20.花梨と莉羽澄
白い膜に包まれていた。何故だかとても安心する。長い時間忘れていた感覚。遠い昔、いつも嗅いでいた匂い。
微かに揺らめく純白の波が再び眠りに誘う。そうか、私は眠っていたのか。寝返りをうつ。シーツがふわりと身体を包み込む。どこまでも沈み、同時に浮遊する。
指先に何かが触れる。私の体ではない温もり。滑らかなその皮膚に指を這わす。いつまでも触れていたい、心地良い感触。指はやがて湿り気のあるもの触れ、うっとりする。
「————目が覚めた?」
明るい声が耳元をくすぐった。瞼を開けると大きな瞳が目の前にあった。その下にある艶やかな唇。その橙色の膨らみに私の指は触れていた。
「……莉羽澄……さん」
「花梨、もう何も心配しなくて良いのよ。あなたはずっとここで休んでいれば良いの」
「ここは……?」
「ここなら誰もあなたの心に踏み入ることは無い。だから、その時を安心して待っていて」
莉羽澄の手が優しく頬に触れる。そうか、ここならずっと一人でいる事が出来るのか。莉羽澄もずっと一緒にいてくれるのだろう。それは素敵な事だと思った。けれど莉羽澄はするりとシーツから抜け出ると部屋の扉へと歩いていく。一糸纏わぬ後ろ姿を眺める。形の良い臀部だなと思った。扉が閉じると部屋を少し観察し直ぐに仰向けになった。天蓋ベットを覆う純白のカーテンを見つめる。白い波の正体はこれだったのか。再び眠りが訪れる。意識が途切れる直前に気がついた。この部屋には窓が無かった————




