復讐のつがい
「明菜、明男、明日の学校の準備はちゃんとしたの?」
児童養護施設長の聖堂充はかがんだ姿勢で寝室の前で5才になる彼等に問いかける。
おどおどした様子で目の前の聖堂を窺う明菜を横目に「したよ。ちゃんとランドセルに授業分の教科書もノートも入れたよ。明菜もね」と言い切る。
聖堂は自身の短髪の髪に片手を置き、「参っちゃうな。明男は完璧で本当に何も言うことがないよ。明菜と足して2で割ってほしいくらいだよ。たまには僕にも心配させてよ」と不満げに笑う。
明菜は明男の背後に隠れながら「私達、真逆の双子だからね」と呟く。
明男は「おい!明菜!出て来いよ!」と言いながら明菜を自身の横に引き戻す。
親に見放された俺達は毎日を施設で送っていた。
――――こんな日々が永遠に続くと思っていた―――――
やがて俺達は中学1年生になった。
明菜は才女となり、学力は学年1位まで上りつめた。
養護施設で明菜はダイニングテーブルに参考を書広げる明男の隣に座っている。
明菜は参考書を指差し「お兄ちゃん、これはわかる?」と明男を窺うも、明男はとぼけたような声で「全然わからない」と首を振る。
「つくづく俺は体育会系で明菜は文化系なのを感じるよ」
と明男は呟くと優しく笑う明菜。
そんなたわいもない話をしていると施設長の聖堂がやって来る。
聖堂は少し肩を落とし、明男と明菜を窺うような目で見ると「お前たちに大事な話がある」と言って下唇を噛んでいる。
「なに?」と明男が訊き隣で「え?」と驚く明菜。
聖堂は重々しく口を開くと「明菜に養子希望が入った」と言う。
「はぁ!?」と驚き机に両手を置き立ち上がる明男に、「嘘…嘘…」とぶつぶつと言っている明菜。
「正直悪い話じゃない。この施設に居る限り、いくら頭が良くても奨学金が下りないと大学には行けない。だが、養子先は大手IT企業の家庭で頭の良い子を探している。最初は旦那さんの希望で跡取りを考えていたそうだが、一度奥さんが女の子を流産して子供ができなかったそうでね。そんな奥さんの希望で女の子が欲しいそうだ。どうだろう、明菜。ここに行って大学を出てやりたい仕事を見つけられるかもしれないぞ」
施設長の言葉に目を丸くする明菜と息をのむ明男。
明菜は明男を窺いゆっくりと口を開き「でも私と明男はいつも一緒にいたの。どうにか明男も一緒に行けないかな?」と施設長に静かに訴えかける。
「悪いが、希望は一人らしい」と冷たく放つ施設長の一言に「そんな……!」と大粒の涙を流す明菜。
明男はそんな明菜を一瞥して俯き、唇を噛む。
明男は真っ直ぐ前を向くと「俺はいいですよ。明菜にたまに会いに行ければそれでいいです」と言い切る。
「残念な話だが、明菜を希望している一家は隣の県でね。なかなか会えないかもしれないよ」
「そんなの嫌……!」
施設長の話に珍しく声を荒げる明菜。
明男は軽く深呼吸をして自分を落ち着かせ、「俺が高校生になったらバイトをして明菜の家に会いに行きます。なんで明菜は行かせてあげてください」と冷静を装う。
「お兄ちゃん……!」
「わかったよ。来週には出るから準備しておいてね」
施設長はそう言っては立ち去った。
「お兄ちゃん……!どうして!?」
「決まってるだろ?俺はこの性格だから勉強も嫌いだしどんな仕事にだってついてやるさ。でも明菜は頭もいいし、大学とかそういう育ちの良いところにいってそういう奴らばかりいる職場についた方がいいのかもしれないと思って」
明男は精一杯の作り笑顔を明菜に向ける。
そして1週間後の運命の日、明菜はあっけなくこの施設を去ってしまった。
その2年後に俺は生まれながらのこの土地で幸い養子先に拾われた。
養子先は決して裕福ではなく、普通の家庭だった。
中3の俺は施設に度々足を運び、施設長から明菜の養子先の住所を聞き出した。
早くバイトして絶対に明菜に会いに行く!
