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序章:記録されない救命/天暦830年6月 シン国海岸

初投稿です。初めての物書きのため、見苦しい表現もあると思います。年号、国名、登場人物名などは現実と一切関係ありません。生暖かい目でご覧いただければ幸いです。現在第一章執筆中です。

序章:記録されない救命/天暦830年6月 シン国海岸

――とある浜辺、二人の人物が焚き火を囲んでいる。

 一人は十歳やそこらの少年、着ている服はいかにも裕福そうな印象を受けるが、全身ずぶ濡れで火の前で寒そうに震えている。

「ク……クシュン!寒いよぉ……お父様ぁ……お母様ぁ…」

 目に涙を浮かべながら少年は火の前で呟く。

「じっとしてな。火の前に居りゃすぐ乾く。余計な体力を使うんじゃねえ。」

 少年の対面には同じく全身ずぶ濡れな精悍な男性が砂に腰をかけている。見た目だけなら四十歳くらいにも見えるが、雰囲気は初老のような、不思議な男性に見えた。

「そんなこと言ったって…すごい波で船から落っこちちゃって、お父様もお母様とはぐれちゃって、気づいたらおじさんとこの島にいて……何が何だか分かんないよぉ!」

「落ち着け。大丈夫だ。あの客船の航行ルートはしっかりしてる。お前の親御さんはちゃんとした船を選んでる分沈んだりしたりはしないさ。万が一沈んだとしても救難態勢はしっかりしてる。唯一溢れ落ちたお前さんさ今こうして無事なんだから安心しろって、な?」

 少年は男の言葉を理解できないわけでは無い。乗っていた船はすごい快適でちゃんとした船だったし、自分が今ここにいる原因は一人で船を探検した挙句大波が来たときに船に捕まりきれず落ちてしまった自分にある。この男がすぐに飛び込んできていなかったら間違いなく助からなかっただろう。

「グスッ… なんでおじさんは僕を助けてくれたの…?おじさんも波に飲まれて危なかったのに……」

「んまぁなぁ……理由なんて簡単だよ。俺には"自由"がなかったんだ。お前さんが死ぬ可能性に目を瞑る"自由"がな。」

「自由……?」

 先の言葉は理解できた少年も、いま彼が発した言葉の意味が分からなかった。いや、単語の意味は理解できる。理解できるのだが、どういう感情を持って彼がその言葉を紡いだのか、その意味が少年にはわかりかねてしまった。

「あんま難しく考えんな、偶々あの時近くに俺がいて、助けたいから助けた。それだけの事さ。」

 男は快活に笑う。四十過ぎのおじさんに見えていたが、笑っている顔は少年と同じような無垢な笑顔だった。

「……変なおじさん」

 少年は考えるのをやめた。というよりかは考えられなくなっていた。途端に眠気がやってきたのだ。

「疲れてんだから当然だ、明日親御さんに元気な顔見せれるようにな」

「うん……おやすみなさい……おじさん……」

 少年は眠りにつく。男は自分の羽織っていたコートを確かめ、乾ききったのを確認してから少年にかけ、

「おやすみ、少年。良い夢みろよ。」

 と声をかける。返事はないが、代わりに寝息が返ってくる。

「やれやれ……まさか西オレーの船に乗ってるときにこんな事故に遭遇しちまうとわな。ここら辺の海域だとキャプテン達が通りかかるかアルバートとドミニクの奴らが先か……まだ後者の方がマシだがどっちにも会いたくねえ」

 男は一人呟く。言葉尻とは裏腹に、どこか満足げな表情をしていた。

「三十六年か……」

 男は思い出す。スグル・クスノキの生き方を決定づけた"あの"事件。

 ――天暦794年、(くすのき)貿易公司船沈没事件――

 

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