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About a girl 2

 アパートに戻り、溜息をついた。この部屋は8畳のフローリングだったと記憶している。雑誌や弁当の空箱、ペットボトルが散乱し、床が見えないから、確信は持てない。


 まだ学生の時は、一人暮しへの期待と将来への希望を持って入居した、光り輝いていた部屋も、勤め人になってからは荒れだし、無職になってからは性欲と怠惰の巣になった。未来が見えないからだ。


 ああ、面倒な事になってしまった。掃除か、何か月ぶりだろうか。

 まず、掃除機の掃除から始めた。そして、壁一枚外に出せば猥褻物陳列罪で書類送検されそうな危険物の除去に成功し、床一面に散らばる書籍を見栄え良く本棚に並べ、灰皿変わりになっているペットボトルや空き缶を捨て、氷山のようなキッチンの皿を、ジェンガのように崩さないように片付けた。


 なんとか、来客が玄関を開けても、そのまま閉められるような事態にはならない程度の掃除はできただろう。


 自己満足に浸りながら、時計を見る。深夜十二時。


 なんだ、『まだ十二時』じゃないか。


 ゲーム機の電源を入れ、何週目か分からないRPGゲームをニューゲームで始めた。

 ゲームを進めながら、探偵について考える。

 探偵と言えば、殺人事件の推理が醍醐味だよな。ただ、殺人事件が起きれば俺は間違いなく警察に任せる。それが警察の仕事だから。税金で警察を雇っているんだ。わざわざ民間人が推理しなくても良し。無職は税金払ってないだろ、との突っ込みもしなくて良し。そうさ、逮捕権がない探偵が出しゃばった所でなにもいい事などない。それに誰に成功報酬をもらうのであろうか。謎は尽きない。


 探偵について考えることを止め、次にどんな場面が展開されるか分かっているゲームに熱中した。

 一旦ゲームを止めて、遮光性のカーテンを開けると空は薄く明るくなっている。時計を見ると短針は6より2~3メモリ前で止まっていた。


 流石に瞼が重くなってくる。少し仮眠を取ろうか。ベッドに横たわり、小休止を取るため微睡んだ。


 

 一時間ほど眠っただろうか、俺は携帯のバイブの振動音で目を覚ました。着信はメールだったのだろう。すぐに鳴り止んだ。時計に目をやると短針は『2』の文字を指していた。

 窓を見遣るに、お天道様が高々と舞上がっていることから昼の二時であることを確信する。

 寝過ぎてしまった。俺は恐る恐るメールを確認する。誰からのメールか、ほぼ確信しているが、こんな時ばかりは迷惑メールであることを希望する。

 だが、折り畳み式の携帯を開けた瞬間、その希望は打ち砕かれた。



差出人「双島 光希」


題名 「遺書」


本文 「一時間以内に連絡がなければ、死にます」



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