居候先からもらったお小遣いを貯めて貯めて……それでも明菜に会える額は貯まらなかった。
高校に入った俺はラーメン屋でアルバイトをするようになった。
それからはお金が貯まるまでの半年間、明菜に会えない寂しさは募った。
高校2年間際になり、俺はやっとお金が貯まった。
家から地図を持って駆け出し、駅について地図を広げ電車を乗り継ぎ溜息をつく。
地図を広げて2,30分歩き続けると、やっと地図に書いてある住所に到着した。
2階建ての家の2階の部屋の一角のカーテンに映る女の影を見上げ、明男は恐る恐るインターホンを押す。
「どなたですか?」
女の人の声が聞こえる。
「明菜の双子の兄なんですが、明菜に会わせては頂けないでしょうか?」
「ちょっと待っててね」
明男の声の後に続く女の人の言葉に少し安心し軽い溜息をつく。
一軒家の扉が開き、大きくなった明菜が明男の元に歩いて来る。
「お兄ちゃん!?」
「明菜!!背が伸びたな!」
「それはお兄ちゃんもだよ!」
笑い合う明菜と明男。
それから俺はバイトしてお金を貯め、度々明菜に会いに行くようになった。
俺は高校を卒業し、居候先に住みながらもラーメン屋の正職員になった。
明菜は一人暮らしを始め大学に通い始めた。
本当は明菜の大学の近くに引っ越そうと思ってたのだが、近くの職場の求人にことごとく落ちた。
結局俺は今の働き慣れた場所で社員になり、たまに明菜に会いに行くことにした。
明菜が大学に入ってからは明菜の入っていた演劇サークルでの活動が活発で年に2回位、明菜の家の近くのカフェで会ったり、明菜の家に行って話していた。
明菜は演劇サークルで才能が開花し、1年生から主役に抜擢されてばかりいた。
お互いに近況を話し合ううちに4年もの月日が流れた。
明菜が卒業して1週間後、俺は卒業祝いを持って一人暮らしの明菜の家に行った。
朝から明菜の住む隣の県まで電車を乗り継ぎ、15分ほど歩くとアパートの1階に到着する。
インターホンを押す明男。
ピンポーン
・・・・・・
おかしいな。どうして開かないんだ?
隣のアパートから白髪交じりの60代位の女性がこちらに歩いて来る。
「その家の住人と知り合いかい?私は隣の部屋だからいつもその部屋から生活音が聞こえてたんだけど、3日くらい前からぱったり音沙汰がないんだよね。どうしたのかしら」
女性が不審がって顔をしかめる。
「えっ、それってどういう!」
焦っていく明男はインターホンを連打する。
・・・・・・
一体どうして反応がないんだ…?
「もう…しょうがない。このドアを壊しますね」
足でドアを思いっきり蹴る明男。
女性は慌てたように「あの…この上の階の人が大家なの。だから鍵をもらって来てはどうかしら?」
明男は「それもそうですね。情報ありがとうございます。」
明男はアパートの階段を上り、大家の家のインターホンを押す。
ドアから現れる大家に理由を説明し、明菜の家のスペアキーをもらった明男は階段を降り明菜の家の鍵を開ける。
家に入り玄関の明菜の靴を見る明男は「何だ…明菜―?寝てるのかー?」と言いながら居間に行くと誰も居ない。
居間の引き戸を開け、寝室を覗くと明菜が天井から首を吊った後があり倒れている。
「嘘だろ?なんで……」
明菜の肌を触ると冷たかった。
明男は携帯電話を取り出し、震える手で「119」番を押し、耳に押し当てる。
「こちら飯尾町の警察署で……」
「あの!妹が倒れてるんです!もう身体も冷たくて…!」
「まず、そちらの住所を教えて頂けませんか?」
「えと、住所は……」
明男は携帯電話を持ちながらポールハンガーに掛かっている肩下げバックから財布を取り出し住所を読み上げる。
「飯尾町36-17 ノイタミナ3号です」
「では直ちにそちらに向かいますのでしばしお待ちください」
電話を切り、力が抜けたようにその場に座り込む。
「なあ!!明菜何があったんだよ……」
明菜に話しかけるも、反応しない。
「なあ!相談してよ……理由は?」
明菜が反応するはずもなく呆然としている明男。
「何かないのかよ、何か書き残してるとかないのかよ」と言いながら立ち上がると、机の上に1冊の分厚いノートが置いてあった。ノートの表紙には「Diary」と書かれている。
明男はゆっくりノートに近づき「ダイアリー?」と呟く。
ゆっくりページを捲ってみる。
