勇者99
「ふぅ…こんなもんでいいか。」
右手に携えた剣を振り払い先ほど終えたばかりの戦闘から意識を切り替える青年。
彼の名前はスギヤリ。今年の始めに魔王討伐の任を受けた勇者である。
過去幾度となく魔王討伐を宿願とし旅に出た勇者は居たがいずれも帰ることはなかった。
彼は王にこの任を与えられたとき自分も帰ることが出来ないんだろうと半ば諦めていた。が、
「今までの勇者達はなんでガツガツと先に進んでギリギリの旅をしてたんだろうなぁ」
そう、旅に出る前に渡された今までの勇者の足跡を見て彼はあることに気がついたのだ
「そんなに強い奴を求めてないでここでレベル上げてから旅に出ればいいのに…」
言いながら彼は背後を見る…と
そこには彼が勅命を受けた王のいる都があった。
そう彼は任を受けてから数ヶ月の間旅に出ず、ずっと都の周りでモンスターを狩りレベルを上げていたのだった。
「まぁこことも遂におさらばかぁ〜。」
右手に携えた(銅の)剣を鞘に入れ
「長かったなぁ」
お金ではち切れそうになった袋を担ぎ
「やっとLv99かぁ〜」
感慨深げにそう呟いた。
「それじゃあ王様!行ってきますよ!」
と気分よく旅に出ようとしたが、
「グ、グギギッ!!」
彼の前に先ほどの戦闘で生き延びたモンスターが最後の力を振り絞り立ち向かってきた!
「おぉっとビックリさせるな…よっと!」
そこはLv99の勇者、体当たりしてきたモンスターを難無く袈裟斬りにした。
「まぁもう経験値も入らないし無駄な殺生しちゃったかな」
モンスターが落としたアイテムや金貨を拾いながら自身のステータスが目の端に映る。
EXP.65535→65533
「…あれ?」
経験値が下がったことに理解が追い付かない様子で呆然とする勇者の図が出来上がった。
「も、もしかして…っ!」
自失状態から立ち直りすぐ様浮かんだ疑惑を確かめようと新たなモンスターを探す。
「このっ!!」
「くそっ!」
「どうだっ…」
そして…
EXP.65533→65531→65528→65527
「や、やばい…戦えば戦うほど弱くなってるよ…」
そう、この世界はやり過ぎに寛容ではないのだった。
「魔王までどのぐらいモンスターに遭遇するのか…」
彼の頭の中を歴代勇者達の足跡が過る…
「はぁ…やっぱり世の中そんなに甘くないかぁ」
彼の旅はまだ始まったばかりだった。
テスト投下です。こうやって何かを公開することが初めてなので色々な人に見てもらえて意見もらえたら嬉しいです。
イメージは某有名大作RPGですw