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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生


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第7話:聖女の進軍は、まるでDDoS攻撃のように

王都の謁見の間。 そこには、いつになく殺気立った空気が流れていた。


「――聞いたか? 北の『死の森』に、伝説の聖獣が現れたらしい!」 「なんと! それを従えているのが、あの『追放された悪役令嬢』だとか……」


貴族たちのヒソヒソ話を切り裂くように、壇上のアリスが声を張り上げた。


「皆様! 聞いてくださいまし! 夢でお告げがあったのです!」


ピンク色の髪を揺らし、アリスは両手を組んで祈るポーズをとる。その瞳は潤んでいるが、計算高い光がチラついていた。


「可哀想な聖獣様が、邪悪な魔女に捕らわれて泣いています! 『助けて、清らかな聖女様』と! 私、どうしても助けに行かなくちゃ!」


「おお、なんて慈悲深い……!」 「魔女とは、コーデリアのことか! 追放されてなお、聖獣を虐げるとは!」


王子クリフォードが剣を抜き放つ。


「よし、アリス! 僕がその願いを叶えよう。近衛騎士団を率いて『死の森』へ進軍し、魔女を討伐! 聖獣を保護(という名のペット化)するのだ!」


「きゃあ、クリフォード様素敵ぃ!」


盛り上がる会場。 その隅で、騎士団長ライオネルは無表情を貫いていた。 だが、その内心は嵐のように荒れ狂っていた。


(……バカなのか? あいつらは全員、バカなのか?)


「聖獣が泣いている」? 否。あの聖獣は先週末、コーデリアにブラッシングされて腹を見せて爆睡していた。 「邪悪な魔女」? 否。彼女は今頃、私が差し入れた最高級茶葉でティータイムを楽しんでいるはずだ。


(止めなければ。……いや、待てよ)


ライオネルは冷徹な計算を働かせた。 ここで正面から反対すれば、自分が「魔女の味方」だと疑われ、コーデリアへの物資輸送ルート(週末の通い妻ルート)が絶たれる恐れがある。 ならば、取るべき手段は一つ。


(情報を流す。そして、彼らを『盤上』で完封する)


ライオネルは静かにその場を離れ、懐から通信用の魔道具を取り出した。



一方、北の最果て。 私は畑で採れた巨大カボチャと格闘していた。


「うーん、重い! リュカ、手伝って!」 「ワン!(任せろ)」


その時、私のポケットに入れていた通信石が震えた。 ライオネルさんからだ。


緊急連絡エマージェンシー。明日、王太子と聖女が率いる討伐隊が出発する。目的は君の排除と、リュカの奪取だ』


「……はぁ」


私は深い深いため息をついた。 せっかくのカボチャの収穫時期に、なんて迷惑なイベント(仕様変更)だろうか。


『兵力は約50。ただし、私が指揮権の一部を握っているから、意図的に進軍を遅らせることはできる。到着まで3日の猶予があるはずだ』


「了解です(ラジャー)。情報提供ありがとうございます、ライオネルさん」


『……君に危害が及ぶようなら、私は職を辞してでも彼らを斬る覚悟だ』


「物騒なこと言わないでください。残業続きで判断力が鈍ってますよ」


私は通信を切ると、足元のリュカを見下ろした。


「聞いた? あなたを『保護』しに来るんですって」 「グルル……(俺を犬扱いできるのは主だけだ)」


リュカが不快そうに鼻を鳴らす。 私はカボチャの上に座り、指先で空中に青白い光の図面を描き始めた。


「相手がその気なら、こちらも迎撃準備(システム構築)といきましょうか」


相手は数で攻めてくる。いわば、サーバーへの大量アクセス攻撃(DDoS攻撃)のようなものだ。 ならば対策は決まっている。 強固なファイアウォールと、アクセス分散、そして――。


「トラップの実装ね」


私はニヤリと笑った。 悪役令嬢の魔力と、社畜SEの悪知恵。 この二つが組み合わさった時、どれほど凶悪なダンジョンが生まれるか、彼らは身を持って知ることになるだろう。


「さあリュカ、森の動物たちにも声をかけて。……『フェス』の開催よ!」



3日後。 クリフォード王子と聖女アリス率いる討伐隊は、自信満々で《死の森》の入り口に到着した。


「ふん、不気味な森だ。だが、聖女の加護がある我々に敵はない!」 「そうですわ! さっさと魔女を懲らしめて、わんちゃん(聖獣)を貰いましょう!」


意気揚々と森に足を踏み入れる一行。 しかし、彼らはまだ気付いていなかった。 入り口に立てられた看板に、小さな文字でこう書かれていることを。


【これより先、関係者以外立ち入り禁止(No Trespassing)】 【違反者は、排除(Delete)します】


森の木々が、ざわざわと不穏に揺れ始めた。

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