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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章:現実世界侵攻 編

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第66話 開かれた裏金庫と、黄金の飽和攻撃

イチヨウ大臣から託された重厚な鍵。それを握りしめ、私はサキョウ長官と共に、財務省の地下深くに封印された【第二金庫】の前へと立っていた。


「ここか」


サキョウが沈痛な面持ちで鉄扉を見上げる。


「ああ。イチヨウが誰にも触れさせなかった、開かずの間だ。……彼女は常々言っていた。『ここにあるのは金やない。呪いや』と」


私は鍵穴にキーを差し込み、ゆっくりと回した。重い金属音と共に、扉が開く。そこから溢れ出したのは、目が眩むような黄金の輝き――ではなかった。


「……これは」


私が息を呑む。そこに山積みになっていたのは、黒く濁った結晶体。まるで凝固したコールタールのように、禍々しいオーラを放つ【魔石】の山だった。


「これが、イチヨウさんの守っていた財産?」


サキョウが眼鏡を外し、眉間を揉んだ。


「そうか……。これが【国の借金(赤字)】の正体か」 「借金?」 「地下帝国を維持するために発生した、処理しきれない汚染マナや、国民の負の感情……。それをイチヨウは自らの体内に取り込むのではなく、ここに結晶化して封印していたのだ。いわば、国の毒素。解放すれば周囲を汚染しかねない、危険な廃棄物」


サキョウは沈痛な面持ちで続けた。


「彼女はこれを、自分の墓場まで持っていく気だったのだろう」 「ですが、今はこれが唯一の武器です」


私は黒い魔石を一つ手に取った。指先が焼けるように熱い。だが、そこには莫大なエネルギーが圧縮されている。


「毒も使いようです。……これを【軍資金(燃料)】として前線にばら撒きます」 「正気か? その魔力を使えば、兵士たちの精神が汚染されるぞ」 「構いません。ウチの社員(騎士団)は、ブラック企業のストレス耐性で鍛えられていますから」


私は不敵に笑い、通信機を取り出した。


「総員に通達! 臨時ボーナスの支給よ! ……ただし、現物支給(劇薬)だけどね!」


【地下帝国・第1防衛ライン】

崩壊したガンテツ親方の壁。その隙間から、新魔王軍の先遣隊が雪崩れ込んでいた。


「ヒャッハー! 蹂虙だ! 地下のネズミどもを皆殺しにしろ!」


鮮血のヴァーミリオン配下の魔族たちが、防衛隊を蹴散らす。イグニスたち元四天王も、魔力切れで満身創痍だ。


「クソッ……ここまでか……!」


イグニスが膝をついた、その時。


「お待たせしました! 【給与搬送車】の到着です!」


上空から私の声が響く。私が乗った輸送ドローン(ネット大臣のコレクションを徴発したもの)から、黒い魔石の雨が戦場に降り注いだ。


「なんだこれは!?」


魔族たちが戸惑う中、私はスピーカーで叫んだ。


「食卓の騎士団、および特務部隊! その石を使いなさい! ……経費は使い放題よ!」 「了解! 待ちわびました!」


アーサーが、足元に落ちた黒い魔石を拾い上げる。瞬間、魔石が彼の体内に吸収され、どす黒いオーラが爆発した。


「うおおおおッ! みなぎる……! これは【残業代】の輝きッ!」


ランスロットも、ガラハッドも、そしてイグニスたちも魔石を掴む。イチヨウが溜め込んでいた【国の負債(怨念)】が、彼らの枯渇した魔力タンクを強制的に満タンにし、さらにリミッターを焼き切る。


