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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生


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第14話:頑固な職人(ドワーフ)には、接待と仕様書を

庭に《源泉かけ流し・リフレッシュの湯》が完成してから数日。 私のスローライフ計画は、順調にフェーズ2へと移行していた。


「やっぱり、温泉と言えば次はサウナよね」


湯上がりに冷たい牛乳(魔法冷蔵庫でキンキンに冷やしたもの)を飲みながら、私は呟いた。 美肌効果のあるミストサウナに、しっかり汗をかけるロウリュ。 それを実現するためには、高熱に耐えうる特殊な石材と、精密な加工技術が必要だ。


「よし、外注アウトソーシングしましょう」


私は即断した。 魔法で何でも作れるとはいえ、私はソフト屋(魔術師)であって、ハード屋(職人)ではない。 餅は餅屋。石は石屋だ。


私はリュカの背中に跨り、死の森の北側に隣接する《鉄こぶの山》へと向かった。



そこは、職人気質の亜人種、ドワーフたちの住処だ。 カン、カン、カン! と小気味よい金属音が響く洞窟の入り口。 私が足を踏み入れると、髭もじゃの小柄な男たちが一斉に作業の手を止め、怪訝な顔でこちらを睨んだ。


「ああん? 人間の小娘が何の用だ。ここは遊び場じゃねえぞ」


奥から現れたのは、ひときわ立派な白髭を蓄えた、親方らしきドワーフだ。 腕組みをして、鼻息も荒く威嚇してくる。


「帰んな。俺たちは貴族のお遊びには付き合わねえ。ましてや、そんな華奢な手をした女に、俺たちの石が扱えるかよ」


典型的な「職人気質の頑固オヤジ」だ。 前世でもよくいた。仕様変更を嫌い、現場の経験則だけで語るベテランエンジニア。 この手のタイプへの攻略法は、既に確立されている。


相手の技術へのリスペクトを示す


明確かつ詳細な指示書(仕様書)を出す


そして、極上の差し入れ(接待)


私はニッコリと笑い、懐から一枚の羊皮紙を取り出した。


「親方。私の手は華奢ですが、設計デザインは一流ですよ」


「はんっ、設計だと?」


親方が鼻で笑いながら羊皮紙を受け取る。 しかし、その目が羊皮紙に落ちた瞬間、彼の表情が凍りついた。


そこに描かれていたのは、ミリ単位で寸法が指定された《サウナ室設計図》。 熱対流の計算式、吸気口と排気口の配置、座面の角度に至るまで、CADソフト顔負けの精密さで描かれていたのだ。


「な、なんだこれは……。この数値、この構造……! 狂ってやがる(褒め言葉)!」


「熱源には《紅蓮石》を使用し、水掛けによる蒸気発生ロウリュシステムを導入します。この仕様で施工可能ですか?」


「……技術的には可能だが……」


親方がゴクリと喉を鳴らす。職人としての魂が揺さぶられているのがわかる。 あと一押しだ。 私はマジックバッグから、ガラス瓶を取り出した。


「それと、これは契約の前金代わりの試供品です」


「なんだ? 水か?」


「いいえ。《じゃが芋焼酎・改(アルコール度数40%)》です」


我が家の畑で採れた高純度魔力ポテトを発酵させ、蒸留に蒸留を重ねた、悪魔的な透明度を誇る酒だ。 栓を開けた瞬間、芳醇かつ鋭利なアルコールの香りが洞窟内に充満した。


「!!」


ドワーフたちの目の色が変わった。 親方は震える手で瓶を受け取り、キャップに注いでクイッと呷った。


「――ッカァァァァァ!!」


親方の顔が真っ赤になり、目から涙が溢れる。


「こ、これは……! 喉が焼けるほど強いのに、後味はスッキリしてやがる! 脳天にガツンと来るこの衝撃……たまらねぇ!」


「気に入っていただけましたか? 契約成立の暁には、樽で納品いたしますが」


私が契約書(という名の発注書)を差し出すと、親方はガシッと私の手を握りしめた。


「合格だ嬢ちゃん! いや、姉御と呼ばせてくれ! いつから工事に入る!? 今すぐか!? 俺たちの腕を見せてやるぜ!」


交渉成立アグリーですね」


チョロい。 いや、技術者同士、話が早くて助かる。



数日後。 ドワーフの精鋭部隊によって、我が家の敷地内に立派な《ログハウス風サウナ小屋》が爆誕した。


「いい仕事だ。寸分の狂いもねえ」 「ああ、完璧ですね。納品チェック(検収)、完了です」


満足げに頷く親方と私。 その横で、週末を利用して遊びに来ていたライオネルさんが、目を白黒させていた。


「……コーデリア。なぜ、ドワーフ族の長老が、君に敬語を使っているんだ?」


「あらライオネルさん。技術の世界では、実力のある者が上なんですよ」


「そういうもの……なのか?」


「さあ、ライオネルさんもどうぞ。サウナで汗を流して、その後の水風呂に入ると《整い》ますよ」


「トトノウ? よくわからんが、君が勧めるなら……」


恐る恐るサウナに入っていったライオネルさんだったが、10分後。 水風呂から上がり、ウッドデッキの椅子に座った彼は、虚空を見つめて完全にキマっていた。


「……すごい。世界が、回っている……。全ての悩みが、汗と共に流れ落ちていくようだ……」


「おめでとうございます。それが《整う》です」


こうして、私のスローライフ拠点は、温泉宿としての機能を着実に強化していった。 だが、私はまだ知らなかった。 このドワーフたちが持ち帰った「悪魔の酒」が、ドワーフの里で流通し、やがて国中の酒好きを巻き込む大騒動に発展することを。


そして、その噂を聞きつけた「とある商人」が、目をドルマークにしてこちらへ向かっていることを。

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