表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/36

第1話:解雇(追放)通知は、突然に

「――悪逆非道の数々、もはや看過できん! コーデリア・フォン・オルデンブルク! 貴様との婚約を、今この時をもって破棄する!!」


カァン、と高い声が広間に響き渡った。 きらびやかなシャンデリアの下、音楽は止まり、着飾った貴族たちの視線が一斉に私へと注がれる。


目の前には、顔を真っ赤にして指を突きつける金髪の青年。この国の第二王子、クリフォード殿下だ。その腕には、小動物のように震えるピンク髪の少女がしがみついている。


(あ……れ? 私、なんでこんな所に立ってるんだっけ?)


数秒前までの記憶は、薄暗いオフィスにあった。 デスマーチ真っ只中の午前3時。3日徹夜の末、エナジードリンクを片手にキーボードを叩き……そして、突然胸が締め付けられるような痛みに襲われて、視界が暗転したはずだ。


「黙ってないで何か言ったらどうだ! 聖女アリスへの陰湿な嫌がらせ、教科書破り、階段からの突き落とし……すべて調査済みだぞ!」


殿下の怒声が頭にガンガン響く。 その瞬間、脳内に大量の情報が雪崩れ込んできた。


ここは乙女ゲーム『救国の聖女と虹色の騎士』の世界。 そして私は、ヒロインをいじめ抜いて破滅するライバル令嬢、《コーデリア》。


(……死んだのか、私。過労死で。そして転生したんだ)


呆然とする私を「罪を認めた」と勘違いしたのか、殿下は勝ち誇ったように鼻を鳴らした。


「ふん、図星か。貴様のような毒婦に王太子の妻たる資格はない! 国外追放だ! 北の最果て、魔物蔓延る『死の森』のほとりにある廃屋で、一生惨めに暮らすがいい!」


――国外追放。 ――最果て。 ――廃屋で暮らす。


その言葉を聞いた瞬間、私の身体に電撃が走った。絶望ではない。前世の社畜魂が、猛烈な勢いで「それ」を翻訳し始めたのだ。


【婚約破棄】= 王妃教育(休日返上の重労働)からの解放。


【国外追放】= しがらみだらけの人間関係(職場)からの退職。


【最果ての廃屋】= 誰にも邪魔されない、静かな田舎暮らし。


(え……それってつまり……)


「《完全週休7日制の、スローライフ》ってこと……?」


思わず口から漏れ出た言葉に、殿下が「は?」と間抜けな声を上げる。 私は慌てて口元を扇で隠した。笑いが止まらない。 上司(国王)の顔色を伺う必要も、クライアント(他国)の無理難題に頭を下げる必要もない。 しかも、蘇った記憶によれば、このコーデリアという体にはとんでもない魔力が秘められている。ゲーム内では制御できずに自滅する設定だったが、前世で培った「複雑怪奇なスパゲッティコードを修正する解析能力」があれば、制御など容易い気がする。


試しに、心の中で《ステータス・オープン》と念じてみた。


【氏名】 コーデリア 【称号】 転生者 / 悪役令嬢 【魔力】 測定不能(Error) 【スキル】 全属性魔法Lv.MAX / 創造魔法 / 鑑定眼 / 自動修復 / 聖獣召喚...


(……よし。勝った)


チート能力確認。生活基盤の確保、問題なし。 私は扇をパチンと閉じ、優雅にカーテシー(最敬礼)をした。その動きは洗練されており、周囲の貴族たちが思わず息を呑むほどだった。


「謹んでお受けいたします、殿下」 「な、なんだその態度は! 泣いて縋るならまだしも――」 「私の不徳の致すところ。この償いは、辺境での『隠遁生活』をもって代えさせていただきます。――それでは皆様、ごきげんよう!」


私はドレスの裾を翻した。 未練? あるわけがない。 この会場の扉の向こうには、残業もパワハラもない、輝かしい《無職》という名の未来が待っているのだから。


こうして私は、足取り軽く夜会から退場した。 背後で殿下が何か喚いていたけれど、私の耳にはもう、小鳥のさえずり(幻聴)しか届いていなかった。


(さあ、目指すは北の最果て! 待っててね、私のスローライフ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