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第六話 ロスト・シルバー

ある所に不治の病に苦しむ銀髪が綺麗な少女がいた。

もし自分の病が治るかもしれない、そんな頼みの綱が毛糸で出来ていたとしたら貴方は渡りますか?もし、落ちてしまう事を恐れてしまわないように、自分を封印すれば…氷の乙女になるでしょう。

※注意 幸福屋を見付けても、絶対に声をかけてはいけない。もし。声をかけられたり、かけたりしたら…貴方は永久に氷宮に閉じ込められるだろう。


20XX XX月 XX日  兵庫県


ある病室から、1人の少女と1人の少年の声が轟いた。

「畜生!!また。またまたまた!弥生に負けた~」

「あっはっは!私に勝とうなんぞ10年早いのだ!」

私の名前は氷室弥生。実は髪が銀色なんだ。それと。生まれつき体が超弱く…ちょっと走っただけで血を吐いて倒れてしまう。

「次こそは絶対に勝ってやるからな!そして…お前の病気を治せる医者に為ってやるんだ!覚悟しとけよな!」

この悔しそうに叫んでいる男の子の名前は、三日月陽炎君。勝負する事が大好きでいつも私とテストの順位を競っている。私はずっと入院してるからやることが勉強しかないのだ。そしていつも決まって「私の病気を治す医者に為ってやる」と決まって言ってくれる。私はいつも照れ隠しでからかう事しか出来ないが、内心はとても嬉しい。だけど私の病気は不治の病だ。治るはずが無い。例え治る技術が開発されたとしても。私には時間が無い…

「ありがとね…でもさ陽炎に私の病を治す事なんて出来るのかな?だって私よりも点数が低いのにね」

陽炎は炎の如く、顔を紅に染めて叫んだ。一応此処は病院なんだけどな…

「うるさーい!!とにかくおいらは、お前の病気を治せる医者に為ってやるんだ!後10年あればお前の病気を治せる医者に為っているだろうな!」

10年か…此処まで生きて来られたって言うのも奇跡だと言うのにね…

「じゃ、おいら帰るわ。早く治せよな!」

あぁ…帰ってしまう。打ち明けないと…手遅れになる前に打ち明けないと!…だけど…声が出ない喉に何かが引っ掛かって何もかも全て押し返してしまう。

バタンッ

ドアが閉まる音がした。もう、私は手遅れだ。未練を残してしまうのか…私は一人で呟いた。寂しさを紛らわしたかっただけかもしれない。

「陽炎。10年はちと遅すぎるんじゃないの?貴方には言えなかったけれど…もう、私の病気は深刻化していて…余命1日だって。私、まだ中学生だって言うのに今日で死ぬなんて酷いよ…死にたくないよぉ…陽炎ぉ助けてよ…私の病気を治してくれるんでしょ!?」

私は泣いた。もしかしたらこれがもう、私が弥生として生きて行けるのも、泣けるのも。最後かもしれないから…

ガチャリ

ドアが開いた。陽炎が忘れ物でもしたのだろうか?

私の予想とは裏腹に。知らない女が入ってきた。

「あんた。幸せが足りないみたいだね」

は…?幸せが足りないって。どういう意味?あんたは幸せを売っているのか?だったらこの病気を治してくれるだけの幸福を買うぜ?借金しててでも構わないね。

「用事は何?悪いけれど、私には時間が無いの」

「確かにね。今日で死ぬんだからね」

私は余命を迎えるよりも前にびっくりして死にそうに為った。どうしてこの怪しげな女が知っているんだ!?

