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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章:現実世界侵攻 編

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第116話 永久機関の叫び、あるいは「減価償却」なき純粋労働

『統合現実・本社ビル』のメインフロア。そこを照らす白銀の光は、かつてないほど安定し、かつ不気味なほどに明るかった。 その動力源は、最深部の地下区画に設置された特大の「生体リアクター」だ。


透明な強化ガラスで作られた巨大な円柱タンク。その中では、虹色に濁った粘液――かつて魔王軍四天王であった**『統合苦痛体アマルガム・オブ・ペイン』**が、猛烈な熱を発しながら煮え立っていた。


「……出力、安定。不純物(情緒)を濾過し続ければ、あと数億年は燃料として機能するわね」


コーデリアは手に持ったバインダーで、リアルタイムの電力供給グラフを確認する。 グラフの波形が細かく上下するたびに、タンクの中から「グジュ……ギ、ギギィ……」という、複数の声が混ざり合った不協和音が漏れ出す。それは、彼らの魂が電力へと変換される際の「燃焼音」であった。


タンクの中の「共有財産」

タンクの内壁には、時折、苦悶に歪むイグニスの顔や、虚無を見つめるアクアの瞳が浮かび上がっては、熱対流によって再び泥の中へと飲み込まれていく。 彼らにはもはや「個」の境界はない。 イグニスの怒りは沸点を上げるための熱源に。アクアの冷静さは電圧を安定させるための冷却媒体に。ゲイルの速さは送電速度のブーストに。そしてテラの頑強さは、この地獄のような沸騰状態に魂が耐え続けるための「耐久ログ」として利用されていた。


「……ア……ツ、イ……。モウ……ワタシが……ダレか……ワカラナ……」


アクアの欠片が、泡と共に水面に浮上して呟く。だが、その瞬間に頭上の放電装置から数万ボルトの電流が浴びせられ、彼女の意識は強制的に再起動リブートされる。


「お喋りは禁止よ。あなたたちは今、この宇宙を動かす『公共財』なんだから」


コーデリアが冷たく言い放つ。 彼女にとって、タンクの中のモノはもはや部下でも敵でもない。ただの、**「メンテナンスコストが極めて低い、非常に効率的な定額制のバッテリー」**に過ぎなかった。


労働の「超」解像度

「コーデリア殿……。この……タンクの掃除、終わったぞ……」


ライオネルが、防護服を纏い、脂汗を流しながら報告に来た。 彼の役目は、タンクの表面にこびり付く「魂の燃えカス(不燃性バグ)」を、定期的に特殊なヘラで削ぎ落とすことだ。


ヘラで壁面を擦るたびに、中から「やめてくれ!」「痛い!」「くすぐったい!」という四人の混濁した叫びが響く。ライオネルはその度に精神を削られ、現実感覚を失いそうになっていた。


「ご苦労様。次は、第116セクタの『絶望の選別』作業ね。……ああ、それから」


コーデリアは、タンクの中で蠢く泥の塊を一度だけ見据えた。


「最近、彼らの『叫び声』の周波数が少し乱れているわ。……おそらく、まだ自分たちが『人間だった頃のデータ』を完全に捨てきれていないのね。明日から、彼らのタンクに直接、過去の『恥ずかしい失敗談』と『後悔の記憶』を24時間ループで流しなさい。……それを燃料にして、さらに出力を上げるわ」


「……あ、ああ。……了解した」


ライオネルは、もはや反論する力もなく、ただただ深淵へと沈んでいくような感覚で、次の「業務」へと向かった。


宇宙は、四天王の沸騰する魂によって、かつてないほど「正常」に運営されていた。 しかし、その煮え立つ泥の奥底に、どのプロセスにも検知されず、燃え尽きることもない一粒の『微小な不具合』が生まれつつあることを、この時のコーデリアはまだ認識していなかった。

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