ヒカリに伝える葵の想い
「光凪……
ヒカリを……頼むぜ……」
侖はヒカリを葵に託す事を決意した、そして葵はそれに答えるように
「うん。」
頷いた、それを見て侖はふっと微笑み、安心した笑顔をヒカリと葵に向けて、その場に倒れ込んだ。
「侖君!!」
ヒカリは侖の名前を叫んだが最早返事など無かった、彼は結界の効力で、自分の魂が抜かれたのである。
ヒカリは涙を流して侖の体を見つめていたが、侖は反応を見せなかった。
「茅場……」
葵は何も言えず、ただ沈黙するだけ、この場は静寂に包まれ、ただヒカリの涙が侖を追悼するのだ、そしてヒカリは葵の方を見た。
「どうして……
侖君が……こんな事に……ならなきゃいけないの?
理不尽過ぎるよ……神様は葵君と侖君が両方居てはいけないって言うの……?」
ヒカリが涙ながらに、葵に向けて言っていた、そんな事をしても無駄だと言うのはヒカリ自身一番良く知っていたのに、それでも葵に言っていた。
そんなヒカリに葵は
「それは違うよ。」
力強く、ヒカリに言う、これも悲しみからヒカリをたちなおさせる為かどうかは不明として、そして葵は続ける。
「少なくとも茅場侖の存在は、――ヒカリちゃん、君の心に写り続けるさ。
君は茅場の事が好きなんだよね?
ねえ、答えられるなら……答えて」
葵がヒカリに向けて更に言う
「うん。」
ヒカリは素直に頷いた、そして葵は
「なら、それを踏まえた上で、僕は君に伝えたい。
ヒカリちゃん……」
突然葵はあらたまった表情でヒカリを見つめて
「好きだよ……」
顔を赤くしつつヒカリに自分の想いを、伝えた、その姿を見てヒカリは
「葵……君……?」
自分の本当の想いに気が付いた、そう、彼女は葵の事が好きなのだ、外見は幼さを残した感じで可愛くて、難しそうな事を言って突き放してた事もあったけど実は寂しがりな光凪葵の事が、ヒカリは好きなのだ。
だが、彼女は直ぐに答えられなかった、二人きりになって、想いを伝えられた故の迷いである。
自分の想いに素直に慣れないのだ。
そんなヒカリを葵は抱き締め
「僕は……君に出会うまで……ずっと寂しかった……
――君にカレーをおごったあの時……僕にとって全てが嫌だったんだ……でも……君は側に居てくれた……
――だから今度は……僕が君を幸せにする……」
葵はこの体勢で泣いていた、これは自分の想いに素直になった結果に、寂しさから解放された涙であり、葵の闇が払われた瞬間である。
そして、そんな葵を見たヒカリも自らの想いに素直になって
「こんな私で良ければ――宜しくお願いします……」
二人はお互いに愛を確かめ合って、kissをした。
場所……京都……杏里の館
館の前には、ヒカルが居た。
「やっと着いたよ。
葵の奴、ヒカリに想いを伝えられたかな?
(ヒカリが幸せなら……僕は不幸でいい。)」
現在の時刻、午後7時
葵と侖の決着が着いた時間から約1時間である。
彼は千早よりも早く杏里の館に到着したのだ。
西日本総帥、霧生杏里の下に。
千早の命令によれば、先に入っても問題ない、とのこと、なので、直ぐに扉を開く、その瞬間、衝撃的な光景がヒカルの目に写る……
何と、杏里が倒れて来たのだ!
「えっ!?
どうなってるんだ?」
ヒカルは目を疑ったが……更に奥から
「やはり来ると思っていたぞ……星影ヒカル……」
奥から男の人影が現れた、更に男は
「我が名は英二……
付いてくるがいい……」
英二は外見的に大柄で筋肉質、でもって尖った揉み上げと、仮面が特徴的な中年っぽい雰囲気の男だ。
ヒカルは、英二を怪しみつつ今はその提案に従う事にした。
英二が連れていった場所は、館の屋上だ、ここであれば広々としている、とのこと。
「空は雷の降る曇り……
貴様の魂を頂くには絶好の場所だ。
それにここなら亡き妻の魂に近い場所でもある。」
英二の話しに出てきた妻にヒカルは興味を持った。
「妻?」
ヒカルはつい、言葉を漏らした。
「だったら話してやろう、私の妻に訪れた悲劇を……」
英二は淡々と、妻の事を話し始めた。