4月1日 今日は入学式。演劇部の人に見学しない?と誘われて明日見に行くことになった。楽しみだな。
4月2日 演劇部に見学に行ったら何人かの新入生が入部を決めていて、皆早い。私はもうちょっと考えたい。
ピンポーン
警察か。
明男はすぐさま玄関に向かい、2人の警察を明菜の部屋に招き入れた。
1人は明菜の写真を撮り、もう1人は俺に話を聞いて来る。
「なるほど、妹の家に来たら扉が開かなくて大家から受け取ったスペアキーを使って家に入ってみると亡くなっていたと。これは見るからに自殺ですね」
カっとなった明男は手に握った拳を震わせる。
「でもそうなった原因があるわけじゃないですか!それを調べてはくれないんですか?」
「さすがにそこまではね。死体解剖で他殺かどうかを調べることしかできないし」
食い気味で明男は警察官にさらに問いかける。
「じゃあ…!もし私がその原因をつきとめたら、死んだ原因が他の誰かのせいなら警察も対処してくれますか!?」
「現実問題、それは難しいです。まず証拠がいりますし、それを訴えられる本人もなくなってるのでその証拠も本物かどうか判定するのが難しいです。申し訳ありません」
明男は溜息をつく。
「そうですか……」
その後明菜は警察によって寝台車に乗せられそのまま運ばれていった。
「くそっ!警察なんて何もくれないじゃん!」
壁を殴った明男は苛立ちを隠せない。
「俺は明菜に一体何をしてあげられたんだよ……」
明男はすがるようにもう一度日記を読み始める。
開いていた日記のページをさらに捲っていく明男。
6月8日 同じ大学の演劇部の同級生にがどうしてもと言うから演劇部にいったらそのまま入部になってしまった。こんな私を必要としている人がいるんだ。嬉しい。
最後の方までページが捲らさる。明男は目をとめる。
2月22日 誠也は私の初めての彼氏。でも束縛がきつくて別れたの。でもまさかリベンジポルノをされるなんて……。私の裸の写真もばらまかれるのかもしれない。
「は?何これ?」
意味がわからない。
さらに読み進める明男はその日の日記の最後にある一文を見つけた。
「お兄ちゃんには迷惑かけたくないし、こんな恥ずかしいこと言えそうにない」
嘘だろ?じゃあ…本当なんだ。
彼氏とか束縛とかレイプとかリベンジポルノとか、全部本当なんだ。
許せねえ
これは多分、文脈から明菜の元彼。
そいつに会わないと……なんとしてでも会わないと……
唇を噛みしめる明男はノートを両手に持ちその文章を眺めて怒りのあまり両手を震わす。
すると、日記が光りなにかうっすら声が聞こえる。
ん?
「・・・ちゃん。お兄ちゃん、私の恨み、この力で晴らして。お願い」
・・・・・・明菜?明菜か!?
「お兄ちゃん。任せたよ」
ちょっと待って!明菜!
明男の全身が緑色に発光する。
「なんだ!この光!」
明男は慌てるも明菜からの声は返って来なかった。
「明菜!行かないでくれよ……」
泣きじゃくりその場にしゃがみ込む明男。
明男は座り込み泣き疲れただ呆然としている。
「そういえばさっきの光・・・何?それに力?え?」
両手をパーに広げ掌を見つめる。
こんな俺に何ができるっていうのか。
じゃあこの男の場所に連れてってくれよ!
明男が強く願うと明男の身体が光り、「嘘だろ?」と明男は急いでノートを持つとノートを持ったままあるアパートの前に移動していた。
瞬間移動!?できたのか?俺が!?
いや違う・・・・・・これは多分、明菜の日記の力だ、明菜の怨念の力かもしれない。
信じられないけど、もう受け入れるしかない。
これが夢じゃなく現実だと願うしかない。
明菜の恨みを果たすにはこれしかないんだから。
2階建てのアパートを見上げる明男。でもまず名前もわからねーな。
日記を捲り、探し始めた明男はある名前を見つける。
「安藤誠也。それが私の初めての彼氏の名前。一体どんな名前の人と付き合うのかなーって小さい頃から夢見て待っていたの」
「安藤誠也・・・安藤の表札を探そう」
明男は1階アパートの前を表札を見ながら歩く。
見つからない。じゃあ上か。
階段を上がり2階のアパート前を歩く明男は最後の家の表札に「安藤」という名前を見つける。
すごい、本当にあった。
この力は使えるのかもしれない。
でもまだ相手の顔を知らない。
じゃあどうする?