「警告。コンプライアンス違反レベルのエネルギー充填を確認。……暴走モードへ移行します」


ガラハッドの瞳が赤く発光する。彼の持つ大盾が、黒い光の壁を展開し、押し寄せる魔族たちを弾き飛ばした。


「な、なんだコイツらは!? 急に力が上がったぞ!?」


ヴァーミリオンが驚愕する。


「さあ、反撃開始ターンオーバーです!」


私の号令と共に、ドーピングで理性を飛ばした社畜たちが襲いかかる。


【社畜剣技・決算期乱れ打ち】! アーサーの剣速が見えない。黒い斬撃の嵐が、魔族の鎧を紙のように切り裂く。


【営業トーク・マシンガン(物理)】! ランスロットが両手の双剣をプロペラのように回転させ、突撃する。触れた敵はミンチになって吹き飛ぶ。


そして、上空ではミナ&マナが、それぞれ巨大な黒い魔石を抱えて笑っていた。


「キャハハ! ママ(イチヨウ)のへそくりだー! 全部使っちゃえー!」 「【双子魔法・国債暴落メルトダウン・レイン】!」


彼女たちが魔石を砕くと、空から黒い雷撃の雨が降り注いだ。それは敵味方関係なく地形を変えるほどの広域殲滅魔法。魔族たちの悲鳴がかき消され、ヴァーミリオンの部隊が消滅していく。


「馬鹿な……! 貴様ら、命が惜しくないのか!? その黒い魔力は身を滅ぼすぞ!」


ヴァーミリオンが叫ぶ。私はドローンから降り立ち、彼の前に立った。


「命? ……そんなもの、とっくに担保に入れているわよ」


私は、イチヨウの黒革の手帳を掲げた。


「私たちはね、生きるか死ぬかの瀬戸際でこそ、最大のパフォーマンスを発揮するの。……それが【社畜】という種族よ!」 「ふざけるなァァァ!」


ヴァーミリオンが血の剣を生成し、私に斬りかかる。だが、その剣は私の喉元で止まった。


「……!? 動かん!?」 「動かないでしょうね」


私の背後から、無数の【黒い影】が伸びていた。それは、サキョウ長官の操る影縫いの術。


「総理の留守を預かる官房長官として……これ以上の狼藉は許さん」


サキョウが静かに、しかし凄まじい殺気を放って現れる。さらに、瓦礫の陰からはスカーレットが、建物の屋上からはネットの操るドローン部隊が照準を合わせている。


「チェックメイトよ、魔王族」


私はヴァーミリオンに名刺を突きつけた。


「あなたたちの部隊は壊滅しました。……ここで死ぬか、それとも【弊社に吸収合併】されるか。選びなさい」 「貴様……! 魔王族の誇りを愚弄するか!」 「誇り? そんなもので腹は膨れないわよ」


私は、瓦礫の下から這い出してきた一人の魔族兵士に、エルフたちが育てたトマトを投げ渡した。兵士は恐る恐るそれを齧り……そして泣き崩れた。


「う、うまい……! 本物の食い物だ……!」


魔界は荒廃し、彼らもまた飢えていたのだ。その光景を見て、ヴァーミリオンの表情が揺らぐ。


「あなたたちは強い。けれど、兵站メシがない。ウチに来れば、毎日このトマトが食べられるわよ? ……仕事はキツイけどね」


私は悪魔(人事部長)の微笑みを浮かべた。武力で制圧し、経済力で懐柔する。これが、私の提唱した**【敵対的TOB】**の全貌だ。


「くっ……! 覚えていろ! 今日のところは引く!」


ヴァーミリオンは部下を見捨てることができず、撤退信号を上げた。新魔王軍、撤退。ガンテツ親方の死という代償を払ったが、私たちは最初の防衛戦に勝利したのだ。


「勝った……のか?」


イグニスが座り込む。


「勝ったわ。……でも、これは始まりに過ぎない」


私はイチヨウの眠る方向を見つめた。彼女の遺産(黒い魔石)を使い果たしてしまった。ここから先は、本当に私たちの力だけで、国を回していかなければならない。


「総員、撤退! ……そして、宴会よ! 今日はガンテツ親方の奢り(弔い)だ!」 「イエス・マム……!」

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