第2章 宇宙船での生活ー①
サリナにもらった鍵の部屋はビジネスホテルのように、くつろげるような作りになっていた。というより、汗を流したらさっさと寝るための部屋だった。部屋に入ってすぐ右には風呂とトイレが別々についていて、自室と同じくらいの部屋は人1人が不自由なく通れるだけの幅と、壁に接して設置された勉強机以外のスペースを、2人くらいはのびのびと寝られるくらいのベッドが占めていた。ビジネスホテルと違うところはテレビが無いことだ。
智也は床に荷物をおろし、机に向かった。サリナの話だと、この上に今後の予定やら何やらが書かれた紙があるらしいからだ。
見ると確かに、そこには1枚の紙があった。A4サイズのプリント。そのプリントは両面印刷で、表には1日の日程が書かれていた。
その日程を見て、智也は「ふう」とため息をついた。
「起床は8時ね」
いつもよりも遅い起床時間。今日は長く車に乗っていたので、途中寝ていたとはいえ疲れていたので、ゆっくり寝られることにまず安心した。
次いで、徐々に下に目を通していく。日程は箇条書きで書かれていた。
・8時30分から朝食
・9時から12時まで訓練
・12時から13時30分まで昼食・休憩
・13時30分から18時まで訓練
・19時から20時30分まで夕食
・早めに寝るように。
ここまで読んで、智也は不思議に思った。
(訓練ってなんだ?)
日程を見る限り、ほぼ学校で授業がある日と大して変わらないが、その授業にあたる時間がすべて『訓練』に費やされることに智也は疑問を抱いた。
何の訓練なのか書かれていない。
(まあいいか、明日になりゃ分かる)
考えても仕方ないので、そのように切り替えて、再び読み進める。あとはサリナの携帯番号と部屋、食堂の場所、運動場の場所が書いてあった。
(なぜに運動場?)
またしても謎のワードが。
(訓練と関係あるのか?)
1度は考えるのを放棄した問題がよみがえる。しかしまた考えるのを諦めた。仕方のないことだからだ。
裏に目をやると、この建物の見取り図とパルメルでの生活が少し書いてあった。
見取り図を見ると、1階は智也たちが泊まる個室。30部屋もあるらしい。ちなみにサリナの部屋は111号室。
2階には食堂と食糧庫、自家発電機など。食堂以外は智也たちには関係ない。
3階は例の運動場が2つと管理室、倉庫が1部屋ずつ。運動場は大と小があるようで、天井がかなり高くなっていることが見取り図から分かる。見たところ、この宇宙船があんなに背が高かったのはこの運動場のせいのようだ。
最上階は4階で、この宇宙船の制御室になっていて、立ち入り禁止。
以上が見取り図である。
「運動場ってのがな……」
学校の体育館くらいの高さか、それ以上か。だが、そんなことよりも、智也は何の目的でこんな設備があるのか気になった。
こうも何度も見せられたら、めんどくさがりやの智也でも動こうとはするが、その前にちゃんとプリントを読み切ることにした。
だが、聞きに行く必要はなかった。答えは最後の、『パルメルでの生活』と書かれた項目に書いてあった。
『現在パルメルでは深刻な兵士不足に陥っています。あなた方は現地民と2人1組となって1年間パルメル中を駆け回り、怪獣・猛獣たちを駆除、あわよくば根絶していただきます。宇宙船での約1週間の訓練で習得した戦い方を存分に用いて、安全に駆除をお願いします。ご活躍、期待しております』
ニート同然だった主人公が鍛えられます。