「申し遅れたね。私は呪縛霊子。幸福屋をやらせてもらってるのさ」

幸福屋…!?聞いた事がある。幸せを前借りできる場所。だが、幸せを前借りした者は2倍の不幸が遅いかかってくる。もはや祝福ではなく、一種の呪いだ。

「私の力を使えば、お前の病気なんてすぐに治してやるさ。どうだい?私と契約しないか?」

私は迷う暇さえなかった。こいつを逃したら、もう二度と人間として生まれてくる事が出来なくなってしまうかもしれないから…

「お願いします…私の病気を治して!」

幸福屋は邪悪な笑みを浮かべ微笑んだ。

「契約成立」

途端に私は、深い眠りについた。私の体調はみるみるうちに良くなった。まるで私の中の歯車が潤滑油を注がれた様にキレイに回り出した様に…




病室にて

走る音が病院の廊下に轟く。

バンッ

ドアが乱暴に開かれた。

「弥生っ!!本当に病気が治ったのか?!でもあれは…不治の病の筈じゃ…?」

私はウキウキしながら言った。

「そう!先生も奇跡だって言ってた。まぁ私は幸せを運ぶ奇跡の人間だからね」

「良かった…」

陽炎が私に抱き付いてきた。まるで生まれたての赤ん坊の様に泣いた。

「おいら…!お前が死ぬかと思って…本当に良かった…約束してくれ。おいらを置いて逝かないでくれ」

「ありがとうね。大丈夫。私は陽炎を置いて逝かないよ」

私は気休め程度の嘘しか付けなかった。ごめんね陽炎。私は約束を守れそうに無いよ。だって私は幸福屋と関わってしまったんだ。もう、私は氷の永久迷宮に閉じ込められてしまったんだ。抜け出す事なんて出来ないのさ。




陽炎が帰ってしまった。すぐ後に、霊子がやってきた。何の用?生憎私は貴方に興味無いの。貴方のその力にしか興味が無いよ。

「ずいぶん仲良しなんだねぇ。おいらを置いて逝かないでぇ!だってさ!あっはっは!」

こいつ…陽炎の事をバカにしているのか?!あんなにも私に必死になってくれた人をバカにするなんて。許せない…!

「貴様!次、陽炎の事をバカにしてみろ!私はお前を殺すぞ!!」

以外にも幸福屋は素直だった。

「それは悪かった。許してくれ。それより。本題に入ろうか。2倍の不幸をいつ浴びたい?君は本来死ぬ予定の人間だった。だけど、私の力を使って運命を無理矢理ねじ曲げた。その代償は小さくないよ?」

私はもう既に死ぬ覚悟を決めている。決して怖くなんかない。

「陽炎はこの事知ってるの?」

「いや、知らない筈さ。アイツが消えた所で話しているからね」

「そっか。良かった。私が幸福屋と契約したなんて知られたら…陽炎はきっと」

ドォン!

ドアが乱暴に開かれた。現れたのは…

「陽炎!?どうして…」

陽炎だった。様子から察するに、私達は話を聞かれていたのだろう

「そんなにおいらが頼り無いか?そんなにも大事な事をおいらに隠すって事は…」

私は必死に否定した。私は貴方と一緒に遊園地に行きたい。ただそれだけの理由で私は運命をねじ曲げたんだ。凍りついた私の心を貴方の炎で溶かしてくれた。そんな恩人を信用していない訳が無い。

「違うよ…違うのよぉ…私は貴方に悲しんで欲しく無かった。貴方は何も知らず、私の事を忘れて幸せに為って欲しかった。陽炎が幸せなら、私も幸せだから…だから!」

陽炎はそっと私の頭を撫でた。

「ごめんな。気付いて上げられなくて。相当なストレス抱えてたんだな」

「どうして?私の髪色は銀色だから…白髪は分からないはずじゃ…?」

「弥生。涙を出さなくても。悲しい時は悲しいんだ。悲しい時は思いっきり泣いていいんだ」

陽炎が何を言っているか理解出来なかった。泣いて無いのなら、悲しくなんて…悲しくなんて無い…はず…じゃ…?

私の瞳から涙が流れた。まるで心の中の氷が溶けていく様に…

「あれ?私…どうして…?悲しくなんか…悲しくなんかない…のに…」

陽炎は優しく微笑んだ。

「泣いていいんだぜ。泣きたい時は泣く。人間なら誰でもするだろ?」

そうだ。私は忘れていた。この人に恋していたんだ…私はもうすぐ死ぬけれど、泣いてくれるかな?

突然、存在感ゼロだった霊子が話した。

「あの~そろそろ帰っていいかな?私、邪魔でしょ?」

陽炎が否定する。

「まだ帰らないでくれ。おいらはお前に頼みがある」

幸福屋がワクワクした様子で言った。

「なんだい?なんだい?私と契約したいのか!?だったら感激さ!さぁ誰から幸せを奪うんだ?」

陽炎は迷い無く言いきった。

「お前だ」

幸福屋は当たり前だが、とてつもない位驚き慌てた。

「私だって!?そんなの許される訳無…」

「契約成立」

幸福屋は何故か否定しなかった。いや、出来なかった。

「そんな?!どうして口が勝手に…こんな事して、許されると思うなよ!」

ドォン!