今日は日曜日。入社式が終わって数日しかたってない。
じゃあいつ家から出て来るかもわからない。
じゃあ待ってやるよ。
待って会ってその後どうする?
そいつの顔を拝んだら考えよう。
俺はこのアパートの前でいくらでも待ってやる。
宣言どおり、15時から18時までずっと2階のそいつの部屋だけを眺めて待っていた。
ガチャっ。その部屋から男が出てきた。
あいつか。首元まである茶髪にピアスもしてブレスレットもつけて。
あんな奴が明菜と付き合っていたのか?
チャラそうな奴と明菜が一緒に居たなんて・・・。
待てよ。いいことを考えた。
じゃあ今復讐するんじゃなくて準備が必要だ。
一旦家に戻ろう。
明菜の元彼の安藤誠也が携帯電話を見ながら明男の前を横切る。
誠也がどこかへ歩いていくのを見送った明男は「俺を明菜の家に帰して」と強く願う。
明男の身体は緑色に発光し、明男は明菜の自宅にワープしていた。
明菜。こんな力をありがとう。
とどめを刺すにはお前の道具を貸してくれ。
明男は姿見鏡に全身を映し、満面の笑みを浮かべる。
後ろに5センチ小さくなっただけの明男と瓜二つの顔の明菜が透けて鏡に写り同じ笑顔を浮かべていた。
翌日の朝、壁にもたれかかったまま起きた明男は、しばらく呆然として部屋を眺めていた。
正午近くになり傍に置いていた自身のショルダーバックから携帯電話を取り出し電話をかける。
「もしもし。庄司明男ですが、すみませんがやりたいことができたので仕事辞めます」
「えっ、ちょっと待って。いきなり言われても!」
職場先の上司の声が携帯電話から漏れていた。
「もう決めたことなので他をあたってください」
明男は顔色変えずに電話を切った。
深く息を吐き立ち上がる明男。
部屋を一面見渡しクローゼットを開ける。
「ふうん。なるほどね」
明男はクローゼットから何枚も服を出し、ベッドに投げ入れてからクローゼットを閉める。
今度は机に向かって歩いていくと机の全ての引き出しを開け何かを探し始める。
明男は「ここじゃないか」といい引き出しを閉め立ち上がり本棚に近づくと、「ここにあった」と言って明菜のポーチに手を伸ばす。
ポーチがあった場所の近くにあったスタンドミラーを持って机に置くと明菜の化粧品を漁る。
鏡を見ながら「俺と明菜は一卵性双生児。あいつを驚かせてやる」と呟いた明男。
そうして迎えた夕方、日記に手を伸ばす明男の細い手。
「安藤誠也の家に行って」と呟く女装して髪が長くなりスカートをはいた明男の声。
明男は誠也の家の前に来ていた。
今日は月曜日。誠也が家に帰って来る頃だろう。
明男は家の前の茂みに隠れた。
15分ほど待っていると、誠也が現れた。
スーツ姿に茶髪でピアスは外しているものの、新入社員にしてはチャラすぎる。
茶髪のロングヘア姿の明男はつけまつげをした目を瞬きさせながら誠也にぶつかるようにわざとケータイを操作しながら誠也にぶつかる。
「いてっ!何すんだよ!」
誠也が迷惑そうに女装した明男を見る。
「ごめんなさ~い!てかカッコいいね!私はあんた、タイプだよ」
と明菜の声になりきり誠也を見上げる。
「この声って…!そんな訳ねえか」
「いい声でしょ?ねえ、私をあんたの家にあげてよ」
「え……まあ、いいよ」
誠也は女装した明男の策にはまり、明男に腕を組まれながらアパートの階段を上がり部屋に引き入れる。
靴を脱ぎ居間まで歩いた誠也と明男。
「ねえ、ここは居間でしょ?あとはどんな部屋なの?」
明男が訊くと寝室に繋がる引き戸を開ける誠也。
「ああ。寝室」
誠也が答えると「ふうん」と笑った明男が誠也を部屋のベッドに押し倒す。
「乗り気じゃん。いきなり?」
誠也が軽く笑うと「責めてきて」と続ける。
「えーじゃあ私は目瞑ってるから」と目を瞑る明男に「ここまで来てなんだよ」と言いながら顔を近づける誠也。
