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10.曲者の八人

 

天童(てんどう)雅楽(ががく)須磨(すま)(たけし)、エヴァン・オニール、白亜(はくあ)ユウ、金地(かなじ)颯太(そうた)、オ・ミンジェ、水瓜(みずうり)(れん)真淵(まぶち)オムカル。以上八名にこれからニ・五次審査を受けて貰う。僕がこのオーディションの責任者でありプロデューサーの山本(やまもと)五郎(ごろう)だ。以降、ゴローPと呼んでくれ」

 二次審査の会場で最後に質問をしてきた金髪の男だった。ダンススタジオの様な部屋に集められたのは二次審査を落ちた八名。ゴローPと名乗った男が主導で本選のオーディションとは別のグループのオーディションを行うらしい。指定された集合場所に行くと、説明も無いままバスに乗せられこの合宿所まで運ばれた。

「えー、橋下(はしした)さんは顔が綺麗で歌が無難な子を揃えてダンスで売る方向のグループを構想しているみたいなんだけど、僕は完全実力主義のヴォーカルグループを作りたいと思っている。この八名のうち、最終的に何人残るかも分からない。素行や性格も関係無い。僕が求めているのは圧倒的な歌と踊り、そしてカリスマ性だ」

 参加者達に小さなどよめきが起きる。橋下とは二次審査にいたボソボソ喋るサングラスをした男のことだろう。それにしてもこのメンバー、どうやら皆が訳ありの実力者という事か。先程から俺に攻撃的な視線を遠慮無くぶつけてくる赤い髪の男。天童雅楽と呼ばれた男は、二次審査の会場で俺と喧嘩を繰り広げた相手だ。アイツもここに呼ばれていたとは。

「えー、という訳で、まず君達には四人ずつ二チームに分かれてパフォーマンスをして貰います。課題曲はこちらで用意した二曲。それに各チームが自分達で歌詞を作りダンスの振り付けも考えて貰うから。まずは課題曲Aがこれ——」

 大音量で流された曲は重々しいリズムにダークなメロディがのったダンスナンバーだった。激しいラップが合いそうだ。

「そして、課題曲B——」

 今度は打って変わって90年代のR&Bを彷彿とさせるスローバラードだった。歌唱力と声の質が試されるナンバーだ。花梨の部屋で様々な曲の動画を見てきたので、それぞれの曲の特徴は大体分かった。後は一緒になるメンバーだが。

「では、チームを発表します。天童雅楽、須磨毅、オ・ミンジェ、水瓜蓮、以上四名がチーム"ヒュドラ"になります。四人は前に出てきて。そして、残りの四名がチーム"ナーガ"になります。これから各チームには別室に分かれて貰い、早速作業に取り掛かって貰います」

 ゴローPの説明は終わった。俺を含めた参加者一同は様々な想い抱え移動を始めた。そこには明らかな敵意も混じっていた。


 先程よりも狭いスタジオに案内されると、それぞれが距離をとって自分の居場所を確保した。部屋の中央にはラジカセが置かれている。誰も口を開くものはいない。雅楽は今度は完全にこちらを無視していた。腹立たしい奴だ。

「はーい、皆んな調子はどうだーい!?」

 ゴローPが勢い良く部屋に入って来た。

「あれ? 無茶苦茶雰囲気悪くない!? まあ良いや。とりあえずそこのラジカセに音源が入ってるから、課題の二曲に歌詞とコレオをつけてパフォーマンスを完成させてね。本番は二日後。やり方は任せるから。四人で相談しながら作り上げても良いし、それぞれ個人個人で進めて最後に合わせる形でも良いし。では、皆さんには期待していますので、二日後に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれる事を楽しみにしています。ちょこちょこ顔だすから頑張ってねー」

 ゴローPが部屋を出て行っても誰も動く者はいなかった。ミンジェはノートを覗き込んでいる。須磨は落ち着き無く膝を叩いている。雅楽は目を瞑り動かない。まとめ役が必要だ。あまり気が進まないが、ここは俺が動くしかなさそうだ。

「アノ、キョクヲキキマセンカ?」

 ミンジェがノートを閉じ立ち上がる。他の者もミンジェを見る。

「ああ、そうだな。俺は雅楽、よろしくな」

「ガガクサン、ヨロシクデス」

「ミンジェは日本に来たばかりか?」

「ハイ。ニホンゴスコシシカワカラナイデス」

「オーケー。分からない事があれば聞いてくれ」

「アリガトウゴザイマス」

 雅楽はミンジェに手を差し出し二人は硬く握手をした。何だ。意外と良い奴じゃないか。だがその考えは直ぐに改めさせられた。

「おい、水瓜蓮! 俺はお前を許していないからな! だが、折角の与えられたチャンスをまた馬鹿みたいに棒に振る気は無い。だから、取り敢えずお前とここにいる間は揉める気は無い。だが、仲良くするつもりも毛頭無い! せいぜい足を引っ張らない様に気をつけろよ!」

「なっ!」

 なんてやな奴なんだ。この前の騒動はどっちもどっちだった筈ではないか。だが、ここは大人にならなくてはいけない。また花梨にあんな悲しい顔をさせる訳には絶対にいかない。

「なんだお前ら、友達なのか?」

 声のした方を見ると須磨毅がトロリとした目でこちらを見ていた。その手にはウィスキーの瓶が握られていた。

 どうやらこのチーム、想像以上に曲者ばかりの様だ。だが今度こそここで結果を残し、デビューを勝ち取らなくてはいけない。こうして訳ありの合宿オーディションが始まったのだった。





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