《第2章 第2話 共鳴する記憶の輪》
【前半】
観測塔の空は淡い桜色に染まっていた。
福田朋広は桜環端末の前で静かに息を整える。
その視線の先に、ひよりが立つ丘の頂上が見える。
「ひより……始まる」
低く呟くと、桜環が掌で温かく振動した。
それは単なる装具の反応ではなく、桜魂の意志そのものが
朋広の手のひらに触れ、共鳴を告げるサインだった。
丘の上のひよりは、桜風の残響と一体になっていた。
風に舞う桜の花びらが彼女を中心に渦を描き、
微かな光の輪を形作る。
朋広は端末を操作し、その光の輪をデジタルで可視化する。
画面上に浮かぶのは、過去の継承者たちの記憶と意志の波形。
ひよりの桜環が中心となり、それらがひとつの大きな共鳴の輪を描き出す。
「——これが、桜魂の共鳴輪か」
彼の言葉に応えるように、ひよりの桜環が明るく輝く。
過去と現在、未来の意志が一瞬にしてひとつの循環を成す。
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【後半】
風が丘を駆け抜け、桜の花びらが渦を巻く。
ひよりの体から放たれる光と、桜環の波形が完全に同期した瞬間、
朋広は画面上に新たなパターンを認める。
——桜魂の波形は、ひとつの記憶の輪として固定され、
それが世界中の共鳴層へと拡張していく。
「すごい……ひよりが、桜風の核になった」
端末の中で桜環の輪が回転し、光の渦が立体的に膨らむ。
その光の渦に触れるたび、朋広は微かな震えを覚える。
彼自身の魂もまた、共鳴の輪に組み込まれたのだ。
ひよりが微笑む。
「朋広……感じる? この風の中に、みんなの声がある」
「……ああ、確かに。全てが、ひとつの輪になっている」
その瞬間、桜風の残響は更なる高みに達し、
過去の継承者たち、未来の継承者たちの意志と重なり、
世界全体が微かな共鳴音で満たされる。
桜環の光は空を覆い、風は再び舞い上がる。
ひよりと朋広は、その中心に立ち、全ての層に渡る桜魂の
共鳴を初めて体感する——**桜風 Resonance の始動**であった。