誠也の顔が5センチ程近づいたところで明男は目を見開き、「やっぱり軽いのね」とにたっと笑う。
「は!?なんだよお前!!」
「なんだよって!?教えてあげるよ私はね」
明男はそう言って持ってきた明菜のクローゼットの奥から引っ張り出したバックから化粧落としを取り出し目の前で化粧を落とす。
「明菜なの」
「はぁああああ!?お、お前はもう死んだはずじゃ!?な、なななんだお前は」
誠也が怯えながら自身の腹の上から明男を振り落とす。
「私はあなたを好きじゃなかった。私はあなたの一部だったんでしょ?あなたの一部は消えてしまった。もうこの世にない。完璧なあなたはもういない。私に振られた時点であなたは不完全なのよ」
明男は明菜になりきって演技する。
そう、この日の為に昨日俺は明菜の日記を読み込んだ。だからこいつの性格なんて熟知している。
明菜は顔立ちが良いからきっと傍に置いて優越感を得たかったんだ。その優越感を崩してやる。
「そっか・・・幽霊になって俺の前に現れてきてくれたのか・・・?お前が死ぬとは思わなかったよ!それに、そんなんじゃないんだろ!?本当は、少しでも俺のことが好きだったんだろ?なあ明菜答えてくれよ!」荒ぶる誠也に明菜になりきった明男は「あなたのことは本当は好きじゃなかったわ。ただ断れなくて付き合っただけ」
明男は明菜の日記から読み取った明菜の気持ちを事実のように告白する。
でもね、双子だからあながち考えてることは間違ってないと思うんだ。
「そんな、、」と絶望に暮れる誠也。
「あなたの一部と一緒に消えようか?だってあなたが築いたかつての栄光はもう微塵も残ってないんだもの。恋人に振られたらリベンジポルノをする男だともう皆にバレたよ」
と明菜になりきった明男が誠也に詰め寄る。
「・・・そこまで考えていなかった。じゃあ俺は、今まで一体何をしてたんだ」と言う誠也。
「何もしてなかったのよ。ただ、周りがあなたを持ち上げて自惚れたあなたを作り上げただけ」と言う明菜。
「待って!今の姿がお前の怨霊とでもいうなら、お前はどうしたら許してくれるんだ!」と言う誠也に「じゃあ土下座して」と明菜に扮装した明男は言う。
「くっ・・・・・・!」
誠也は声を上げ床に膝をつき手を震わせながら土下座する。
明菜に扮装した明男はそんな誠也の写メを撮る。
驚いて「撮ってどうするんだよ!誰かに送るのか?それだけはやめてくれよ」と懇願する誠也に、明男は「嫌よ、私は私のされたことをお返ししてるだけ。あなたを信じていたから、もう信じられないの。あなたの栄光は金輪際終りね」と言い放ち、写真をすばやく明菜のケータイの演劇グループラインに送る。
「そんな・・・!本当に俺今後どうやって生きれば・・・!くそ!お前と同じあの世に行ってやる!」
誠也は首を吊って自殺する。
明男は「明菜……お前の恨み果たしたからな……」と呟くと(明菜のいる場所に連れていって!)と強く願う。
明男の身体全体が緑色の光に包まれ、気づけば葬儀社の安置施設に移動していた。
明菜を見つめる明男は涙目で「明菜……もう安心してくれよ。お兄ちゃんお前に嫌なことした奴をつぶして来たから」
「ありがとう……お兄ちゃん。これで成仏できそう。これからはお兄ちゃんの人生を生きて」
明菜の声が聞こえてくる。
「寂しいけど、お前が望むなら努力する。これからはお前の分も2人分生きるよ」
「約束だよ、お兄ちゃん」
優しい明菜の声が聞こえてくる。
「ああ」
明男はそう言うと全身が緑色の光に包まれた。
明男は少し焦って「待って!もう少し明菜と一緒に居たい」
「まだ今じゃないよ。私はずっと見守ってるからね」
明男は明菜の家に戻って眠っている。
夢の中でまだ小さい頃の明菜と明男が施設の寝室の壁に並んで腰かけ、笑っていた。




