終話 嘘つき
一から十まで語ってしまえば一体どれほどかかってしまうのであろうか。それほどにもこの物語は長い長いものなのだ。
最初にかいつまんで言ってしまえば、これは生まれた時から嘘に翻弄され嘘に騙され嘘をつかれ嘘をつき嘘に生きてきた、偽りの王女の物語。誰も愛することの出来なかった、一人の女の物語。背負った全ての兵士を捨てた、美しき女隊長の物語。
さてお気づきの方も多いであろう、何を隠そうこれは私自身の物語なのだ。シル・フィオラティス、それが私の名前らしい。
らしい、というと私が自分自身をその者として認識していないように思われる。いや、大方間違っていない。ここに来るまでの記憶はない。いや、正確にはここに至るまでの経緯はしっかりと理解しているつもりだ。安心してほしい、物語を語る程の記憶と気力は残っている。
さて、随分と前置きが長くなってしまった。ここまで聞いてくれていた者に感謝する。だがしかし、物語を聞く前に一つだけ理解しておいてほしいことがある。
私の口から語られるのは、あくまで私を中心に事実を考察したものであり、真実とは限らない。そう判断をせざるを得ないほどに、私は嘘とともに生きてきた。何が真実なのか生まれた時からもわからなかったのだから。
では、話を始めようとするか。リグレシア大陸を支配したレールド王国の物語。