扉が乱暴に閉められた。怒った幸福屋は帰ってしまった。

「陽炎!どうして…幸福屋と契約すれば貴方は…」

「分かってる。不幸がくるんだろう?そんなの覚悟の上さ」

「でも!私は後もう少しで不幸が降り注いで死んじゃうんだよ!?そんな私の為に…」

陽炎が馬鹿にした様な、でも心地よい優しさを出した笑顔で言った。

「まずおいらが、幸せになるだろう?それですぐに不幸が降り注いで俺は死ぬ。そうするとお前は不幸に思うだろう?自分の命が助かったが為に。おいらが死ぬ事に気付いたら。それで不幸を返済し終わって、お前はハッピーエンドって訳さ」

陽炎…どうして貴方は私の為にそこまで必死になれるの?所詮、赤の他人でしょ?自分の命を優先するのが普通なんじゃ…?

「お前は充分苦しんだ。だから今度はおいらが苦しむ番さ。それなら文句は無いだろう?」

「陽炎の意地悪。貴方が死んだら私はどうすればいいの?もう、一生陽炎以外の男を愛せなく無っちゃったよ…責任取ってよね」

「あぁ。勿論さ。ずっと君にこれを渡したかったんだ…」

陽炎がポケットから出した物は…

「これは…指輪?私に…!?ってこれ婚約指輪じゃん!?」

「これでおいらが死んでも。一緒だろ?俺はもう、時期に死ぬ。だからずっと伝えたかった事を言うぜ」

「おいらと…いや、これじゃ締まらないな。俺と結婚してくれないか?」

「馬鹿っ!私を幸せにして殺すつもり?!だけど…嬉しい…宜しくお願いします」

陽炎は私の薬指に指輪を嵌めてくれた。私は気付かなかった。それが陽炎と話す最後の会話だって事に…


翌日。陽炎は死んだ。病名は不明だが、きっと私のせいだ。

私は陽炎の葬式に行った。あんなにも炎の様に暖かかった陽炎の笑顔は昔の私みたいに冷たかった。大丈夫だよ…陽炎が私の心の氷を溶かしてくれた様に今度は私が陽炎の心の氷を溶かしてあげる。例えそれが永遠の日々を必要とするなら、永遠に溶かし続けてあげる。

私達は永遠に繋がっているんだ…この指輪がある限り。私は他の男を好きにならないし、陽炎。貴方の事しか私は見えないの。おかけで私は幸福屋からの不幸を打ち消せたけれど、私の心にはポッカリと大きな穴が空いてしまった。こんな指輪じゃあ足りないよ…陽炎。もっと私に愛を頂戴?もっと私に愛を注いで…じゃないと私は満たされない。何をしても満たされないの…

陽炎…責任取ってよね。私は貴方が居ないと駄目に為ってしまった。折角陽炎が紡いでくれた命。私は人を助ける仕事を目指すよ、もうこれ以上、幸福屋に関わって悲しくなる人を見たくないの。


10年後

ねぇ陽炎。どうしたら貴方は目を覚ましてくれるの?あれから10年たったよ…念願の夢だった医者になれたよ。陽炎言ってたよね。医者に為って私の病気を治してくれるって。達成出来なかった陽炎の代わりに私が陽炎の夢を叶えて上げたよ?お願いだから…目を覚まして頂戴…私は貴方が居ないと狂ってしまいそうよ!あぁぁ、身体中が痒くて痒くて仕方ない!!

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガガ

「汚ならしい、汚ならしいよ!陽炎以外の男と結婚して幸せに為ってみたいなんて一瞬でも思った私が汚ならしくて仕方ないな!!

ガリガリガリガリガリガリガガガ





幸福屋 本拠地にて

総督らしき人物が霊子を叱った。

「呪縛霊子。人間ごときに幸せを奪われるなんてどういう事だ!?幸福屋としての誇りを忘れたか?!」

「申し訳ありません。次からは気をつけます」

総督らしき人物は少し不満気だったが、了承した

「わかった。信じよう。ただし、次は無いからな」

良かった…あの男は私から幸福を絞り出す事に成功したのね…私はあの子に死んで欲しく無かった。ずっと病院に閉じ込められて、学校にも通えず。憧れの遊園地にすら行けないなんて…可哀想で仕方無かった。最初から不幸を返済させるつもりなど無かった。私はただあの子に陽炎以外の熱い炎を見て欲しかった。

私の母親の様には為って欲しく無かった。正しい正義を見失い。国に翻弄されるがまま翻弄され、国に消された。そんな悲しき人間に為って欲しく無かった。自分を見失って欲しく無かった。

5000年後…私達幸福屋のせいで、新しい人類の進化形が誕生し、人間に利用されるだろう。

私達は人間では無いが、アイツらも人間では無いのでは?この世界に人間なんて居ないのでは?

この世界に平和が訪れる事など永遠に無いだろう。

氷の永久迷宮から抜け出さない限りは…

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