戻って来た。
「ん? なんだ新人の自己紹介中か?」
「あっ、ごめん。フィアーの事紹介するの忘れてた」
ランがテヘへとアザとく笑う。フールも便乗する。
「確かに、俺も副隊長の存在忘れてた」
「てめぇ・・・」
ランではなくフールに絡むあたり普段からこの二人はこんなやり取りをしているのだろうなとチタンは悟った。話した回数は食事の前に指示を仰いだくらいだが殆ど印象に残っていたので観察してみた。顔の三分の一は目深にかぶったバンダナで隠れておりフールとは対照的に徹底的に絞られた筋肉をしている。切れ長な目に191センチの長身が刃物のような物々しい雰囲気の手助けをしていた。
「おう新人、俺が副隊長のフィアーだ宜しく」
「お、お願いします」
と、差し出された手を握り返した。改めて自分はとんでもない集団の中にいるのだなと改めて実感した。
秘密警察『B3』戦闘員・フール(19)
(VC・中村悠一)
185.7センチ
119キログラム
A型
趣味・読書、鍛錬
嫌いなモノ・得になし
武器名『断海崩山号』
・元々は帝国貴族だったが幼い頃は内向的な性格で両親は社交的な妹の方を可愛がっていた。
差別されながら育った故に誰に対しても(フィアーを除いて)優しく接するので部署を超えて人徳がある。
10歳の時家門が没落してしまい妹と共に路頭に迷いストリートチルドレンになる、体中の傷はストリートチルドレン時代の物。13歳で親戚に保護されるまで妹を守る為に体と格闘術を鍛え続けていたらスラム街の頂点に立っていた。保護してくれた親戚が軍人家系だったので士官学校に入学して成績優秀だったのでラン、チープとともにニシキにスカウトされる。妹とは手紙でしか話せていないので有給休暇をチーム内で一番使用している男。腹筋の数は八個、よくフィアーとの絡みがある。
秘密警察『B3』狙撃手・ラン(19)
(VC・早見沙織)
172センチ(周りには167センチと言っている)
68キログラム
AB型
特技・トランプタワーを作る事、射撃、
嫌いなモノ・大した知識も経験なく二丁拳銃に憧れている無知な輩
好きな男性のタイプ・優しくて誠実な人(イケメンと金持ちならこの限りでない)
Cカップ
・青の帝国と同盟国である北方連邦の中でも中東との国境近くの地域の名家の出身。軍人だった父親が幼い頃に殉職しており現在のいる父と姉と弟とは血縁が無いが仲良くしている。母親が医者で医学系の学校に進学させられそうになって帝国に留学したいと願い出て地元の士官学校から推薦を受けて帝国の士官学校で優秀な成績を収めてニシキにスカウトされる。姉は高官の帝国軍人でちょくちょく会っていおり、弟はまだ高校生で医者になる道を無理やり押し付けた。幼いころから『普通の女の子』に憧れていて地元の友達のグループ内では一番背が高くコンプレックスを持っていたが平均身長が194.24センチのチーム内ではチタンに次いで小さいので妙な安心感を覚えている。
原作読んでないくせにアニメ化してから飛びついて五月蠅く騒ぐ輩は見ず知らずの他人の吐瀉物のグルメリポートでもしてろ