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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章:現実世界侵攻 編

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第89話 魂のインストールと、美しき良心回路

アヴァロンの第3医療区画は、幸いにも墜落の衝撃を免れていた。 ひんやりとした冷気が漂う薄暗い部屋には、円筒形の培養ポッドがずらりと並んでいる。 本来は、総理が人類のデータを管理するために使っていた場所だ。


電源、確保したぜ! イグニスが壁のパネルをこじ開け、剥き出しのケーブル同士を直結させる。 バチッ! 部屋中の照明が一斉に灯り、ポッド内の培養液がボコボコと泡立ち始めた。


よし。システム起動。 私はコンソールに向かい、左手でキーボードを叩く。 右手はもう動かないが、ハッキングツールを使えば思考だけで入力が可能だ。


サキョウさん、素材の投入をお願い。


承知しました。 サキョウが指示を出すと、ランスロットたちが運び込んできた「資材」が投入口へ放り込まれる。 それは、空から降ってきた現実世界の瓦礫――カーボンファイバー、レアメタル、シリコンウェハーなどのハイテク素材だ。


本来の人体錬成には禁忌とされるものばかりですが……。 サキョウが眼鏡を光らせる。 彼らのデータと馴染むでしょうか?


馴染ませるのよ。 私はモニターに表示された複雑な設計図を見つめた。 彼らは一度、データの海に還った存在。 旧来の肉体よりも、この世界と現実が融合した「ハイブリッドな器」の方が、今の環境に適応できるはず。


まずは、騎士団のメンバーから。 私は「砕けた回路トリスタンたち」をスロットに差し込んだ。


【Project: Knights_Reboot / Start】


ポッドの中で光が渦巻く。 現実の素材と魔力が融合し、骨格が形成され、筋肉が織り上げられていく。 数分後。 三つのポッドの培養液が排出され、プシュッという音と共にガラスが開いた。


う……ん……。


濡れた体で床に膝をついたのは、かつて削除されたはずの騎士たち。 トリスタン、モルドレッド、ガウェイン。 その体には、どこか無機質で、しかし力強い光沢があった。


トリスタン! アーサーが駆け寄り、濡れた肩を抱きしめる。


アーサー……? ここは……地獄か? それとも……?


地獄の底から這い上がってきた、新しい職場ですよ。 アーサーが泣き笑いで答える。


よかった……成功ね。 私は安堵の息を吐き、最後に残った中央の特等席――最も巨大なポッドを見上げた。


次は、あなたよ。


私は懐から「青い宝石」を取り出し、震える手でメインスロットにセットした。 ライオネル公爵。 私の元婚約者であり、この世界の良心回路。


【Target: Lionel / Restore】


エンターキーを叩く。 ポッドの中に青い光が満ちる。 だが、モニターに警告が表示された。


『エラー。対象データの密度が高すぎます。 現在のリソースでは、完全な再現が困難です。』


くっ……やっぱり、彼は特別すぎるのね。 総理のシステム中枢を担っていただけあって、データ量が桁違いだわ。


足りない分は……私のリソースを持って行きなさい!


私は動かない右腕をコンソールに押し当てた。 この腕に残る「管理者権限の残滓」と、私の魔力を全て注ぎ込む。


社長! 無茶だ! イグニスが叫ぶが、止まらない。 激痛が走る。視界が霞む。 でも、ポッドの中の光は強さを増していく。


戻ってきて、ライオネル。 あなたがいないと……このブラックな世界経営は、私ひとりじゃ荷が重すぎるのよ!


バチンッ!! コンソールが火花を散らし、私の体が弾き飛ばされた。


コーデリア様! リュカ(人間形態に戻っている)が私を受け止める。


ポッドのガラスが、音もなくスライドした。 溢れ出す白い冷気。 その向こうから、一人の男がゆっくりと歩み出てきた。


銀色の髪。知的な碧眼。 濡れたシャツが張り付くその姿は、記憶の中の彼よりもずっと精悍で、神々しささえ感じさせた。


……騒がしいですね、コーデリア。 少しは静かに寝かせてくれませんか?


その皮肉めいた、でも温かい声。 私はリュカの腕の中で、ボロボロ泣きながら笑った。


おはよう、ライオネル。 遅刻よ。始業時間はとっくに過ぎてるんだから。


彼は濡れた髪をかき上げ、私に歩み寄ると、その前に片膝をついた。 そして、私の黒く焦げた右腕を、愛おしげに両手で包み込んだ。


君という人は……。 また、こんなになるまで無茶をして。


彼の手から、青い光が溢れ出す。 その光は、私の右腕の炭化を癒やしはしなかったが、痛みを取り除き、黒いノイズを安定させてくれた。


ただいま戻りました、我が主。 ……いいえ、私の愛する社長。


ライオネルは私の右手に口づけを落とした。 その瞬間、医療区画全体が祝福するかのように青く輝いた。 騎士たちが歓声を上げ、イグニスが口笛を吹く。 リュカだけが、少し面白くなさそうに頬を膨らませていたが、それでも安堵の表情を浮かべていた。


役者は揃ったわ。 私はライオネルの手を借りて立ち上がった。

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