表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章:現実世界侵攻 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/193

第67話 継承されるヘルメットと、灼熱の溶接工

戦いの爪痕は深かった。新魔王軍の撃退には成功したものの、ガンテツ親方が身を挺して守った第1トンネルは完全に崩落。地下帝国の玄関口は瓦礫の山となり、物流も防衛機能も麻痺していた。


「おい! ここの支柱、角度がズレてるぞ!」 「あっちの地盤も緩んでる! 早く補強材を持ってこい!」


国土交通省・第1土木課の現場は混乱を極めていた。これまではガンテツ親方が、その経験と勘で全ての工程を指示していた。だが、その柱を失った今、ドワーフたちも元四天王たちも、どう動けばいいのか分からず、右往左往していた。


「くそっ……! 親方なら、一目で弱点を見抜いて指示を出せたのに……!」


炎のイグニスは、煤けた顔で瓦礫を殴りつけた。彼の魔法は強力だが、建設現場では「破壊」になりかねない。繊細なコントロールが必要な場面で、彼は己の無力さを痛感していた。


「これじゃあ、次の襲撃までに壁が直らねえ……」


現場に絶望的な空気が漂い始めた時、瓦礫の下からキラリと光るものが見えた。イグニスが駆け寄って掘り起こすと、それはガンテツ親方が愛用していた**【傷だらけのヘルメット】**だった。内側には、汚い字でこう書かれている。


『安全第一。死ぬな、生きろ』


イグニスの手が震える。親方は、死にたくて死んだんじゃない。俺たちを生かすために、自分が盾になったんだ。


「イグニスさん」


背後から声をかけたのは、私、コーデリアだった。私はイチヨウ大臣から引き継いだ黒革の手帳を抱え、彼を見つめた。


「悲しんでいる暇はありません。壁が直らなければ、次は帝国の住民たちが死にます。……誰かが、指揮を執らなければならないのよ」 「誰がやるんだよ!」


イグニスが叫ぶ。


「ドワーフのベテラン連中は頭が固いし、俺たち四天王は土木の素人だ! 親方の代わりなんて、誰にも務まらねえよ!」 「ええ。親方の代わりはいません。でも……親方の【意志】を継ぐことはできるはずです」


私はイグニスの手にあるヘルメットを指差した。


「あなたは炎の四天王。すべてを燃やし尽くすその火力……使い方を変えれば、最強の【創造の炎】になるんじゃないかしら?」 「創造の……炎?」 「思い出してください。親方の背中を。彼は魔法を使わずとも、熱いハートで現場を動かしていました。あなたにも、その熱があるはずです」


イグニスはハッとして、自分の手を見た。かつては人を殺すために使っていた炎。だが、この地下で親方と共に働き、鉄を溶かし、仲間と汗を流した日々。その中で、炎の質は変わっていたはずだ。


「……ああ、そうだな」


イグニスはゆっくりと立ち上がり、ガンテツのヘルメットを被った。サイズは少し小さいが、魂はぴったりとハマった。


「おい野郎ども! 聞けェェッ!」


イグニスの怒号が現場に響き渡る。ドワーフたち、アース、アクア、ウィンドの手が止まり、彼を見る。


「今日から俺が現場監督だ! 文句ある奴は前に出ろ! 焼き尽くしてやる!」 「なっ……新入りが生意気な!」


ドワーフの一人が噛み付こうとするが、イグニスは指先から青白い炎を出した。それは破壊の炎ではない。極限まで圧縮された、切断と溶接のための【加工炎】だ。


「アース! お前は土魔法で基礎を固めろ! 強度は親方の基準を守れ! アクア! 冷却水を循環させろ! 1秒も遅れるな! ウィンド! 粉塵を飛ばせ! 視界を確保しろ! そしてドワーフの皆さんは、俺の炎に合わせて鉄骨を組んでくれ!」


イグニスは瓦礫の山に飛び乗った。


「俺が見せてやるよ! 四天王流・超高速土木工事をなッ! 《四天王奥義・プロミネンス溶接ウェルディング》!」


イグニスの両手から放たれたレーザーのような炎が、瞬時に崩れた鉄骨を溶かし、繋ぎ合わせていく。その精度はミリ単位。速度は神速。ガンテツ親方の豪快さとは違う、元エリート魔族ならではの緻密で完璧な仕事だった。


「す、すげぇ……! 鉄が飴細工みてぇだ! これならイケるぞ!」


ドワーフたちが歓声を上げ、動き出す。現場に活気が戻った。いや、以前よりも熱く、激しい【連帯感】が生まれていた。


「フッ……。単純な男たちね」


現場の様子を見ていたスカーレット大臣が、瓦礫の陰から現れ、煙管を吹かした。


「泥臭いのは嫌いだけど……悪くない眺めだわ」 「スカーレット様。偵察任務、お疲れ様でした」


私は彼女に向き直る。


「ええ。敵の動きを探ってきたわ。……悪い知らせよ。新魔王軍は、次の手を打ってきている」 「次の手?」 「ヴァーミリオンは撤退したんじゃない。彼らは地下の水脈に、魔界の**【腐敗毒】**を流し込んだわ。このままだと、数日以内に地下帝国の水源は全滅。飲み水も、農業用水も、全て死の毒水に変わる」 「なっ……!?」


私が絶句する。壁を直しても、内部から干上がらせるつもりか。なんて卑劣な。


「解毒剤はあるんですか?」 「一般の解毒魔法じゃ無理ね。中和するには、地上にある【聖女の泉】の湧き水が必要よ。……でも、そこは今、新魔王軍の制圧下にあるわ」


詰んだ、と言いたげなスカーレット。だが、私はすぐに計算を始めた。水がなければ、エルフの農場も、カルテの病院も、そしてイグニスたちの冷却水も止まる。これは国家存亡の危機だ。


「取りに行きましょう」


私はアタッシュケースを握りしめた。


「聖女の泉だろうが魔王城だろうが、必要なリソースなら現地調達するだけです。……スカーレット様、案内をお願いできますか?」 「あら、私を使う気? 高いわよ?」 「経費(予算)なら、私が捻出します。……イチヨウ大臣が残してくれたこの国を、毒なんかで死なせはしませんから」


私の目を見て、スカーレットは面白そうに笑った。


「いいわ。乗った。……新人のくせに、いい面構えになったじゃない」


こうして、新たなミッションが決まった。壁の修復は二代目親方イグニスに任せ、私は少数精鋭で地上の敵地へ潜入し、水を奪還する。メンバーは食卓の騎士団、そして案内役のスカーレット。


「待っていなさい、新魔王軍。弊社のインフラに手を出した代償、高くつかせてやるわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
数話前からセリフに「」つかなくなって読みにくくなってる。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