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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章:現実世界侵攻 編

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第91話 先代への敬礼と、共同創業者の意志

墜落した天空の城アヴァロン。煙が立ち込める司令室の残骸の中で、私たちは沈黙を守っていた。 そこには、倒れたモニターの明かりに照らされ、静かに立ち尽くす一人の女性がいた。


アリス・フォン・ローゼンブルク。 デジタル・アーク計画を葛城と共に立ち上げ、現実世界で巨大企業を率いてきた共同創業者であり、CEO。 彼女は、ボロボロになったドレスの裾を気にすることもなく、葛城が消滅した虚空を見つめていた。


……終わったのね、葛城。 アリスの声は、震えてはいなかった。だが、その響きには数十年にわたる腐れ縁と、共に地獄を見てきた戦友への深い情愛が込められていた。


アリスCEO。 ライオネルが彼女の隣に並び、静かに頭を下げた。 総理の最期のログ、確認しました。彼は最後まで、この世界の安定をシステムに託していました。


ええ、あのバカ正直な男らしいわ。 アリスは自嘲気味に笑い、懐から一本の高級な葉巻(現実世界の嗜好品)を取り出した。火はつけず、ただその香りを惜しむように指で弄ぶ。 あいつは「救済」という数式を解くために、自分の心さえ変数として切り捨てた。……冷酷な独裁者? 違うわ。あいつはただ、誰よりもこの世界の責任を一人で背負おうとした、不器用な経営者だっただけよ。


私はアリスの背中に歩み寄った。 アリス。……葛城総理が目指した「現実への進出」と「人類の保存」。その正義そのものを、私は否定しないわ。


分かっているわ、コーデリア。 アリスが振り返った。その瞳には、かつての「聖女」の仮面など微塵もない、冷徹で知的な経営者の光が宿っている。 私たちはやり方が違っただけ。葛城は「効率」を選び、あなたは「現場」を選んだ。どちらもこの世界を愛していたことに変わりはない。


サキョウ、イグニス、そして騎士たちが、かつての支配者が座っていた玉座の跡に向かって整列した。 彼らは裏国家の幹部として、そして現場で戦った戦士として、拳を胸に当てて敬礼を送った。


シロガネ、ヴァーミリオン、スピンドル。 サキョウが静かに名を呼ぶ。 あなた方の徹底した管理と武力があったからこそ、この箱舟は今日まで沈まずに済んだ。裏国家を代表し、その献身に心からの敬意を表する。


イグニスもヘルメットを脱ぎ、瓦礫に置いた。 敵だったが、あんたらの執念は本物だったぜ。……あとは俺たちが引き継ぐ。安心して眠りな。


アリスCEOが私の前に立ち、その鋭い眼差しを向けた。


さて、株式会社ユグドラシル新社長。 葛城がいなくなり、私が「一人」になった今、この会社はどうなるのかしら?


アリス。……いえ、CEO。 私は彼女の手をしっかりと握った。 あなたの会社は、私が買い取った(MBOした)わ。でも、創業者であるあなたの知識と人脈は、これからの「再構築」に不可欠よ。 裏国家の代表は、私たち「現場の人間」が引き受ける。あなたは顧問として、私たちの暴走を監視し、葛城が夢見た「現実との完全融合」を論理的に導いてちょうだい。


……ふん、相変わらずの人使いの荒さね。 アリスはフッと笑い、握り返してきた手の力に、確かな信頼を込めた。 いいわ。葛城が残したこの「負債だらけの理想」を、黒字化させるまでは付き合ってあげる。……共同創業者の、これが最後の仕事よ。


私たちは、葛城総理が遺した一輪の白い花に改めて手向けの言葉をかけ、司令室を後にした。 彼らの「正義」は死んでいない。 それは今、アリスという最強の理解者と、コーデリア率いる新しい現場の力によって、形を変えて引き継がれたのだ。


アヴァロンの廃墟に、新しい時代の風が吹き始めていた。

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